「PCの切り抜き帖」と「3つの願い」、私は13歳だった:Go AbekawaのGo Global!〜Lily_Tiong(前)(2/3 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回はLeapMindのLily Tiong(リリィ・ティオング)さんにお話を伺う。大家族で決して裕福ではなかったけれど、多くの愛情と教育の機会を与えられたリリーさん。そんなリリーさんが心に秘めていた3つの願いとは。
新聞の切り抜きで作った“コンピュータ”に込めた願い
阿部川 おっと、この質問をもっと前にしておくべきでした。最初に触ったPCは何で、いつごろでしたか。
リリィさん 「いつ」に関しては、ぜひお話ししたいことがあります。1995年のことです。私は13歳でした。
当時マレーシアでは「PCを持っている人」が少数派でした。私も新聞や広告でPCがどのようなものか知ってはいましたが、実物を見たことはありませんでした。兄弟が多かったので家にはそれを買う余裕などとてもありません。当時、PC1台が3000〜4000リンギット(2023年2月現在のレートだと1リンギットは約30円なのでおよそ10万円だが、当時はもっと高額だったはず)はしたと思います。ただ私はとても欲しかったので、新聞などのPCの広告を片っ端から切り抜いて集めていました。確かNECのものだったと思います
その広告を見ながら、3つの願い事を唱えていました。今でもよく覚えています。
1つ目は「自分のPCを持てるようになる」。2つ目は「いつか必ず“コンピュータ”の中身を全て理解できるようになる」、3つ目は「いつか必ず“コンピュータ”そのものを、私が進化させてみせる」ということです。
切り抜きのPCを見ながら、リリィさんはどんな気持ちで3つの願いを口にしたのでしょうか。勝手な想像ですが、お金がなくて悔しいといったネガティブな思いではなく、勉強して世界に出てもっともっと多くのことを学びたいというポジティブな思いだったのでしょう。だからきっと、この3つはリリィさんにとって「誰かが何とかしてくれる」という“願い”じゃなくて「自分がその道を切り開く」という“誓い”だったのではないかと私は思います。
今現在、PCを持てるようになりましたし、少しだけかもしれませんが普通の人よりは“コンピュータ”のことを分かるようになったと思います。もちろん“コンピュータ”は常に進化していますし、さまざまな種類があり、全てを完璧に知っているとは言えませんが、ある程度は分かるようになりました。3つ目の願いに関しては、ささやかではありますが、“コンピュータ”の開発に貢献できていると思っています。
”コンピュータ”はとても大きなシステムに日々成長していますし、多くの種類の知識が必要になっていますから、その全てが分かるとはいきません。本当に「コンマゼロゼロゼロパーセント」くらいかもしれませんが、それくらいは貢献できているのではないかと思います。ただ、まだまだこれからです。第3の目的に向かってどんどん自分を成長させて、臨むつもりです。私の人生は“コンピュータ”中心で進んできました。いつでも“コンピュータ”のことを考えて大きくなってきました。
阿部川 その広告の切り抜きのスクラップブック、今でもお持ちですか。
リリィさん 恐らく実家のどこかにあると思います。
阿部川 それ、見たいなあ〜!
リリィさん (笑)。
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