日本の社会保障は神:Go AbekawaのGo Global!〜Hsu Myat Thida(後)(1/3 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回もエアリテックのシステムエンジニアであるHsu Myat Thida(ス・ミャッ・ティダ)さんにお話を伺う。将来の夢は起業、だが「IT企業にはしない」という。それはなぜか。
国境を越えて活躍するエンジニアにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。前回に引き続き、今回もエアリテックのシステムエンジニア、Hsu Myat Thida(ス・ミャッ・ティダ)さんにお話を伺った。日本とミャンマーを股に掛けて働くスさんが感じる「日本人には当たり前、けれどもミャンマーから見ると素晴らしいところ」とは。
日本で「ミャンマーを変える仕事」に
阿部川 “Go”久広(以降、阿部川) 日本ではGlobal Innovation Consultin(以下、GIC)に入社されます。
Hsu Myat Thida(ス・ミャッ・ティダ、以降スさん) はい。派遣社員として働き始めました。以前勤めていたMyanmar DCR(ミャンマー第一コンピュータリソース)の親会社の社長が立ちあげた会社なんです。
阿部川 派遣先は日立製作所(以下、日立)ということですが、どんなお仕事をされたのですか。
スさん 日立では、主に2つの案件をやりました。最初の案件はシステム開発のプロジェクトで、要件定義からシステムテストまでかなり長いプロジェクトでした。3年くらい、そこで開発をやりました。その次は「ミャンマーの社会保障をシステム化する」というプロジェクトがあって、それに参画しました。
提案書を作成したり、日立や日立グループの人たちと入札に参加したりもしましたし、ミャンマーに出張して直接現地の公務員にヒアリングすることもありました。
阿部川 GICでは6年間お仕事をされました。その後、現在のエアリテックに転職されるわけですが、きっかけは何だったのでしょうか。
スさん 日立以外の会社ではどのようなことをやっているか、今私がやっていることと何が違うのかを知りたいと思うようになりました。シンガポールで仕事をしたときと同じですね。
エアリテックを選んだのは、友人に退職を考えていることを相談したら紹介してくれたんです。エアリテックは当時、設立してまだ1年のころで、会社の方針や将来に向けた取り組みなどをこれから決めるという時期でした。技術以外にも勉強になることが多いタイミングです。これは大きな会社ではもらえない経験だと考えました。
(入社の決め手は)もう1つ、社長と面接をして、社長の仕事の仕方や考え方が合ったんですね。社長も技術者で、エンジニアが何を考えているか、エンジニアの気持ちが分かる人だと感じました。他の会社では「エンジニアの気持ちは実はちょっと分からない」といった社長もいましたが、エアリテックの社長は違いました。
また、新しい技術を積極的に採用していて、新しい世代に行こう(という思想を持っていました)。日本は、もうほとんどのことがシステム化されていると思いますが、その次の段階はデータを活用することだと考えています。エアリテックにはデータサイエンテスやデータ分析の部分もあるので「じゃあそこはやってみたい、新しい技術も使っているし」ということで決めました。
エンジニアとして働くのであれば、エンジニアの仕事に理解ある社長がいると安心です。個人的には「エンジニアの気持ちは分からない」と素直に言った社長も悪くないな、と思いました。「分からないからこそ、ちゃんとヒアリングするよ」ということかもしれませんからね。スさんが面談した社長がどうだったかは分かりませんが(笑)。
阿部川 大きなくくりでいえばシステムエンジニアということになるんでしょうか。
スさん いろいろですね。データ分析の部門で働いているので分析や調査もしますし、コンサルタントもします。エアリテックで働き始めて、ちょうど5年目です。
このスキルには、この仕事
阿部川 2020年ぐらいからコロナ禍になりましたが、仕事のやり方は変わりましたか。
スさん エアリテックに入ってからずっと在宅勤務でしたから、大きくは変わっていません。必要に応じてお客さまのところに打ち合わせに出たりはしますが、仕事は自宅でしてきました。変わったとしたら、お客さまとの打ち合わせですね。以前はお客さまのところに伺っていたのですが、今(2023年2月現在)は全部オンラインになりました。
阿部川 何人くらいのチームで働いているんですか。
スさん 実は2021年からミャンマーにいるんです。ミャンマー支店を作るため、現地で採用活動などをしています。チームはミャンマー側で15人ぐらい、日本側のミャンマー人も入れたグループでは20人以上います。
さらりとお話しされていますけど、ものすごくお仕事できる方なんだなと思います。入社して数年で海外の社会制度に関わるプロジェクトに携わり、新しい技術にも物おじせず飛び込み、そして海外拠点の管理者を勤める。仕事に対するポリシーも明確ですのできっとメンバーから信頼されているのだろうと思います。
私はミャンマーで支社を作って、「ミャンマー側の人だから、この仕事」というより、「この人のスキルはこれだからこの仕事」ということをやりたいんです。ほとんどのオフショア開発のように「日本側の人は上司でミャンマー側は指示通りやるだけ」という仕組みにはしたくないんです。
ミャンマーでも日本でも、エアリテックとしては1つのチームです。どこにいるかにかかわらず、「この人はこのスキルがあるから、この仕事」ということをやりたい。いつもミャンマー側の社員にも伝えているんですが、「みんなオンラインでやっているんだから場所は関係ない。みんな、仮想な組織を考えてください。リモートでも日本で仕事している感じでやってください」と。日本も在宅勤務ですからね。
阿部川 おっしゃる通りです。「このスキルにこの仕事」っていうのはもう素晴らしいですね。
スさん 私が日本に行けたのは、日本だったからではなく、「このスキルを持っているから、どこにでも行けます」だったので、スキルが重要。だから、ストイックな気持ちがなく、楽に仕事してくださいということです。
阿部川 仕事は、スキルさえあればどこでもできますからね。ITの仕事は、オンラインにつながらないとちょっと大変ですけど。
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