「日本のIT人材はIT企業に偏在している」 総務省が「令和3年版 情報通信白書」を公開:最も大きな課題は人材不足
総務省は「情報通信に関する現状報告」(令和3年版情報通信白書)を公開した。これまでのデジタル化への取り組みについて振り返るとともに、国民生活や企業活動、公的分野でのデジタル活用の現状と課題や、新型コロナウイルス感染症の影響で加速したデジタル化について検証した。
総務省は2021年7月30日に「情報通信に関する現状報告」(令和3年版情報通信白書)を公開した。同白書は特集テーマとして「デジタルで支える暮らしと経済」を取り上げており、これまでのデジタル化への取り組みと、国民生活や企業活動、公的分野でのデジタル活用の現状と課題、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で加速したデジタル化について検証している。
ITの活用は「十分に進んでいる」とはいえない
日本は、IT基本法を制定した2000年以降、「e-Japan戦略」をはじめとしたさまざまな国家戦略を掲げてデジタル化に取り組み、光ファイバーなどブロードバンドの整備が大きく進展した。固定系ブロードバンドに占める光ファイバーの割合やモバイルブロードバンドの普及率は世界でもトップクラスといえる。
ただし、デジタル競争力や電子政府に関する国際指標については人材やデータ分析などへの評価が低く、順位は低迷している。このことから総務省は「ITの活用は進んでいない」と評価している。
IT投資目的は「業務の効率化」が中心
情報通信機器の世帯保有率を見るとスマートフォンの普及が著しい。2010年には10%程度だったものが2020年には90%に迫る勢いだ。PCやタブレットなどを含めた情報通信機器全体の世帯保有率は90%を大きく上回る。これらの利用目的はネットショッピング、支払いや決済、地図・ナビゲーションがトップ3だった。
企業のIT投資を見ると、業務効率を目的としたものが中心で、事業拡大や新事業進出といったビジネスモデルの変革を伴うような「デジタルトランスフォーメーション」(DX)は広がっていない。
デジタル技術の導入状況を米国と比べると、AI(人工知能)は米国の35.1%に対して日本は24.3%。データ分析は、米国の62.7%に対して日本は42.0%だった。その他、「IoT」(Internet of Things)や「ブロックチェーン」「RPA」(Robotic Process Automation)などのデジタル技術についても日本の導入率は米国を大きく下回る。総務省は「日本のIT人材はIT企業に偏在しており、企業がDXを進める上で人材不足が大きな課題だ」としている。
総務省は「今後は、国民に対するデジタル活用の促進と民間企業や公的分野でのデジタル化を戦略的に進める。5Gなどの情報通信インフラの整備に加え、サイバーセキュリティや個人情報の保護といった安全性の確保、公共デジタルプラットフォームの整備によって、デジタル社会の共通基盤を構築することが重要になる」と指摘している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 自治体のDX向け情報サイト「自治体DX白書.com」を公開 電通国際情報サービスら4社
電通国際情報サービスと電通、Public dots & Company、電通マクロミルインサイトの4社は、自治体のDXに特化した全国の自治体向け情報サイト「自治体DX白書.com」を公開した。情報発信によって、自治体のデジタル化推進を支援する。 - デジタル高成長企業の3つの共通点とは 日本CTO協会が「DX動向調査レポート 2021年版」を発表
日本CTO協会は、「DX動向調査レポート 2021年版」を発表した。高成長企業ほど、DXを経営課題として認識し、推進している傾向が見られ、Webサイトやアプリ、電子契約などを活用して顧客との接点をデジタル化していた。 - ペーパーレスの展開に1年以上かける企業は時代遅れ、ガートナーが日本のデジタルイノベーションに関する展望を発表
ガートナー ジャパンは、日本のデジタルイノベーションに関する展望を発表した。デジタルトランスフォーメーションが本来のデジタルイノベーションではなく、単に電子化やクラウド活用に終始するようでは大きなビジネスリスクを生み出すとしている。