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「エルゴノミクスキーボード」は、時代の遺物ですか?今後は自作するしかないのか

皆さんはどんなキーボードを使っていますか? きっと、それぞれにこだわりがあるでしょう。自作されている方もいらっしゃるかもしれませんね。

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 「こんなの、誰が使うんだろう」。最初はそう思っていました。それがまさか、これなしでは生きられない体になるとは……。

 「これ」とは、エルゴノミクスキーボードです。

 筆者はここ10年ほど、エルゴノミクスキーボードを使っています。右手と左手のキーが「ハ」の字に分離した、変な形のアレです。

筆者のキーボード(Logicoolの「ERGO K860」)
筆者のキーボード(Logicoolの「ERGO K860」)

 最近はあまり人気がないのか、新製品がなかなか出ません。2023年4月28日には、エルゴノミクスキーボードを出し続けていたMicrosoftが、自社ブランドのハードウェア(キーボードを含む)の製造を終了し、Surfaceブランドに統合すると発表。Surfaceブランドにもエルゴノミクスキーボードはあるようですが、Microsoftブランドとほぼ同じに見えるのに、高い印象です。エルゴノミクスじゃないとダメな私には、困ったニュースです。

 時代の遺物と化しつつある(?)エルゴノミクスキーボード。筆者が使い始めた2008年当時は、今より栄えていたような気がします。

エルゴノミクスキーボードを背負って取材に

 筆者がアイティメディアの編集部員だった当時、ITエンジニアがエルゴノミクスを使っているのを見て「なんだこりゃ、使いづらそう」と思っていました。その評価が180度変わったのは、左腕を手術で「人工骨折」したからです。

 ある日急に、左の手首を返せなくなり、病院で精密検査しました。手首の異常だと思いきや、「左腕の骨のうち1本(尺骨)が通常より長いせいで、手首に異常が出た」との診断。「尺骨をぶった切って短縮し、ボルトでつなげる手術」(尺骨短縮術)で治療したのです。手首のちょっとした異常を治すために、腕を骨折させるという荒技でした。何でやねん! ってなりました。痛かったなあ……。

 手術後は、左手首からひじまで、ギプスでガチガチに固めた状態になり、通常のキーボードを打つ場合、キーの向きに対して手のひらが斜めに当たってしまう状態。とても打ちづらくなくなってしまいました。

当時の腕の状態
当時の腕の状態
筆者を救った「Natural Ergonomic Keyboard 4000」
筆者を救った「Natural Ergonomic Keyboard 4000」

 頭と指先は元気なのに、左腕が使えないというだけで記者としての仕事ができないのはつまらなすぎる! 仕事が好きだった筆者は、何とかキーボードを打てないかと考え、ひらめいたのが「エルゴノミクス」。PC USER編集部にお借りして、Microsoftの「Natural Ergonomic Keyboard 4000」を使ってみたのでした

 これがハマりました。腕をパームレストに固定すれば傷に響かないし、キーがハの字に別れているのが固めた左手首にフィット。「これがあれば、仕事できる!」と大喜びしました。今振り返ると「いや、ケガした時ぐらいは休めよ」と思いますが。

画像
完璧な角度……

 当時は、取材先にもこのキーボードとノートPCを抱えていき、使っていました。「でかいギプス+でかいキーボード」の記者がやってきて、取材相手はドン引きしていたことでしょう。

キーボードそのものが時代の遺物になる?

 エルゴノミクスキーボードは手首に優しく疲れにくいことを実感し、ギプスが外れた後も使い続けました。外出取材に持っていくことはさすがになくなりましたが……。

 壊れるたびに買い換え、接続がUSBからBluetoothになり、筐体は薄くなりましたが、スタイルはハの字。Microsoftのエルゴノミクスキーボードを2台使った後、Logicoolのエルゴノミクスキーボードに買い換えて、今に至ります。

 エルゴノミクスキーボードは選択肢が少なく、筆者のような女性の手にはちょっと大きすぎるものばかり。時々「他も試してみようかな?」と思い、Happy Hacking Keyboard(HHKB)など評判の製品を使ってみたこともありましたが、エルゴノミクスでないと手首が不安で、ずっとエルゴノミクス派です。

 しかしエルゴノミクスはあまり売れないようで……。Microsoftの商品は何年もアップデートされないまま製造終了になりますし、Logicoolも、いつまで続けてくれるのか心配。どうか生き延びてほしい。

 そもそもキーボード入力って、あまり直感的じゃないですよね。脳で文字を思い浮かべてアルファベットに変換して、指でたたくって……。習得まで時間もかかるし、ある意味“不自然”な入力方法が、100年以上も現役なのが不思議です。今後、音声入力がさらに発達したり、脳波から思考を読み取って入力できるようになったり(!?)して、キーボード入力そのものが時代の遺物になる日が来そうな気もします。

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