父のようなエンジニアなりたい そして少女は海を渡った:Go AbekawaのGo Global!〜アリシアさん from マレーシア(前)(2/2 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回はNTTデータ ニューソンでセキュリティ業務に携わるAlicia Lee(アリシア・リ)さんにお話を伺う。高校卒業と同時に来日を決めたアリシアさん。その背中を押したのは母の「やってみたら」という優しい助言だった。
日本企業で働いていた母が背中を押してくれた
阿部川 学校の勉強では、どの教科が好きでしたか。
アリシアさん 物理や化学、歴史などが好きでした。数学は、普通でしたね。
阿部川 英語は学校で習ったのですか。
アリシアさん いいえ。物心ついたころから、英語は話せました。父は華僑ですが、家では中国語は全く話さず、会話は全て英語だったので。中国語を話すようになったのは小学校くらいからです。英語と、広東語を話す世代の第4世代です。ちなみにマレー語も話せますよ。
阿部川 なぜ日本に行こうと思われたのですか。
アリシアさん 1つは、日本語に魅了されたから。もう1つは、父が歩んだエンジニアとしての道を歩みたかったからです。マレーシア人は英語を話せますから、英国やオーストラリアなど、海外でキャリアを積んだり生活したりすることに対して、比較的抵抗がありません。
また、実は母から強い勧めがあったんです。母は日本企業で仕事をしており、日本とのつながりからたくさんの仕事の機会を得ることができました。「日本に行けば仕事もできるし、言葉も学べる。良い国だしやってみたら」と母が言ってくれました。
阿部川 海外で何かをしたいと思う人には、2種類の考え方があると思います。「外国で何か新しいことをやろう」という人と「英語が話せることを利用して、海外で活躍しよう」と考える人です。アリシアさんは前者ですね。それは本当に勇気のいることで素晴らしい。
阿部川 よくぞ日本を選んでくれました。ありがとうございます。2011年の10月に来日し、文京区にあるABK学館日本語学校に入学されました。このときが初めての来日だったのですよね。これ以前には日本語を勉強した経験はなかった?
アリシアさん はい。全く知りませんでした。最初の1年で日本語を学び、その後の半年間は大学入試のための勉強をしました。日本語以外では数学や物理学、化学も学びました。
マレーシアの物価は日本の約3分の1なので、ご両親は結構な出費をして送りだしてくれたのでしょうね。ステキなご両親です。
エンジニアになるために、東海大学に入学
阿部川 日本に来る前に、コンピュータに触れる機会はありましたか。
アリシアさん 私の最初のコンピュータ体験は、6歳くらいのときですね。父が自分の仕事のために自宅にPCを買ったので、それでよく遊んでいました。OSはたぶん「Windows 95」でした。その後、小学校の4年生から、タイピングなどPCの基礎的なスキルを教えるクラスが始まりました。先生の機嫌が良いとき(笑)は『マリオブラザース』などのゲームもやらせてくれました。
阿部川 現在使っているPCもWindowsですか。
アリシアさん はい、そうです。個人的にはMac(macOS)も使っています。
阿部川 その後、東海大学に入学します。東海大学を選んだ理由を教えていただけますか。
アリシアさん 東海大学はマレーシアでも「優秀なエンジニアリングの大学」として有名だったからです。専攻は工学部の電気電子工学科です。専門の他にプログラミングなどを学ぶことができ、それは現在の私の仕事でも使っています。
さらさらっとおっしゃっていますが、全く日本語が分からない状態から1年半の勉強だけで入試を突破して大学の授業も理解するってとんでもないですね。
阿部川 どのような教科がありましたか。
アリシアさん 選択科目のプログラミングは「Java」や「C」などですね。コンピュータに関する総括的な教科も学びました。
父が歩んだエンジニアの道に進むため、全く日本語が分からない状態で来日し、程なくして大学入学まで実現したアリシアさん。その熱意と才能はもちろん、両親や学校の先生などの助言をしっかり受け止められる姿勢もアリシアさんの素晴らしさなのだろう。後編はNTTデータ ニューソンでの仕事と将来の展望について。
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