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Azureのハイブリッド環境を低コストで入手可能に――シングルサーバ構成のAzure Stack HCIクラスタが正式サポートMicrosoft Azure最新機能フォローアップ(173)

これまでAzure Stack HCIは、Azure Stack HCI認定ハードウェアを使用した、最小2ノード構成からサポートされていましたが、シングルノード構成が正式にサポートされました。

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Microsoft Azure最新機能フォローアップ

高可用性はないが、同等の機能をより低コストで

 Microsoftは2022年5月24日(米国時間)、Microsoft Azureのサービスとして提供されるオンプレミス向けハイパーコンバージドインフラ(HCI)「Azure Stack HCI」で、シングルノード構成を正式にサポートすることを発表しました。高可用性を要件としない、つまり、サーバの障害によるダウンタイムを許容できる場合に、Azureのハイブリッドコンピューティング環境を低コスト(ハードウェアの購入コストと、Azureに登録するコア数ベースの利用料金)で導入できる新しい導入形式になります。

 シングルサーバ構成のAzure Stack HCIクラスタは、サーバの障害への耐性は低く(記憶域スペースダイレクトによるディスク障害にのみ耐性があります)、マルチノードを必要とする機能(クラスタ対応更新や記憶域レプリカ、ストレッチクラスタ、ライブマイグレーションなど)は利用できません。

 仮想マシンを作成して実行するという基本的な機能の他、「Azure Arc」リソースブリッジによるAzureとのシームレスな統合(Azure Stack HCIをカスタムロケーションとしてAzureポータルから仮想マシンをデプロイして管理できる機能)、「Azure Kubernetes Service(AKS) on Azure Stack HCI」(ただし、シングルノード構成はプレビュー段階)、「Azure Virtual Desktop(AVD) on Azure Stack HCI」(マルチ/シングルともにプレビュー段階)、その他のAzureハイブリッド機能(「Azure Site Recovery」など)をマルチノードの通常のAzure Stack HCIクラスタと同じように機能します。

シングルノード構成のセットアップはマニュアルで

 Azure Stack HCIクラスタは、PowerShellによるマニュアル操作で構築する他、「Windows Admin Center(WAC)」の「Azure Stack HCIクラスターの展開」ウィザードを使用した簡素化された構築方法が用意されています。

 特に、WACのウィザードによる方法は、Active Directoryドメインへの参加設定、役割と機能のインストール、更新プログラムのインストール、クラスタの作成、ストレージスペースダイレクトの構成、仮想ネットワーク(SDN)の構成までを、ウィザードに従って簡単にセットアップできます(画面1)。ここまでの簡素化を実現できるのは、Azure Stack HCI認定ハードウェアを前提としているからでしょう。

画面1
画面1 マルチノードのAzure Stack HCIクラスタはWACの「Azure Stack HCIクラスターの展開」ウィザードを使用すると非常に簡単に構成できる

 シングルノード構成のAzure Stack HCIクラスタは、以下のドキュメントでその手順が示されているように、現時点では、全てPowerShellの各種コマンドレットを使用して、マニュアル操作で行う必要があります。

 具体的には、役割と機能のインストール、ドメイン参加設定、クラスタの作成、記憶域スペースダイレクトとボリュームの作成、仮想スイッチの作成、仮想ネットワークの構成(必要に応じて)などです(画面2)。

画面2
画面2 WACのウィザードで行う作業を、シングルノード構成で動くようにマニュアルで実施する

 シングルノード構成でAzure Stack HCIクラスタをセットアップしたら、WACの管理対象としてそのクラスタを追加し、Azureにクラスタを登録します(画面3)。後は、通常のWACと同じように管理することができます。

画面3
画面3 シングルノードのAzure Stack HCIクラスタのセットアップが完了したら、WACに追加し、AzureにAzure Stack HCIクラスタを登録する

 ただし、現在のWACはシングルノード構成を想定していないため、マルチノード構成に依存する機能のUIがそのまま残っていたり、ボリュームの作成に制限があったりと注意が必要です。将来的には、WACの今後のバージョンでクラスタのウィザードによる作成を含めて、シングルノード構成への対応が進むことになるでしょう。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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