Google、WebベースIDE「Project IDX」のβ版を提供開始:ブラウザだけでフルスタックのアプリ開発を開始できる
Googleは、さまざまなプラットフォームにわたって迅速、簡単にアプリケーションを構築、展開できるWebベースの統合開発環境「Project IDX」のβ版を提供開始した。
Googleは2024年5月14日(米国時間)、Webベースの統合開発環境(IDE)「Project IDX」のβ版を提供開始した。
GoogleはProject IDX(以下、IDX)を2023年8月に立ち上げた。IDXは、「Google Cloud」上の事前設定済みの仮想マシン(VM)で動作する。開発環境をセットアップする手間をかけずに、フルスタックのマルチプラットフォームアプリケーション開発ができるAI(人工知能)支援型ワークスペースだ。
幅広いフレームワーク(Angular、Flutter、Next.js、React、Svelte、Vueなど)、言語、サービスをサポートし、さまざまなGoogleサービスと連携し、開発ワークフローを効率化できる。開発者は、さまざまなプラットフォームにわたって高品質なアプリケーションを迅速、簡単に構築し、リリースできる。既存のGitHubリポジトリとその依存関係をインポートして作業に取り掛かることも可能だ。
β版の提供開始により、誰でもGoogleアカウントでサインインしてIDXを利用できるようになった。新しい「Google Developer Program」に登録すると、IDXで最大5つのワークスペースを作成できる。「Google Developer Profile」に登録済みの開発者は、新プログラムに登録されている。プログラム登録者は、IDXを支える大規模言語モデル(LLM)「Gemini」を、ドキュメントの要約や、サンプルコードの説明、プロダクトに関する質問への回答に利用できるといったメリットを無料で享受できる。
IDX β版の主な新機能や機能強化点は以下の通り。
AIアシスタンスの改善
IDXはGeminiが統合されており、開発者にワークスペースで直接支援を提供する。これまで、AIによるコード補完、支援チャット、コンテキストに応じたコードアクション(コメントの追加、コードの説明など)をサポートしてきたが、β版ではさらに改良が加えられた。
コード補完機能がさまざまなプログラミング言語にわたって開発者の意図をよりよく理解するようになった。統合されたチャットアシスタンスも、プロジェクト内容をより深く理解し、より目的に合った回答を返すようになった。
AIを用いて素早くタスクを実行したり、機能にアクセスしたりするためのスラッシュコマンドも用意された。エラー修正のための「/fixError」「/helpWithError」や、コメントを追加するための「/addComments」、コード説明のための「/explain」などがある。
新しいインタラクティブチャット機能(プライベートプレビュー段階)により、面倒で時間のかかる作業をGeminiに依頼することも可能になった。これにより、プロジェクトのより重要な側面に集中できる。例えば、「./dataディレクトリ内の全てのファイルの名前を、xxx_name.jsonという形式に変更して」といった指示を出すこともできる。
Googleサービスとのシームレスな統合
IDXの新しいビルトイン統合パネルを使って、「Gemini APIでアプリケーションに生成AI機能を追加し、Firebase Hosting(GoogleのWebコンテンツホスティングサービス)でWebに展開し、Google Maps Platform APIでマップとジオロケーションを追加し、ワンクリックでフルスタックアプリケーションをCloud Run(コンテナを直接実行できるGoogleのマネージドコンピューティングプラットフォーム)を通じて、マルチリージョンに展開する」といったことが可能だ。
こうしたAPIとサービスの統合により、別のタブに切り替えて開発ワークフローから離れることなく、Googleの技術をシームレスに組み込める。
Web開発者向けの開発とデバッグの強化
人気のあるデバッグツールである「Chrome DevTools Console」と「Lighthouse」が実験的にサポートされ、プレビューペインからシームレスに利用できる。開発環境から離れることなく、アプリケーションのデバッグと微調整を進めることが可能だ。
新しいテンプレート
プロジェクトテンプレートの拡充が進められており、お気に入りのフロントエンド、バックエンド、フルスタックフレームワークや言語を使用したアプリケーションの開発を、ブラウザだけで簡単に始められる。
以下のような目的にかなう新しいテンプレートが追加されている。
- Google Maps PlatformとGeminiを組み合わせて使用
- Google Maps PlatformとReactを組み合わせて使用
- Firebase Data Connect(Googleのアプリケーション開発プラットフォームの新サービス。プライベートプレビュー段階)を使用
- Firebase Genkit(Googleの新しいフレームワーク)を使用
テンプレートにはIDXダッシュボードからアクセスできる。
「IDXで開く」ボタン
IDXを使えば、SDK(ソフトウェア開発キット)やツールチェーンなどをダウンロード、インストールすることなく、数秒で新しいフレームワークやプログラミング言語で開発を開始できる。Googleは開発者向けドキュメント、サンプル、コードラボ、インタラクティブなコーディングプレイグラウンドに、「Open in IDX」(IDXで開く)ボタンを追加し、開発者が何か新しいことを試したいときに、包括的な開発環境をすぐ立ち上げることができる。
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