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「PCの切り抜き帖」と「3つの願い」、私は13歳だったGo AbekawaのGo Global!〜Lily_Tiong(前)(3/3 ページ)

グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回はLeapMindのLily Tiong(リリィ・ティオング)さんにお話を伺う。大家族で決して裕福ではなかったけれど、多くの愛情と教育の機会を与えられたリリーさん。そんなリリーさんが心に秘めていた3つの願いとは。

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日本に来るまで、相棒は「自分ブランドのPC」

阿部川 “コンピュータ”の実物に出会ったのは、いつですか。

リリィさん 21歳のときです。13歳から数えて8年後にやっと、です。当時は大学に進学するために学費ローンを組んでいる身でしたので、大学にある共用のものを最初は使っていました。

 ただ、大学2年になると勉強が難しくなり、PCを使って学習しなければならなかったので自分のものを買うことに決めました。学生ですしお金もなかったので、しっかりしたブランドのPCを買うことはできません。ですからなるべく安価に済まそうと、モニターやマザーボード、CPU、キーボード、マウスなどの部品を別々に買ってきて、「自分ブランドのPC」を組み立てました。

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インタビュー中のリリィさん

阿部川 自前で“コンピュータ”を作ったわけですね。

リリィさん はい。お金がなかったのでそうやって工夫する必要がありました。ただ、処理速度などのパフォーマンスや互換性は妥協しませんでした。PCを自作した経験は、結果的に“コンピュータ”そのものについて学ぶ大きな手助けになりました。ソフトウェアのインストールを試行錯誤し、アップグレードをどうするか、メモリやHDDが壊れないようにうまく稼働させるにはどうするかなどたくさんのことを工夫し、そこから多くを学びました。

阿部川 昔の大学のコンピュータクラブみたいですね。自分たちでパーツを集めて、自分たちで作って、壊れたら自分たちで直して。実践的な学びだったのですね。当然、インターネットにもつなげましたよね?

リリィさん はい、そうです。

阿部川 他の学生に売ればよかったのに。

リリィさん (笑)。

阿部川 だって、リリィさんがやっていたことって、マイケル・デルさんがDell Technologiesでやったことと同じですよ! いやはや素晴らしい。

いつまでそのPCを使っていたのですか。

リリィさん 日本に来たときまでだったと思います。奨学金を得て日本で勉強できるようになって、PCを購入する費用を捻出できた2010年にソニーの「VAIO」に買い換えました。でも、それまではずっと自作PCを使ってました。


編集中村
編集 中村

 私も最初のPCはVAIOでした! メモリースティックしか外部記憶媒体がなく、大学のレポート出力に苦労しました。ただ、そのことがあってからスペックだけでなく外部拡張についても考えるようになったので、何事も経験なのですよね。きっとリリィさんも自作PCで試行錯誤する中でたくさんの失敗があったのでしょう。「自分でやってみる」って大切ですね。


阿部川 それはスゴい! よっぽどハイスペックのものを作ったのですね。

リリィさん いえ、そんなことはないです(笑)。

FPGAの企業でエンジニアデビュー

阿部川 大学卒業後は、マレーシアの企業に就職したのですね。

リリィさん そうです。ソフトウェアエンジニアとして、アルテラに入りました。アルテラは、FPGA(Field Programming Gate Array)の企業で、開発者がFPGAを使うための製品を扱っていて、その開発やエンジニアリングに1年と少し携わっていました(なお、2015年に買収され、現在はIntelの一部門となっている)。その後、JICA(国際協力機構)の奨学生として、東京工業大学の博士課程の後期に入学しました。

阿部川 博士課程の専門は何ですか。

リリィさん マイクロプロセッサのマルチプロセッシングが修士までの専門で、博士課程では集積システムを研究しました。「Smart IO」というプロジェクトで、「Linux OS」のシステム間のコミュニケーションを2014年まで担当しました。

 しかしプロジェクトの人員が少なく、予算も限られていたので、担当の教授が研究分野やFPGAでのプログラミングなどの経験が生かせる就職先をあっせんしてくれて、一緒にプロジェクトを進めていたALABという企業に就職しました。


 たくさんの兄弟に囲まれ、引っ込み思案だったリリィさんは両親の気を引くため勉強に打ち込む。それはやがて世界に飛び出すためのパスポートとなった。後編はLeapMindでのお仕事と「エンジニア」という仕事に掛けるリリィさんの思いについて伺う。

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