デジタル化の成果が出るのは何年目? NRIがIT活用の実態調査結果を発表:人材不足も“成果が得にくい要因”に
野村総合研究所は、国内企業を対象に実施したIT活用の実態調査の結果を発表した。デジタル化への取り組みについて、その年数が長い企業ほど成果を獲得していることが分かった。
野村総合研究所(NRI)は2022年11月29日、国内企業を対象に実施したIT活用の実態調査の結果を発表した。この調査は、日本国内に本社を持つ、売上高上位企業約3000社の役職者(CIO<最高情報責任者>、IT担当役員、経営企画担当役員、IT部門長、経営企画部門長など)を対象に実施し、466件の有効回答を得た。
成果を得るにも人材不足が課題に
デジタル化の推進による効果について聞くと「業務プロセスの改善、生産性向上」「業務に関わる人数や労働時間の削減」という回答が突出して高く、それぞれ81.5%(複数回答、以下同)、77.4%だった。3位以下は「顧客数や顧客単価、顧客満足度などの向上」(35.0%)、「既存事業における商品・サービスの高度化」(34.4%)、「新規事業や新サービスの創出」(28.8%)などが続いた。
デジタル化の推進から効果を得る上での課題については、「デジタル化を担う人材の不足」を挙げた企業が最も多く、80.5%(複数回答)だった。課題を解消するために行っている取り組みとして「人材のスキル向上や専門人材の採用」を挙げた企業の割合は48.2%だった。また、「旧来の企業文化や風土」(44.2%)や「デジタル戦略の欠如」(39.6%)を課題と認識している企業も多かった。
取り組み年数が長い企業ほど成果を獲得している
デジタル化への取り組みについては、その年数が長い企業ほど成果を獲得していることが明らかになった。
デジタル化の取り組みを「顧客に対する活動のデジタル化」「業務プロセスのデジタル化」「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」の3つの領域に分けて、その取り組み年数を尋ねたところ、「業務プロセスのデジタル化」について5年以上取り組んでいる企業の割合は39.3%、「顧客に対する活動のデジタル化」は16.3%、「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」は10.7%だった。「顧客に対する活動のデジタル化」と「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」では、「取り組んでいない」と回答した企業の割合は、それぞれ31.3%と36.2%で、比較的多かった。
3つの領域のそれぞれについて取り組みを進めている企業(「取り組んでいない」以外を回答した企業)を対象に、投資から財務上の成果(コストの削減、収益の増加など)や他の定量的な成果(顧客獲得数、顧客満足度など)を得ているかどうかを調べたところ、どの領域においても取り組みの期間が長いほど「成果が得られている」と回答した企業の割合が高い傾向があった。
NRIは「デジタル化への投資を意味のある成果につなげるためには、中長期の視点を持って取り組みを進める必要がある。特に、事業やビジネスモデルの変革については、腰を据えた取り組みが求めらる」と述べている。
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