デスクトップアプリとしてのIEのサポートが終了、WSUSへの影響は?:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(124)
Windows 10(Enterprise LTSCを除く)におけるデスクトップアプリとしての「Internet Explorer(IE)」のサポートが2022年6月15日に終了します。企業のIT利用環境、運用環境に与える影響について、調査と対策はお済みでしょうか。今回は、IEサポート終了の影響の一例として、WSUSの管理環境を取り上げます。
定例外更新プログラムのWSUSへの直接インポートにIEが必須な理由
毎月第2火曜日(米国時間)にリリースされる重要な更新プログラム(Windows Updateで自動配布される更新プログラム)は、通常の同期処理によって「Windows Server Update Services(WSUS)」に取り込まれます。
しかし、オプションで提供される更新プログラム(累積更新プログラムのプレビューなど)については「Microsoft Updateカタログ」でのダウンロード提供のみとなります。また、定例外で緊急リリースされる更新プログラム(既にリリース済みの更新プログラムの問題修正などのため)についても、Microsoft Updateカタログでのダウンロード提供のみとなります。
Microsoft Updateカタログでダウンロード提供される更新プログラムをクライアントにWSUSを通じて配布したい場合は、WSUS管理者が手動でWSUSにインポートすることができます。インポート操作は、WSUSの「Update Services」コンソール(wsus.msc)の「更新プログラム」ノードから「更新のインポート」を実行します。「更新のインポート」は既定のブラウザを起動して、Microsoft Updateカタログサイトを特別なURLを指定して開きます。
「更新のインポート」は、ActiveXコントロールとして実装されており、初めて「Internet Explorer(IE)」でMicrosoft Updateカタログサイトを開いたときにインストールが求められます(画面1)。
画面1 「更新のインポート」は既定のブラウザ(Windows Server 2019以前はIE)でMicrosoft Updateカタログを開くと、初回にActiveXコントロールのインストールを要求する(Windows Server 2022日本語版では現状、「Update Services」コンソールがローカライズされていない)
既定のブラウザが「Microsoft Edge」となった「Windows Server 2022」と、Microsoft Edgeをインストールした「Windows Server 2019」以前で既定のブラウザをIEからMicrosoft Edgeに変更している場合は、Microsoft EdgeによってMicrosoft Updateカタログサイトが開かれるため、WSUSへの直接インポート機能が利用できません(画面2)。
画面2 既定のブラウザがMicrosoft Edgeの場合、ActiveXコントロールが利用できないため、直接インポート機能は利用できない(ActiveXコントロールが機能している場合、「ダウンロード」ボタンではなく、バスケットに「追加」ボタンが表示される)
Windows ServerではデスクトップアプリとしてのIEが今後も引き続き利用可能であり、サポートされます。「Update Services」コンソールを利用する場合は、IEを既定のブラウザに設定して利用してください(画面3)。
画面3 WSUSの「Update Services」コンソールを利用するWindows Serverでは、既定のブラウザをIEにする(Windows Server 2022の場合は必要時に応じて切り替える)
Windows Server 2022の場合は「切り替え前に」ダイアログボックスで、「強制的に変更する」をクリックする必要があります。WSUSへの直接インポートは頻繁に行う作業ではないため、普段はMicrosoft Edgeを既定のブラウザとして利用し、必要なときにのみ一時的にIEを既定に切り替えればよいでしょう。
なお、「Windows Server 2016」以降のIEで直接インポート機能が失敗する場合は、WSUSサポートチームが公開している以下の手順に従って問題を回避してください。また、「サーバーマネージャー」の「ローカルサーバー」にある「IEセキュリティ強化の構成」で、Administratorsグループがオフになっていることを確認してください。
- Microsoft Update カタログから更新プログラムの手動インポートに失敗する事象について(Microsoft Developer Network)
IEを利用できないWindows 11と、IEを利用できなくなるWindows 10の場合
「Windows 11」は、リリース時からデスクトップアプリとしてのIEを利用できません。また、「Windows 10」は「2022年6月15日」以降、デスクトップアプリとしてのIEのサポートが終了し、利用できなくなります。そのため、オンデマンド機能である「RSAT:Windows Server Update Servicesツール」に含まれる「Update Services」コンソールを使用してリモートのWSUSサーバを管理する場合、既定のブラウザをIEに切り替えて直接インポートするという対処方法は選択できません。
Windows 11およびWindows 10の既定のブラウザであるMicrosoft Edgeでは、「IEモード」を利用することで、直接インポートの機能を利用することができます。それには、Microsoft Edgeの「…」メニューから「設定」→「既定のブラウザー」(edge://settings/defaultBrowser)を開き、「Internet Explorerの互換性」で「Internet Explorerモードでサイトの再読み込みを許可」を「許可」に設定し、「Internet Explorerモードページ」の一覧に「https://www.catalog.update.microsoft.com/」を追加して、ブラウザを再起動します(画面4)。
これにより、既定のブラウザをMicrosoft Edgeにしたまま、WSUSへの直接インポートのためのActiveXコントロールを機能させることができるようになります(画面5)。
なお、Windows Server 2019やWindows Server 2022のMicrosoft Edgeの「IEモード」でMicrosoft Updateカタログを開くこともできますが(Windows Server 2016のMicrosoft Edgeは非対応)、直接インポート機能は「この更新プログラムはWindows Server Update Servicesにインポートできません(理由:お使いのバージョンのWSUSと互換性がありません)」と表示され、インポートできませんでした。この現象は、以下の問題に似ていますが、説明されている方法では回避できませんでした。
- Windows Server 2016 の WSUS で更新プログラムのインポート時に互換性の問題が発生する事象(Microsoft Docs)
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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