2024年には企業のAI導入が鈍化する? IDCが生成AIや自動化に関する未来予測を発表:「成果、ガバナンス、リスク管理に重点が置かれるようになる」
IDCは、2024年以降の世界におけるAI、生成AI、自動化に関する予測を発表した。それによると2027年には、全世界でAIソリューションの支出が5000億ドル以上になるという。
IDCは2023年11月8日(米国時間)、2024年以降の世界におけるAI(人工知能)、生成AI、自動化に関する予測を発表した。
IDCによると近年、AIへの投資が加速しているという。「企業は何年も前から予測AIや解釈AIなどに多額の投資をしてきたが、2022年後半にOpenAIが『GPT-3.5』シリーズを発表したことをきっかけに、生成AIへの投資が急増した」とIDCは分析している。
こうした背景からIDCは、「2027年にはAIソリューションへの支出が全世界で5000億ドルを超え、ほとんどの組織では、AIの実装とAIで強化された製品やサービスの採用に向けた技術投資の比重が変化する」と予想している。
IDCのリトゥ・ジョティ氏(AI、自動化市場調査 アドバイザリーサービス担当グループ バイスプレジデント)は「AIと自動化への投資が拡大するにつれて、成果、ガバナンス、リスク管理に重点を置くことが最も重要になるだろう」と分析している。
AI、生成AI、自動化に関する10個の未来予測
今回発表されたAIと自動化に関する予測は、今後12カ月から24カ月の間にグローバルなビジネスエコシステムを変化させる「外部要因」と、“デジタルファースト”の世界で成功するために必要な技術を定義、構築、管理する際に「技術チームとITチームが直面する問題」に焦点を当てているという。
IDCの「AI、生成AI、自動化に関する10個の未来予測」は以下の通り。
1.生成AIのリスクが低減される
生成AIがもたらす効率性と破滅に至るリスクはコインの裏表のようなものだ。クラウドやソフトウェアプラットフォームのプロバイダーは、生成AIの安全性とガバナンスのパッケージを自社の主要なサービスにバンドルし、付加価値を高め、差別化を図るようになるだろう。
2.多様な規制要件で企業のAI導入が鈍化する
AIの導入と開発を規制する取り組みは、地域や国によって異なる。多様な規制要件によって、企業はAIの導入に段階的なアプローチを取らざるを得なくなり、価値実現までの時間も長くなる可能性が高い。
3.「会話」が標準のユーザーインタフェースになる
会話型インタフェースは既に、企業向けと消費者向けの両方のアプリケーションやソリューションのユーザーインタフェース(UI)として台頭しつつある。AIを使った会話型インタフェースは、顧客エンゲージメント、セールス、マーケティング、ITヘルプデスクにまで大きな影響を与えるだろう。
4.自動化は「実現方法」ではなく「成果」に注目されるようになる
自動化への理解が進むにつれて、プロジェクトのスポンサーは(自動化の)技術に注目するのではなく、「成果重視」の考え方にシフトする。ビジネスや財務の成果に沿ったKPIによって測定される価値、つまり「自動化への投資によってもたらされる価値は具体的にどれくらいか」を求めるようになる。
5.生成AIのツールによってコードの品質が向上する
生成AIを使ってテストを自動化することでソフトウェアテストの状況が急速に変化するだろう。ベンダーは手作業も削減できる上、大量のテストを実行可能になる。テストカバレッジを向上させることでコード品質も向上させられるはずだ。
6.生成AIは「モダナイゼーションサービス」を変革する
アプリケーションのモダナイゼーションにおけるAI活用が進むことで、モダナイゼーションサービスを合理的に効率化でき、提供速度も上げられる。結果としてモダナイゼーションサービスの利益率を向上させられるだろう。
7.生成AIが知識発見をサポートする
セルフサービスの知識発見をサポートするようになる。そのため、自然言語質問応答や会話型検索などの機能に対する需要が急増するだろう。
8.生成AIの収益化が進む
技術は“優位性の源泉”だが、企業が生成AIを収益化し、持続的な競争上の優位性を高めるにはビジネスモデルを構築する必要がある。「The Global 2000」(フォーブス誌が発表している世界の大企業ランキングの上位2000社)の33%が2024年までに革新的なビジネスモデルを活用し、生成AIの収益化の可能性を倍増させるだろう。
9.「AGIシステム」の実現が目前に迫る
複数のグループが汎用(はんよう)人工知能「AGI」の実現に取り組んでいる。2028年までに企業はAGIを使ったシステムの実験をするだろう。AGIは変革を起こし、労働市場から知性や創造性などの概念の理解方法に至るまで、あらゆるものに影響を与える。
10.チップの優先順位が変わる
サーバプロセッサからアクセラレータへのタスクのオフロードを必要とするAIワークロードが、サーバプロセッサに調整されたアルゴリズムとソフトウェアスタックで標準化されるまで、アクセラレータ(GPU、FPGA、AI ASIC、ASSP)の購入がサーバプロセッサの購入を圧迫することになる。
なお、これらの予測については同社のレポート「IDC FutureScape:Worldwide Artificial Intelligence and Automation 2024 Predictions」「IDC FutureScape:Worldwide Generative Artificial Intelligence 2024 Predictions」でより詳細に説明されている。
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