英語が難しい? エンジニアはもっと難しい言語を知っているじゃないか:Go AbekawaのGo Global!〜Vipul Mishra(後)(3/3 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回も八楽のVipul Mishra(ビプル・ミシュラ)さんにお話を伺う。翻訳という定量的な解釈が難しい領域で苦労しつつ、「面白い」と笑顔をのぞかせるビプルさんの知的探究心の原動力は何か。
英語が難しい? もっと難しい言語を知っているじゃない
阿部川 ビブルさんのチームはブラジルの方やロシアの方、インドの方もいますが、日本人のエンジニアとも仕事はするんですか。
ビプルさん 研究室ではほとんど日本人のエンジニアとコラボしたり、ディスカッションしたり、勉強したりしました。八楽でもインターンと一緒に働きました。日本人のエンジニアとも会話は英語です。
阿部川 日本のエンジニアと仕事をしてみて困ったことはありましたか? さっきの「適当」じゃないけど、意味が違うみたいな。
ビプルさん もう日本語ができるのであまりないですね。あと、エンジニアは私のような性格の人が多くて、結構論理的なので、ちゃんと話をしてコミュニケーションすることが多い気がします。
阿部川 日本人のエンジニアへのメッセージはありますか。
ビプルさん 考えたんですけど、やっぱり一番は「英語に力を入れること」です。
英語が分かると調べられる資料も読める本も全部増えますし、働ける環境も増えますし、もう良いことしかないですね。すっごい難しいライブラリとか、すっごい難しいプログラム言語を習得できるのに、「いや、英語は俺には無理」とか言いますから。なんか笑えちゃうんですよね。あんなに難しいコーディングはできるのに、英語が難しいっていうのが面白い。
阿部川 それはいいことを聞きました。エンジニアはみんなあんなに難しいことができるのに、それに比べれば英語なんてね。他の言語に比べれば英語は簡単ですもんね、他の言語に比べると、変化するところが少ないし。エンジニアであれば内容は分かるので、それをちゃんと英語でコミュニケーションできれば、こんな素晴らしいことないですよね。
編集鈴木 ネパールの若い人たちは大体外国目指すっておっしゃっていましたけど、どんな外国に行く人が多いんですか。
ビプルさん やっぱり英語が使えると楽だから、米国、オーストラリア、イギリスですね。特にオーストラリアが多い気がしますね。
編集鈴木 ビプルさんも英語を話せるから、本当は米国とかに行った方がお給料が高くなっていいんじゃないですか。
ビプルさん いや、そういうふうには考えないです。給料以外にも文化とか。1番思うのが、日本は便利で安全、いくらお給料が高くてもそれに勝てることはない気がしますね。例えば夜中2時に外で歩いても安全で、危ない気はしない。それは第一にあると思いますよ。
あと、日本に住んできて、日本のつながり、日本人の友達や日本にいるネパール人とかコネクションがたくさんできているわけで、それをそう簡単に捨てて他のところへ行こうとは思いません。また、日本は旅行すれば、全てのところに違う何かを感じられる。鳥取の砂漠もあれば、北海道の山も、長野の山もいろいろある。すごい狭いスペースにいろんなものがそろっているのも、すごく気に入っています。
インタビューを終えて 〜Go’s thinking aloud〜
自然体で気取らないが、頭の回転の速さは隠せない。日本語の表現がまた憎い。加えて文化への理解力の高さ。意地悪く突っ込むところを探すが、褒めることしかできない。そしてイケメン! 聡明(そうめい)な若者に出会って、掛け値なしにうれしかった。
地頭の良さと行動力、多くの言語(ネパール語とその派生方言、英語、日本語)、多国籍多文化理解とくれば、グローバルでも負けるわけがない。というか、ビプルさんにとってはもちろん勝ち負けではなく、とにかくやりたいことがあるから、やってみただけだろう。
まずは「英語」。言語の理解や豊富な語彙(ごい)は、さらなる深い思考を生む。そして「やるか、やらないか」。できるかどうかではなく、まずやってみると足りないことや新しいやり方が見つかり、結局効率的にできるようになる。人が成長するにはこの2つしかないのではないか。ビプルさんと話して、あながち暴論ではないと確信した。
阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)
アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 訪問教授 インタビュアー、作家、翻訳家
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。
編集部から
「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOなど、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。
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