「値上げ? ならばベンダー変更だ」といった短絡的な判断は危険 ガートナー:80%超がソフトウェア/クラウド契約に何らかの不満を持つ
ガートナージャパンは、国内企業のソフトウェア/クラウド契約に関する調査結果を発表した。ソフトウェアやクラウドプラットフォームの契約について80%以上が何らかの不満を抱えていることが分かった。
ガートナージャパンは2023年6月28日、国内企業のソフトウェア/クラウド契約に関する調査結果を発表した。それによると、ソフトウェアやクラウドプラットフォームの契約について「特に不満がない」との回答は20%程度で、ほとんどの企業が何らかの不満を抱えていることが分かった。
「根拠の詳細な説明を求める」ことは、値上げの対抗策として有効
ガートナージャパンによると、最近国内企業からのソフトウェアやクラウドの契約交渉に関する問い合わせが増えているという。問い合わせの多くは契約に関する不満で、最も多いのは値上がり(ライセンス/サブスクリプション料金、サポート料金などの値上げ)で、約30%だった。
ガートナージャパンの海老名 剛氏(バイスプレジデント、アナリスト)は、「外資系ベンダーは、エネルギーコストや人件費といった物価上昇に加え、為替変動の影響を理由に値上げをしている。そのため、企業側で交渉力のある専任担当者が時間を割かない限り、価格上昇を抑制することは難しい」と述べている。
値上げへの対抗策については「他ベンダーへの移行/移行検討」との回答が最も多く、約40%。次いで「納得のいく説明をベンダーへ求める」「価格上昇幅の上限をあらかじめ交渉」が上位に並んだ。この結果からガートナージャパンは「企業側に『ベンダーに合理的な説明を求める以外の対抗策』が乏しく、十分な説明が得られない場合にはベンダーを変更するという思い切った手段も辞さない顧客企業の姿勢が垣間見えた」と分析している。
海老名氏は、「企業はどの要因がどの程度の値上げにつながったのか細かな説明を受けるべきだ。こうした追及を諦めないことで、実際に値上げ幅が抑えられた例もある。受け入れざるを得ない値上げは受け入れる一方で、正当性のない値上げは拒否する姿勢が大切だ。誠意ある説明を行わない場合には、ベンダー変更もいとわないという、毅然(きぜん)とした態度を示すことも時には必要だ」と述べている。
ただし、ベンダー変更はあくまでも最後の手段だ。運用/保守プロセスの最適化に時間がかかるアプリケーションソフトウェアや、営業秘密を含む重要データを大量に管理するプラットフォームを移行するには、移行プロジェクトとプロジェクト後の定着化に相当の時間を要する。その結果、「DX(デジタルトランスフォーメーション)で求められる迅速性が損なわれるリスクがある」とガートナージャパンは指摘している。
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