Rocky LinuxがRed Hatを批判 「GPLで保証された権利の行使を妨害」:RHELソースコードの代替的な入手方法も紹介
Red Hatによる「RHEL」のリリース方針変更を受け、「Rocky Linux」プロジェクトの主催団体が見解と対応方針を声明として発表した。
「Rocky Linux」プロジェクトを主催するRESF(Rocky Enterprise Software Foundation)は2023年6月29日(米国時間、以下同)、「Keeping Open Source Open」(オープンソースをオープンに保つ)と題した声明を発表した。
Rocky Linuxは、Red Hatの企業向けLinuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)のクローンOS。「バグまで含めた100%の互換性を持つように設計されたオープンソースのエンタープライズOS」とうたっている。
声明は、Red Hatが6月21日に「CentOS Streamが今後、RHEL関連のソースコードを公開する唯一のリポジトリになる」と発表し、さらに6月26日に、「この発表に対して、不当な怒りや批判が寄せられている」として反論を展開したことを受けて発表された。
CentOS Streamは、RHELにおける将来のメジャーリリースのベースとなる「Fedora Project」と、RHELの中間に位置付けられているディストリビューション。ISV(独立系ソフトウェアベンダー)やIHV(独立系ハードウェアベンダー)などのエコシステム開発者向けのコミュニティープロジェクトとされている。
RESFは声明で、Red Hatの一連の動きに対する見解を表明し、RHELのソースコードをGPL(General Public License)のもと入手する方法を説明している。
Red Hatの動きに対するRESFの見解
RESFは声明で、次のように述べている。「Red Hatは最近、『RHELのリビルドには価値を見いださない』との見方を示した。われわれは、この見方は視野が狭いと考えるが、Red Hatは強硬姿勢を取り、RHELのソースへのアクセスを有料顧客だけに制限した。これらのソースは主に、Red Hatが所有していないアップストリームのオープンソースプロジェクトパッケージで構成されている」
さらにRESFは、Red Hatのサービス利用規約(TOS)とエンドユーザーライセンス契約(EULA)を次のように述べている。「Red HatのTOSとEULAは、正規の顧客がGPLで保証された権利を行使することを妨げようとする条件を課している。コミュニティーでは、これがGPLに違反するかどうかが議論されているが、われわれは、こうした契約はオープンソースの精神と目的に反すると固く信じている」
RHELソースコードの代替的な入手方法
Rocky Linuxプロジェクトは、以前はRocky Linuxのソースコードを、Red Hatが推奨するCentOS(RHELのダウンストリーム版として製品化されてきたクローンOS。現在は開発が中止されている)のGitリポジトリからのみ入手していた。だが、このリポジトリはもはや、RHELに対応する全てのバージョンをホストしていない。
そこでRocky Linuxプロジェクトは、CentOS Stream、初期段階のアップストリームパッケージ、RHEL SRPM(ソースコードのRPMファイル)など、複数のソースからコードを収集する必要がある。
Rocky Linuxプロジェクトは上記の見解から、Red HatのTOSとEULAに同意することを拒否しており、「われわれは、われわれの原則に従い、われわれの権利を支持するチャンネルを通じて、SRPMを入手しなければならない」との方針を示している。
RESFは、この方針に沿う代替的なソースコードの入手方法として以下の2例を挙げている。
- RHELをベースとしており、複数のオンラインソース(Docker Hubを含む)から入手可能なUBI(Universal Base Image)コンテナイメージを使用する:UBIイメージを使用すれば、Red Hatソースを確実かつ不自由なく入手できる。OCI(Open Container Initiative)コンテナで検証した結果、期待通りに動作した
- 従量課金のパブリッククラウドインスタンスを使用する:誰でもクラウドでRHELイメージをスピンアップでき、全てのパッケージとエラッタのソースコードを入手できる。これはCIパイプラインを通じて、簡単にスケーリングできる方法だ
RESFは、これらの方法が可能なのは、GPLのおかげだとして、次のように述べている。
「GPLソフトウェアの再配布は、誰も妨げられない。これらの方法はどちらも、OSS(オープンソースソフトウェア)へのコミットメントを損なうことなく、またTOSやEULAの制限に同意することなく、RHELのバイナリとSRPMを合法的に入手することを可能にする。われわれの法律顧問は、『われわれには、入手したバイナリのソースを取得する権利がある』ことを再確認し、『われわれは当初の意図に沿って、Rocky Linuxを前進させ続けることができる』ことを保証してくれた」
RESFは、RHELソースコードの入手方法を継続的に模索しており、「前述のアプローチは変更される可能性もあるが、オープンソースとエンタープライズLinuxコミュニティーへのわれわれの献身とコミットメントは揺るぎない」と述べている。
Rocky Linuxプロジェクトは、Red Hatが2020年12月、「CentOSの開発を中止し、CentOS Streamの新しいアップストリーム開発方式を採用する」と発表したことを受け、CentOSの共同創設者グレゴリー・クルツァー氏が、CentOSの本来の目的を達成するために立ち上げた。
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