連載
キャッシュされたトリガーの実行統計を出力する:SQL Server動的管理ビューレファレンス(76)
「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、キャッシュされたトリガーの実行統計の出力について解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_exec_trigger_stats」における、キャッシュされたトリガーの実行統計の出力について解説します。対応バージョンは、SQL Server(サポートされている全てのバージョン)です。
概要
SQL Serverでトリガーを実行する際には、トリガー処理の実行前に、トリガーの定義や統計情報を使用してコンパイル処理が実行されます。コンパイル結果は「実行プラン」としてプランキャッシュに保存され、次回以降の実行では、コンパイル前に実行プランがプランキャッシュに保存されていないかどうかが確認されます。実行プランが保存されている場合には、コンパイル処理をスキップすることで効率的にクエリが実行されます。
実行プランには、ツリー構造で表されるトリガーの実行計画以外にも、キャッシュされた時刻や実行回数、実行時間などの実行統計の情報が保存されています。
「sys.dm_exec_trigger_stats」動的管理ビューを使用することで、プランキャッシュに保存されているトリガーの実行プランについて、実行統計の情報を出力することが可能です。
出力内容
列名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
database_id | int | トリガーのデータベースID |
object_id | int | トリガーのオブジェクトID |
type | char(2) | トリガーの種類 TA=アセンブリ(CLR)トリガー TR=SQLトリガー |
type_desc | nvarchar(60) | トリガーの種類の説明 CLR_TRIGGER SQL_TRIGGER |
sql_handle | varbinary(64) | トリガーのクエリハンドル |
plan_handle | varbinary(64) | トリガーの実行プランの識別子 プランがキャッシュに残っている間だけ一定「sys.dm_exec_cached_plans」動的管理ビューで使用できる |
cached_time | datetime | トリガーがキャッシュに追加された時刻 |
last_execution_time | datetime | トリガーが最後に実行された時刻 |
execution_count | bigint | トリガーが最後にコンパイルされてからの実行回数 |
total_worker_time | bigint | コンパイル後にこのトリガーの実行で消費されたCPU時間の合計(マイクロ秒単位) |
last_worker_time | bigint | 最後に実行したときに使用されたCPU時間(マイクロ秒単位) |
min_worker_time | bigint | 1回の実行で使用した最小CPU時間(マイクロ秒単位) |
max_worker_time | bigint | 1回の実行で使用した最大CPU時間(マイクロ秒単位) |
total_physical_reads | bigint | コンパイル後にこのトリガーの実行で行われた物理読み取りの合計数 |
last_physical_reads | bigint | 最後に実行されたときの物理読み取りの数 |
min_physical_reads | bigint | 1回の実行で行われた物理読み取りの最小数 |
max_physical_reads | bigint | 1回の実行で行われた物理読み取りの最大数 |
total_logical_writes | bigint | コンパイル後にこのトリガーの実行によって実行された論理書き込みの合計数 |
last_logical_writes | bigint | 最後に実行されたときの論理読み取りの数 ページが既にダーティーであった場合はカウントされない |
min_logical_writes | bigint | 1回の実行で行われた論理書き込みの最小数 |
max_logical_writes | bigint | 1回の実行で行われた論理書き込みの最大数 |
total_logical_reads | bigint | コンパイル後にこのトリガーの実行によって実行された論理読み取りの合計数 |
last_logical_reads | bigint | 最後に実行されたときの論理読み取りの数 |
min_logical_reads | bigint | 1回の実行で行われた論理読み取りの最小数 |
max_logical_reads | bigint | 1回の実行で行われた論理読み取りの最大数 |
total_elapsed_time | bigint | このトリガーの実行完了までの経過時間の合計(マイクロ秒単位) |
last_elapsed_time | bigint | このトリガーの最後の実行完了までの経過時間(マイクロ秒単位) |
min_elapsed_time | bigint | このトリガーの実行完了までの最小経過時間(マイクロ秒単位) |
max_elapsed_time | bigint | このトリガーの実行完了までの最大経過時間(マイクロ秒単位) |
total_spills | bigint | コンパイル後にこのトリガーの実行によって書き込まれたページの合計数 適用対象:SQL Server 2017(14.x)CU3以降 |
last_spills | bigint | 最後に実行されたときに書き込まれたページの数 適用対象:SQL Server 2017(14.x)CU3以降 |
min_spills | bigint | 1回の実行中に書き込まれたページの最小数 適用対象:SQL Server 2017(14.x)CU3以降 |
max_spills | bigint | 1回の実行中に書き込まれたページの最大数 適用対象:SQL Server 2017(14.x)CU3以降 |
total_page_server_reads | bigint | コンパイル後にこのトリガーの実行によって実行されたページサーバの読み取りの合計数 適用対象:Azure SQL Databaseハイパースケール |
last_page_server_reads | bigint | 最後にトリガーを実行したときのページサーバの読み取り回数 適用対象:Azure SQL Databaseハイパースケール |
min_page_server_reads | bigint | 1回の実行で行われたページサーバの読み取りの最小数 適用対象:Azure SQL Databaseハイパースケール |
max_page_server_reads | bigint | 1回の実行で行われたページサーバの読み取りの最大数 適用対象:Azure SQL Databaseハイパースケール |
動作例
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