ベテランフリーランスエンジニアが語る「ボクたちの案件の選び方」:早いは正義(1/2 ページ)
フリーランスマスターたちは、新規参画案件選択時にどのようなポイントを見ているのだろうか。金銭などの条件、PC環境、それとも――?
案件ごとに契約を結び、仕事を進め、報酬を得る「フリーランス」という働き方。PCとインターネットがあればいつでもどこでも働ける時代になり、エンジニアの世界にもフリーランスという働き方が浸透してきた。
会社や人のしがらみにとらわれず技術力で勝負できる、深めたい技術や業界など案件単位で仕事を選びスキルアップを自分でデザインできる、収入も悪くないらしい――ということで、フリーランスエンジニアを目指す会社員エンジニアも多いことだろう。
だが、いままで会社組織に属していて選択をある意味組織に委ねてきた会社員エンジニアにとって、案件を自分で選ぶというアクションは未知であり恐怖でもあるかもしれない。
どうせガチャでしょう、どうやったらドボンを引かずに済むの――そういった疑問に答えるために、エンジニア歴9〜14年、フリーランス歴3〜10年のフリーランスマスター3人にお話を伺った。
モデレーターは、ITフリーランス特化型のエージェントとして20年以上サービス展開をしている「ギークス」のマーケティング担当者。ギークスが持つ情報も提示しつつ、案件選びの極意と本音を聞きだした。
フリーランスエンジニア希望者、初心者、案件選びで苦労しているベテラン、皆の参考にしてもらいたい。
私たち「これ」で案件を選びました
最初のテーマは「案件の選択基準」だ。
ギークスによると、コロナ禍以降、同社におけるフリーランスエンジニアの募集案件は増え続け、案件倍数(1人のフリーランスエンジニアに対して企業が募集する案件の数)が10倍を超えることが多いという。特徴は、「これまで多かったベンチャー企業に加え、大手企業からの問い合わせが増えています。テレワーク前提の案件が増え、拠点地域を問わない案件が増えています」とのこと。
需給のバランスが崩れると、当然フリーランスエンジニアが企業からのオファーを辞退するシーンも増えてくる。ギークスが登録エンジニアたちに聞き取りした「企業オファー辞退の理由」として、「想定していた案件と商談で聞く話にギャップを感じる」「企業から求められるレベルが高く不安を感じる」「商談担当者との相性や現場の雰囲気が合わない」などがあったという。
また、オファーを辞退されがちな企業の特徴は、「提示の作業内容が不明確で、作業イメージが伝わらない」「商談での案件の説明が淡泊、あるいは説明が分かりづらい」「案件内容と商談時に話す内容との乖離(かいり)が大きい」だという。
では、フリーランスマスターたちは、案件選択に当たり、募集要項や商談でどのようなポイントを見ているのだろうか。
H・K氏は、「報酬面はもちろん見ていますが、技術面では開発環境を重視して見ています」と回答した。具体的には、「モダンな技術を使用している企業であるか。または、WindowsかMacか好きなOSの端末が選べるなど融通が利く開発環境かどうか」などとのこと。
商談時に見ていることは、「文面に記載された案件の内容と実際の業務内容に本当に差異がないかどうか」であるという。例えば、「アジャイル開発をやっている」というところであれば、チームにちゃんとスクラムマスターがいるのか、MVP(Minimum Viable Product)をちゃんと実践しているのかなどを、企業担当者の受け答えから見ているとのことだ。さらに重視しているのが、「技術責任者の人柄」で、技術の話でウマが合うか、世間話を含めて話しやすいかなどだ。
「新しい言語などを使用して挑戦的な取り組みをしている企業は、エンジニアが魅力を感じると思います」(H・K氏)
H・K氏 エンジニア歴9年、フリーランス歴3年。ポジションはテックリード。2015年に大学卒業後、人材系エンジニアリング企業、コンサルティング企業の勤務を経てフリーランスに。所有スキルは、サーバサイドのJava、Kotolin、Go、PHP、JavaScript。Vue.jsなどのフレームワークも扱う。経験業界は人材、広告、物流
O・T氏は、最初に書類を見る段階であれば、「自分がそのときに習得したい、あるいは経験したいスキルセットがあるかどうか」だと答える。また、「システムの設計や開発のフェーズから参画できるか」「B2B(Business to Business)かB2C(Business to Customerか」も気になるという。「私はあまり気にしませんが、WindowsかMacを選べるのは少しうれしいのかも」とも。
H・K氏と同様にO・T氏も、商談で話をする担当者の雰囲気や話し方など、人格面や、技術の知見がどの程度あるのかが気になると述べた。
「商談で話しているときに、現場で自分が働くイメージが浮かぶといいなと思います」(O・T氏)
「オンプレミス中心の開発環境は、不利なのか」との問いには、現場の選択はあくまで全体のバランスを見ており、環境の何か1つ自分にとってダメなことがあったとしても、そのせいで辞退をするということは、「自分は多分ない」と答えた。
O・T氏 エンジニア歴14年、フリーランス歴10年。ポジションはフロントエンドとバックエンドの両方。テックリードも少し。高校卒業後、企業で正社員として4年間エンジニアを務め、その後フリーランスに。フロントエンドではTypeScriptとVue.js、バックエンドではGoやJSを使用している。B2BおよびB2C向けWeb系のシステム開発経験が多い。経験業界は、施工管理、IoT、動画配信などのエンタメ系
E・R氏が募集要項や商談で注意するポイントは、「関わるサービスが面白いかどうか、仕事が楽しいかどうか」であって、報酬面はあまり興味がないのだという。「面談する方と意気投合して楽しくなれば、単価が安くてもやりたいと思ってしまいます」とのこと。
1つだけ気になるのは、「自分のPCが使えるかどうか」だという。「PCを支給される現場は少しつらいです。英語キーボードユーザーなので」との理由だ。
ギークスの「面談時にどうすれば盛り上がるのでしょうか」との問いには、「経歴の話をしているときに、少し脱線して雑談になるとか。相手が少し堅い人だと思えば、自分から少し笑いを振ってみます。笑いのベクトルが自分と合えば、いいなと思います」と答えた。
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