28万台のHDD調査で分かったモデル別故障率 メーカー別推移が明らかに:故障までの稼働期間、生涯故障率も報告
Backblazeは、2024年第1四半期の自社データセンターにおけるデータドライブの統計レポートを発表した。
クラウドストレージやクラウドバックアップサービスを提供するBackblazeは2024年5月2日(米国時間)、2024年第1四半期の自社データセンターにおけるデータドライブの統計レポートを発表した。
2024年第1四半期末時点で、Backblazeは世界中のデータセンターで28万3851台のドライブを管理していた。そのうち4279台が起動ドライブ(SSDとHDD)、27万9572台がデータドライブ(全てHDD)だ。同レポートではデータドライブに焦点を当てて、「2024年第1四半期の故障率」「2013年4月〜2024年3月に故障したドライブの平均稼働期間」「2021年第2四半期〜2024年第1四半期のメーカー別の故障率の推移」「生涯故障率」を報告している。
2024年第1四半期の故障率
Backblazeは、2024年第1四半期末時点で顧客データの保存に使用していた27万9572台のHDDから、916台を除いた27万8656台のHDDを分析し、これらを構成する29種類のモデル別に年間平均故障率(AFR:Annualized Failure Rate)を算出した。
除外された916台のドライブの内訳は以下の通り。
- 275台:2024年第1四半期に使用中に仕様を超える高温にさらされたドライブ
- 641台:2024年第1四半期にテスト目的で使用していたドライブ、ドライブの使用台数が100台に満たなかったモデル、ドライブの総稼働日数(個々のドライブの稼働日数の合計)が1万日に満たなかったモデル
Avg. Age(months):平均使用期間(月数)、Drive Days:総稼働日数、Drive Failures:故障件数
2024年第1四半期の故障率統計に関する注目点
AFRの低下
2024年第1四半期のAFRは1.41%となり、前四半期(2023年第4四半期)の1.53%から低下した。前年同期(2023年第1四半期)の1.54%からも低下した。4TBドライブの2024年第1四半期のAFR(1.36%)は、最高だった2023年第2四半期(2.33%)から低下しており、古い4TBドライブから大容量ドライブへの交換が進んだことが、HDD全体のAFR低下の主な要因となっている。
3モデルが故障ゼロ
上の表のように、2024年第1四半期には、以下の3つのドライブモデルで故障がなかった。
- Seagate Technology(以下、Seagate)の16TBモデル(ST16000NM002J)
- Seagateの8TBモデル(ST8000NM000A)
- Seagateの6TBモデル(ST6000DX000)
3モデルとも生涯AFRは1%未満だが、Backblazeは16TBモデルと8TBモデルについては、生涯信頼区間(95%)がそれぞれ1.4%、1.9%で高いと指摘し、この数字が1%未満、できれば0.5%未満となってから、生涯AFRを再評価したいとしている。
一方、6TBモデルは信頼区間0.3%、生涯AFRが0.86%で、前四半期に続いて故障ゼロとなった。平均使用期間はほぼ9年に達している。
故障したドライブの平均稼働期間
Backblazeは、Secure Data Recoveryが故障したドライブ2007台を調査した結果、故障するまでの平均稼働期間が1051日(約2年10カ月)だったことを受けて、自社データセンターで使用してきたデータドライブを対象に、故障までの平均稼働期間を調査した。
Backblazeは、その結果を下の表のようにまとめている。1番上の行は、Secure Data Recoveryによる調査結果を示している。
Q1 2023:2013年4月〜2023年3月、Q1 2024:2013年4月〜2024年3月、All Drive Models:故障した全ドライブ、Retired Drive Models:故障したドライブのうち、Backblazeデータセンターで現在は使われなくなったモデルのドライブ、Active Drive Models:故障したドライブのうち、Backblazeデータセンターで現在使用中のモデルのドライブ
上の表のように、2013年4月〜2024年3月に故障したドライブ(2万1388台)の平均稼働期間は2年10カ月で、Secure Data Recoveryの調査結果と一致した。
