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SDNインフラの構築が大幅に楽に!――Azure Stack HCI OSを含むSDNインストール用VHDXイメージのダウンロード提供開始Microsoft Azure最新機能フォローアップ(195)

MicrosoftはAzure Stack HCIソフトウェアのVHDX形式でのダウンロード提供を開始しました。これにより、SDNインフラストラクチャのインストールが大幅に簡素化されます。

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Microsoft Azure最新機能フォローアップ

オンプレミスで動くクラウドサービス「Azure Stack HCI」とは

 「Azure Stack HCI」はMicrosoftによって構成が検証され、認定されたハードウェア上で動作する専用OSで、最小2ノード(テスト目的の場合は1ノード)から最大16ノードの「ストレージスペースダイレクト(S2D)」のストレージを備える、Hyper-Vホストクラスタとして機能するハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)クラスタソリューションです。

 ハードウェアは利用者側が用意し、オンプレミスのデータセンターに設置しますが、オンプレミスのインフラストラクチャとMicrosoft Azureクラウドサービスを組み合わせたハイブリッド環境において、Azureのサービスとして提供されるのが特徴です。

 Azureのサービスとして従量課金で無制限のWindows(ゲストOSライセンスは「Windows Server 2022 Datacenterライセンス」の購入または「Windows Serverサブスクリプション」を利用)またはLinux仮想マシンを実行できる他、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)を構成してマルチテナントに対応することができます。

 さらに、「Azure Kubernetes Services(AKS)」や「Azure App Service」「Azure SQL」「Azure Virtual Desktop(プレビュー)」といった、Azureと一貫性のあるマネージドサービス(PaaS)を提供することも可能です。

 Azure Stack HCIの利用を開始するには、自社で用意した認定ハードウェアに、Azure Stack HCI OSをダウンロードしてインストールし、「Windows Admin Center」管理ツールのウィザード(またはPowerShellコマンドライン)を使用してセットアップし、最後にAzureに登録します(画面1)。

画面1
画面1 Windows Admin Centerを使用してAzure Stack HCIクラスタを作成し、Azureに登録することで利用可能になる

SDN用VHDXの準備は、もうConvert-WindowsImageで悩む必要なし

 SDNインフラストラクチャのセットアップはオプションであり、クラスタ作成時の最後のステップ(不要な場合はスキップ可能)、またはクラスタの作成後に行うことができます。SDNインフラストラクチャのコンポーネントであるネットワークコントローラー、ソフトウェアロードバランサー、ゲートウェイを展開するには、事前にAzure Stack HCI OSを含む仮想ハードディスクイメージ(VHDX)を準備しておく必要があります(画面2)。

画面2
画面2 SDNのコンポーネントのセットアップには、Azure Stack HCI OSの一般化イメージを含むVHDXが必要

 Azure Stack HCI OSは「システム準備ツール(Sysprep)」による一般化に対応していないため、これまでは「Convert-WindowsImage」コマンドレット(PowerShellギャラリーの「Convert-WindowsImage」モジュール)を使用して、Azure Stack HCI OSのISOイメージ内の「\Sources\Install.wim」をVHDXに変換する必要がありました。しかし、公式ドキュメント通りに操作しても、エラーが発生して失敗するケースがありました(画面3)。

画面3
画面3 PowerShell 7.3で公式ドキュメント通りに操作しても原因不明のエラーで失敗する。管理者として実行しても同様。Windows PowerShell 5.1で実行した場合は、さらに別の大量のエラーが発生した

 筆者はこのエラーを解消することができず、代わりにx0nn氏によってGitHubに公開されている「Convert-WindowsImage.ps1」(https://github.com/x0nn/Convert-WindowsImage)を使用していました(画面4)。

画面4
画面4 代替手段として、GitHubで公開されている「Convert-WindowsImage.ps1」に含まれる「Convert-WindowsImage」ファンクションを使用して、ISOイメージからVHDXを作成

 このように、これまではSDN用VHDXの準備に苦労することがありました。そこでMicrosoftは2023年5月31日(米国時間)、Azure Stack HCIをVHDX形式のファイルとしてダウンロード提供することで、この問題を完全に取り除きました。

 VDHXファイルは、Azure Stack HCIのソフトウェアダウンロードページ(https://azure.microsoft.com/contact/azure-stack-hci/)から、言語に「English - VHD」を選択することでダウンロードできます。

 約5.2GBのVHDXファイルをダウンロードして、Azure Stack HCIの各ノードからアクセス可能な場所(クラスタの共有ボリューム《CSV》など)に配置し、SDNインフラストラクチャのセットアップ時にVHDXの配置先パスを指定するだけでよくなりました(画面5画面6)。

画面5
画面5 「Azure Stack HCIソフトウェアのダウンロード」ページから言語「English - VHD」を指定してダウンロードする
画面6
画面6 ダウンロードしたVHDXファイルをクラスタの共有ボリューム(CSV)上のパスなどに配置し、SDNインフラストラクチャのセットアップ時にVHDパスとして指定する

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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