「2025年の崖」まであと少し 最も成果が出たDXの取り組みは何?:JIPDEC、ITRが「企業IT利活用動向調査2024」の調査結果を発表
JIPDECとITRは「企業IT利活用動向調査2024」の結果を発表した。34.5%が「会社が生成AIの導入を進めている」と回答しており、JIPDECとITRは「今後、企業型生成AIを導入して業務で活用する企業が急速に増える」と予測している。
日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)とアイ・ティ・アール(ITR)は2024年3月15日、「企業IT利活用動向調査2024」の結果を発表した。この調査は、従業員数50人以上の国内企業に勤務しているIT戦略策定または情報セキュリティ施策に関わる係長職相当以上の役職者を対象に実施し、983人から有効回答を得た。
ランサムウェア感染経験は4割超え
業務での生成AI(人工知能)の使用状況について見ると、「会社で構築、契約した生成AI(以下、企業型生成AI)を使用している」と回答した企業の割合は15.9%、「各自で契約、登録した生成AI(以下、個人型生成AI)を使用している」が19.1%で、合計35.0%の企業で生成AIが使われていることが分かった。また、「会社が生成AIの導入を進めている」と回答した企業は34.5%で、JIPDECとITRは「今後、企業型生成AIを導入して業務で活用する企業が急速に増える」と予測している。
ただし、生成AIに関する利用規定やガイドラインを策定している企業の割合は少ない。企業型生成AIを使っている企業は68.6%がガイドラインなどを整備していたが、個人型生成AIを使用している企業ではわずか9.0%にすぎなかった。生成AIの業務利用についての懸念点としては「社内の機密情報(個人情報含む)が生成AIの学習データとして情報漏えいする」や「生成AIが出力した偽情報を従業員が信じて業務で使用する」などが上位に挙がった。
調査では、DX(デジタルトランスフォーメーション)を実践している企業の具体的な取り組みとその成果についても聞いている。なお、JIPDECとITRは、社内の業務や働き方に関するDXを「内向きのDX」、顧客向けの新たな製品やサービス、マーケティングに関するDXを「外向きのDX」と定義している。
調査結果によると、内向きのDXで最も取り組みが進んでいるのは「業務のデジタル化、自動化」で、成果が出ている企業も50.8%と多かった。次点は「ワークスタイルの変革」で、36.9%の企業で成果が出ていた。これに対して外向きのDXで成果が出ているのは、「データに基づいた営業、マーケティングの高度化」や「顧客体験や顧客接点のデジタル化」。ただし、取り組んでいる企業は多いものの、成果が出ている企業の割合はそれぞれ28.9%と28.5%で、内向きのDXに比べて成果が出ている企業は少なかった。
ランサムウェア被害については、半数近くの企業がランサムウェアの感染経験があり、その4分の1以上が身代金を支払っていた。ランサムウェアに感染した経験があると回答した企業の割合は47.1%。そのうち、「感染被害に遭い、身代金を支払ってシステムやデータを復旧させた」と回答した企業が9.0%、「感染被害に遭い、身代金を支払ったがシステムやデータは復旧できなかった」が17.9%だった。
こうした中、サイバー攻撃対策について「極めて優先度が高く、積極的に投資している」と回答した企業の割合は37.5%、「優先度が高く、継続的に投資している」は36.7%だった。JIPDECとITRは、今後もサイバー攻撃対策への投資は一層拡大するとみている。
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