だが、Backblazeは、故障したドライブの平均稼働期間を以下のように幾つかのカテゴリー別に集計し、その結果を基に、故障までの平均稼働期間が今後、2年10カ月より伸びるとの見通しを示している。
- 現在は使われなくなったモデル/現在使用中のモデル(それぞれ上の表に示されている)
- ドライブサイズ別
- モデル別
現在は使われなくなったモデルと現在使用中のモデルをサイズ別に見ると、Backblazeがこれまでに使用してきたドライブのうち、1TB、1.5TB、2TB、3TB、5TBのモデルは全て、既に使われなくなっている。
4TB、6TB、8TBの各モデルは、使われなくなったモデルと、まだ使われているモデルがある。また10TB、12TB、14TB、16TB、18TB、22TBのモデルは全て、現在使用中だ。
Backblazeによると、故障までの平均稼働期間を上のカテゴリー別に見ると、以下のような傾向があり、同社はこれらの傾向から、故障までの平均稼働期間が2年10カ月より伸びるとみている。
- 4TB以上のモデル(既に使われなくなった5TBモデル以外)では、2013年4月〜2023年3月に故障したドライブよりも、2013年4月〜2024年3月に故障したドライブの方が、平均稼働期間が長い
- 現在使用中の各モデル別に見ても、2013年4月〜2023年3月に故障したドライブよりも、2013年4月〜2024年3月に故障したドライブの方が、平均稼働期間が長い
さらにBackblazeは、使われなくなったモデルの故障までの平均期間は、4TBモデルが今後、使われなくなれば、4年近くに達すると予測している。
メーカー別の故障率の推移
Backblazeは、2021年第2四半期〜2024年第1四半期のメーカー別の故障率の推移を下のグラフで示している。
全メーカーのドライブのAFRが2023年第3四半期をピークに低下している。これは主に、古くなった4TBドライブを大容量ドライブへ交換しているからだ。この交換は今後1年間継続されるので、四半期のAFRは低下を続ける見通しだ。
生涯故障率
Backblazeは、2024年第1四半期末に顧客データの保存に使用していたHDDのうち、以下の基準を満たす26モデルの27万7910台について、2013年4月から2024年第1四半期末までの生涯AFRを次のようにまとめた。
- ドライブの使用台数:500台以上
- ドライブの総稼働日数(個々のドライブの稼働日数の合計):10万日以上
Backblazeは最近、ドライブの交換や移行、新機導入に当たって主に大容量モデルに注目していることから、上の表から12TB、14TB、16TBのモデルを取り上げて次のようにまとめた。低いAFRと小さい信頼区間の組み合わせが、自社の環境でうまく機能するモデルの特定に役立つとしている。
Backblazeは以下のように指摘している。
12TBモデル
HGSTの12TBモデル3機種は素晴らしいパフォーマンスだが、新品を見つけるのが難しい。また、しばらく前にHGSTのドライブ事業を買収したWestern Digital(WDC)は、これらのドライブに独自のモデル番号を使用し始めており、混乱させられることがある。
14TBモデル
上の3つのモデル、つまりWDCモデル(WUH721414ALE6L4)、東芝モデル(MG07ACA14TA)、Seagateモデル(ST14000NM001G)が堅実そうだ。他の2モデルは生涯AFRが平凡で、信頼区間も望ましくない。
16TBモデル
6モデルとも現時点で良好なパフォーマンスだが、WDCの2モデルが特に優れている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- HDD約27万台を使用して分かった、サイズ別、メーカー別故障推移 Backblazeが発表
Backblazeは、2023年の自社データセンターにおけるデータドライブの統計レポートを発表した。 - 「容量いっぱいのHDDは、重量が変わるのか?」 Backblazeがよくある奇妙な質問に回答
Backblazeは2024年1月18日(米国時間)、データストレージに関してよくある4つの奇妙な質問に回答した。 - 猛暑でHDD故障が急増は本当? 26万台のドライブ調査でウワサを探る
Backblazeは、2023年第3四半期の自社データセンターにおけるデータドライブの統計レポートを発表した。