日本人は「できない」とは言わずに「ちょっと難しいですね」と言う:Go AbekawaのGo Global!〜Rajesh Jayan(後)(3/3 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。前回に引き続き、ミクステンドのRajesh Jayan(ラジェッシュ・ジャヤン)さんにお話を伺う。同氏がCTOとして大切にしていることとは何か。
顧客が欲しいのは「その機能を使った先にある何か」
阿部川 少し意地悪な質問かもしれませんが……、もし、とても良い機能や製品のアイデアが浮かんだものの、それは顧客が求めているものとは違う、となったらこのギャップをどう埋めたらいいでしょうか。
ラジさん 一番大切なのは顧客ですので、まずは顧客の目的は何なのかをしっかり把握することが重要です。多くの場合、顧客は自分がやりたいことが何だか分かっていません。「この機能が欲しい」と言っても、本当に必要なのは「その機能を使った先にある何か」ということはよくあります。
われわれは“本当に使われるプロダクトや機能を顧客に提供すること”をモチベーションにしています。ですから、技術的に複雑なものを考えるのではなく「これは顧客にとってどういった点がいいのか」「顧客の仕事にどのようなインパクトを与えるか」を深く追求することが大切だと考えています。
「(相手も知らない)その機能を使った先にある何か」は良い表現ですね。相手も思い付いていない「何か」を見つけるのは手間もかかるし、時間も必要でしょう。相手の立場になったり未来を予測したりプロトタイプを作ってみたり、思い付くさまざまな手を使っても必ずしも見つかるとは限りません。でもその結果「本当に使われるもの」を提供できるとしたら、“作り手”としてこれほどうれしいことはないですね。それはエンジニアであっても、私のような編集であっても変わらないと思いました。
阿部川 では最後に。今から10年後にラジさんは何を達成していると思いますか。
ラジさん 技術に関わる仕事をしているのは間違いないと思います。できれば、人を指導するようなことができているといいですね。ただ技術に関して将来を予想することはとても難しいです。数年前であっても、スマートフォンを想像できた人はいなかったでしょう。だから常に新しいことに対してオープンマインドでいたいと思っています。
インタビューを終えて 〜Go’s thinking aloud〜
このインタビューシリーズに登場いただく方は、皆、大変聡明(そうめい)で頭の回転が速い。しかし自分の考えをどう表現するかで、明確に2つに分かれる(ということは以前も書いた)。頭の回転に口がついていかなくて、もどかしくて早口になるタイプ(このタイプの方が圧倒的)と、だからこそ、こちらの理解度を確かめるように、ゆっくりとかみ砕いて話してくれるタイプだ。ラジさんは間違いなく後者で、質問をすると、一呼吸置くように考え、そしてゆっくりと、思いを巡らすようにして話す。内容に、その適度なスピードに、自然と引き込まれる。
理想的なCTOだと思った理由は2つ。その生い立ちと、ビジネス上の経験だ。アラブ首長国連邦に生まれ、シンガポールで成長し、日本に日本人の奥さまと暮らす。多文化の中で暮らすことが当たり前の中で生きてきた。また既存企業のエンジニアから、スタートアップのCTOまで、別の言葉で言えば、プログラミングからマネジメントまでを、多様な規模のビジネスや、多くの違ったビジネスフェーズで経験してきた。ラジさんが考える次の一手は何か、待ち遠しい。
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