画一的なデータガバナンスをやめ、ビジネスニーズへの柔軟な対応を図れ(後編):Gartner Insights Pickup(262)
データガバナンスを画一的なものでなく適応型にすることで、デジタルビジネスのニーズに対して柔軟に対応できるようになる。後編となる今回は、適応型ガバナンスについて具体的に説明しよう。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
データおよびアナリティクス(D&A)ガバナンスの取り組みは、IT主導かビジネス主導かにかかわらず、期待に遠く及ばないのが現状だ。2021年に行われたGartnerのD&Aガバナンス調査では、回答者の61%が「ガバナンスの目標には、ビジネスプロセスや生産性のためのデータ最適化が含まれる」と答えた。だが、そう答えた回答者のうち「目標の達成に向けて取り組みが軌道に乗っている」と考えているのは、42%にとどまっている。
適応型ガバナンスは、柔軟で機敏な意思決定プロセスを可能にし、企業が投資、リスク、価値に継続的に対処しながら、事業機会への迅速な対応を実施するのに役立つ。
Gartnerのアナリストは2025年末まで、デジタルビジネスの拡大を目指す組織の80%は、近代的なD&Aガバナンスのアプローチを採用しないことが原因で、失敗すると仮説を立てている。
適応型ガバナンスを開始する前にやるべきこと
適応型データガバナンス戦略を実施する前に、3つのステップが必要になる。
1.適応型データガバナンスの明確な原則を定義する
こうした原則として、例えば、ビジネスステークホルダーや経営陣と連携し、情報資産をその価値や機密性に応じて扱うことが挙げられる。原則は、自社の力学、文化、リーダーシップスタイルと整合させる。
2.社内のさまざまな組織領域にわたって説明責任の決定権を確立する
これらの組織領域には、ビジネスオペレーション、データおよび技術チーム、アナリティクスセンターオブエクセレンスなどがある。特定のビジネス成果の達成におけるそれぞれの役割を割り当てることも求められる。
3.ビジネスシナリオに適切な適応型ガバナンスのスタイルを適用する
ビジネス成果を達成するために適切なレベルのガバナンス監視とガバナンス手段を用いるためだ。
4.適応型ガバナンスをガバナンス運用モデルの土台に据えることで、適応型ガバナンスを維持する
D&Aガバナンスの決定がもたらす影響に関する理解を、全社に浸透させる。
適応型データガバナンスの4つのスタイル
適応型ガバナンスやマルチスタイルアプローチにより、ビジネスリーダーやITリーダーは4つのガバナンススタイルのいずれか、あるいは組み合わせを適用し、既存のユースケースの要求に加え、デジタルビジネスの新たな要件に対応できる。
1.統制
ルールやポリシー、標準、指令に従って意思決定をする場合、マスターデータ管理(MDM)や、GDPRなどの要件への対応を考慮する。
2.成果
投資のリスクやリターン、成績のバランスを取りながら、ビジネス成果を達成しようとする場合に適用する。
3.アジリティ
ステークホルダーのために価値を生み出す、分散された意思決定や義務付けられた意思決定をする権限を、役割とチームに与える場合に適用する。
4.自律
意思決定が、人や“モノ”によってリアルタイムに行われる場合に適用する。例えば、ガス採掘では、リアルタイムデータを使った処方的なアナリティクスによって、経済的アルゴリズムに基づくガバナンスの意思決定が行われる。
適応型ガバナンスへの移行には時間がかかる
画一的なガバナンスアプローチから適応型ガバナンスへの移行は、一朝一夕にはいかない。「社内外のビジネスステークホルダーと計画を立て、調整する必要がある」と、Gartnerのアナリストでバイスプレジデントのサウル・ジューダ(Saul Judah)氏は説明する。
「組織の成熟度も重要になる。適応型ガバナンスを導入できるほど組織が成熟していなければ、導入すべきではない。成功するには、自社のD&A戦略を見直し、慎重に設計とテストをし、スキルや能力――例えば、データガバナンスをオープンで透明性の高い方法で運用する能力などに、投資する必要があるだろう」(ジューダ氏)
出典:Choose Adaptive Data Governance Over One-Size-Fits-All for Greater Flexibility(Smarter With Gartner)
筆者 Laurence Goasduff
Director, Public Relations
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.