Windows 11への自動更新を“確実にブロックする”ポリシーの使い方:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(117)
多くの企業では、Windows 11に対応または非対応のハードウェアで動作するWindows 10クライアントがあるでしょう。更新プログラムが適切に管理されている環境では、ユーザーが意図的に、あるいは誤ってWindows 11にアップグレードしてしまうことはないはずです。しかし、小規模な環境ではそうとも限りません。
WUfBポリシーでWindows 11への更新をブロックする
「Windows Server Update Services(WSUS)」や「Microsoft Intune」(Microsoft Endpoint Managerの一部)を使用してWindowsクライアントの更新を管理している場合、管理者が「Windows 11」を展開しない限り、クライアントにWindows 11が配布されることはありません。これは、「Windows Update for Business(WUfB)」で更新を適切に管理している場合も同様です。
しかし、これらの管理環境を使用しておらず、個人ユーザーと同じようにMicrosoft Updateから更新を取得している場合、Windows 11対応ハードウェアであれば、いつかWindows 11(ブロード展開はまだ始まっていませんが、2022年前半に予定されています)に自動更新されてしまいます。
Windows 11対応ハードウェアでない場合は、「設定」の「Windows Update」に「このPCは現在、Windows 11を実行するための最小システム要件を満たしていません」と表示され、自動更新されることはありません。
「グループポリシー」または「Active Directory」がない場合は、「ローカルコンピューターポリシー」を使用すると、Windows 11対応ハードウェアの有無に関係なく、Windows 11を更新先のターゲットとして選択しないように強制することができます。
使用するポリシー設定は、以下の場所にあります。
- コンピューターの構成\(ポリシー\)管理用テンプレート\Windows コンポーネント\Windows Update\Windows Update for Business\ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する
このポリシーは、「Windows 10」のバージョン1803以降で利用可能になりましたが、Windows 10バージョン2004に対しては、Windows 11のリリースに合わせて追加の設定が加わりました。具体的には、「どのWindows製品のバージョンから機能更新プログラムを受け取りますか?」の設定項目が追加されています。
この設定に「Windows 10」を指定し、「機能更新プログラムのターゲットバージョン」にバージョンを指定することで、Windows 11を受け取らないようにできます。Windows 10の最新バージョンはどちらもバージョン「21H2」です。
「機能更新プログラムのターゲットバージョン」に次のバージョンを指定すると、次回のWindows Updateで対象の機能更新プログラムを受け取ることになります(ブロード展開に関係なく)。現在実行中のバージョンと同じバージョンを指定すると、現在のバージョンを当面の間維持できます。
例えば、現在、Windows 10 バージョン21H2を実行中のクライアントのポリシーで「どのWindows製品のバージョンから機能更新プログラムを受け取りますか?:Windows 10」と「機能更新プログラムのターゲットバージョン:21H2」を指定すると、当面、Windows 10 バージョン21H2のまま固定でき、Windows 10 バージョン22H2(予定)がリリースされても更新されることはありません(画面1)。また、「設定」の「Windows Update」にも、Windows 11の通知は表示されなくなるはずです(画面2)。
当面というのは、現在のバージョンのサービスが終了し、60日経過すると、バージョンの固定は無効になり、より新しいバージョンを受け取ることになります。詳しくは、以下のドキュメントを参照してください。
- チュートリアル:グループポリシーを使用してWindows Update for Businessを構成する(Microsoft Docs)
WUfBポリシーの古い管理用テンプレートに注意
前述したように、「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」ポリシーは、Windows 10 バージョン1803以降で利用可能になったものです。また、「どのWindows製品のバージョンから機能更新プログラムを受け取りますか?:Windows 10」の設定項目は、Windows 10 バージョン2004以降向けに累積更新プログラム(2021年10月以降の)に含まれる形で管理用テンプレートが更新されました(「Windows Server 2022」およびWindows 10 バージョン21H2は最初から)。
そのため、「Windows Server 2019」以前のドメイン環境で最新の管理用テンプレートに差し替えていない場合は、グループポリシーの設定にこれらの項目が表示されません(画面3)。
画面3 Windows Server 2019のドメインコントローラーの場合、Windows Server 2019の管理用テンプレートには、古いバージョンの「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」ポリシーが含まれる
以下のサイトのリンク先からダウンロードできる管理用テンプレートは、Windows 10の各バージョンのリリース時点のものであり、累積更新プログラムによる更新内容(Windows Update for Businessに限らず)は含まれていないことに注意してください。
- グループポリシー管理用の中央ストアを作成および管理するWindows(Microsoft Docs)
企業で使用している最新バージョンのWindows 10、または最新状態に更新されたWindows 11のクライアントPC(C:\Windows\PolicyDefinitions)から、管理用テンプレート(*.admxおよびja-jp\*.adml)をドメインコントローラーまたは中央ストアにコピーすることをお勧めします。
なお、現在、バージョン2004以前のWindows 10は、Windows 10 バージョン1909のEnterpriseとEducationエディション(「2022年5月10日」までサポート)を除き、全てのサポートが終了しています。
Windows 10 バージョン2004以前で、「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」ポリシーの新しい設定項目が期待通りに機能するかどうかは、サポートされない環境であるためはっきりとしたことは言えません(Windows 10 バージョン2004であれば機能すると想像しています)。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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