WSUSでのWindowsクライアントの更新管理を簡素化する「SSU+LCU統合パッケージ」とは:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(109)
MicrosoftはWindowsおよびWindows Server向けに、品質更新プログラムとして毎月の「累積更新プログラム(CU)」とは別に、「サービススタック更新プログラム(SSU)」を不定期にリリースしています。Microsoftは更新管理を簡素化するため、一部のバージョンを対象に「Windows Server Update Services(WSUS)」向けにこれらを1つのパッケージに統合して提供しています。
「累積更新(CU)」とは別に提供される「サービススタック更新(SSU)」
「Windows Update」「Microsoft Updateカタログ」「Windows Server Update Services(WSUS)」といったWindows標準の更新チャンネルでは、WindowsおよびWindows Serverの品質更新プログラムとして、毎月の「累積更新プログラム」(Cumulative Update、CU、最新のものを特にLatest CU、LCUと呼びます)とは別に、「サービススタック更新プログラム(Servicing Stack Update、SSU)」が先行的に、あるいは同じタイミングで提供される場合があります。
SSUは、累積更新プログラムの方式で提供される品質更新プログラムをインストールする役割を担うコンポーネント「サービススタック」に対する修正を行う、小さな更新プログラムです。主に今後の累積更新プログラムや、「Windows 10」の機能更新プログラムのインストールで発生する可能性のある問題に対処するために提供されます。
- サービススタック更新プログラム(Microsoft Docs)
毎月の累積更新プログラムは、前提条件として特定バージョン、あるいは最新のSSUのインストールを必要とするものがあります。Windows Update経由で更新する場合、必要に応じて最新のSSUが自動的にダウンロード、インストールされるため、前提条件としての個別のSSUについて心配する必要はありません。しかし、Microsoft Updateカタログから累積更新プログラムを入手してインストールする場合や、WSUSを利用して累積更新プログラムを配布する場合は、前提条件としてのSSUを含めて、適切に準備する必要があります。特に、WSUSを利用する場合、同期されたカタログから適切なSSUとLCUの組み合わせを承認して配布するのは手間のかかる作業です。
Windows 10 バージョン2004以降は既にSSUとLCUの統合パッケージに
Microsoftは2020年12月から、Windows 10 バージョン2004以降向けにSSUとLCUを1つのパッケージに統合したものを、WSUSにプレビュー(Windows Insider Pre-releaseのこと、毎月後半にリリースされるオプションの更新プログラムを示す“プレビュー”とは異なります)として、LCUの承認作業を簡素化するオプションを提供しました。このプレビューは2021年2月までに終了し、以降、Windows 10 バージョン2004/20H2/21H1(2021年5月リリース)向けには標準でSSUとLCUの統合パッケージとして提供されています。
- Deploy Windows SSUs and LCUs together with one cumulative update[英語](Microsoft Tech Community)(2020年12月8日)
2021年3月からは、Windows Updateでも新しい統合パッケージ形式で累積更新プログラムを受け取るようになっています(画面1)。なお、LCUとSSUが統合されたことで、SSUが個別にリリースされなくなるわけではありません。定例更新(米国時間第2火曜日)とは別のタイミングで不定期にリリースされることがあります。
- 2021年3月9日─KB5000802(OSビルド19041.867および19042.867)(Windows サポート)
Microsoftでは、お使いのオペレーティングシステム用の最新のサービススタック更新プログラム(SSU)を最新の累積更新プログラム(LCU)と組み合わせて提供するようになりました。
2021年8月からプレビュー提供範囲をWindows 10 バージョン1809と1909に拡大
Microsoftは2021年8月から、WSUSにおけるSSUとLCUの統合パッケージのプレビュー(毎月後半にリリースされるオプションの更新プログラムを示す“プレビュー”とは異なります)提供を、Windows 10 バージョン1809(つまり、サポート期間中の「Windows Server 2019」およびWindows 10 Enterprise LTSC 2019)とWindows 10 バージョン1909にも拡大したことを発表しました。
- Simplified deployment of Windows servicing stack updates: what's new[英語](Microsoft Tech Community)(2021年8月10日)
このプレビューパッケージを受け取るには、WSUSの「製品と分類」で「Windows Insider Pre-release」と、対象のWindows、Windows Serverバージョンの製品分類を選択して、同期します(画面2)。
例えば、2021年8月10日のWindows Server 2019の定例更新では、プレビューであるSSUとLCUの統合パッケージを利用しない場合、LCU「KB5005030」を配布するためには、前提となる2021年8月10日リリースのSSU「KB5005112」(または2021年5月11日リリースのSSU「KB5003243」)を併せて承認する必要がありました(画面3)。
SSUとLCUの統合パッケージを利用できる場合、その統合版の累積更新プログラム(製品:Windows Insider Pre-Releaseで識別できます)を承認するだけで済みます(画面4)。
現状、Windows 10 バージョン1809と1909向けの統合パッケージはWSUSのプレビューとして提供されていますが、Windows 10 バージョン2004以降と同様に、近い将来、統合パッケージが通常版になり、その後、Windows Updateでも通常版になると思われます。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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