AIコーディングツール導入のメリット、課題、企業の取り組み状況は? GitHub調査:米国、ブラジル、インド、ドイツのソフトウェアエンジニア、開発者など2000人を調査
GitHubは、米国、ブラジル、インド、ドイツの企業におけるソフトウェア開発者など2000人を対象に、ソフトウェア開発におけるAIコーディングツールの導入状況や導入のメリット、課題などを調査した結果を発表した。
GitHubは2024年8月20日(米国時間)、米国、ブラジル、インド、ドイツの企業におけるソフトウェア開発者など2000人を対象に、ソフトウェア開発におけるAI(人工知能)コーディングツールの導入状況や導入のメリット、課題などを調査した結果を発表した。
同調査ではAIコーディングツールを、「生成AIとLLM(大規模言語モデル)を使用して、ソフトウェア開発サイクル全体を通じてエンジニアリング支援を提供する開発者向けツール」と定義している。
調査は、GitHubの委託によりWakefield Researchが2024年2月26日〜3月18日に、米国、ブラジル、インド、ドイツの企業に勤務する学生以外の従業員2000人(各国500人)を対象にオンラインで実施した。内訳はソフトウェアエンジニア、開発者、プログラマー、データサイエンティスト、ソフトウェアデザイナーだ。
GitHubは2023年に、米国在住の開発者の小規模なグループを対象に同様の調査を実施しており、ソフトウェア開発におけるAIの導入拡大に伴い、2024年は調査対象を拡大した。AIの影響についてより包括的で多様な見解を得るために、少数ではあるが、データサイエンティストやソフトウェアデザイナーも調査対象に加えた。
調査結果から、「ソフトウェア開発におけるAIの波の高まり」「企業におけるAIコーディングツールの導入課題」「AIコーディングツールのメリット」「テストケースの生成におけるAIコーディングツールの役割」「AI導入で浮いた時間の有効活用」「AI利用者の期待」「セキュリティにおけるAIの可能性」の概要を紹介する。
ソフトウェア開発におけるAIの波の高まり
ソフトウェア開発における生成AIの波は引き続き拡大している。回答者のほぼ全員(97%以上)が、「仕事と仕事以外の両方でAIコーディングツールを使ったことがある」と答えている。ただし、国によって17〜27%は、「仕事でのみAIコーディングツールを使ったことがある」と答えている。
ドイツの回答者の30%、インドの回答者の40%は「自社はAIコーディングツールの導入を積極的に奨励、推進している」と答えている。同じくドイツの29%、米国の49%は「自社はAIコーディングツールの使用を許可しているが、奨励の仕方は限定的」と答えている。自社がこれらのツールの使用を「積極的に奨励、推進している」または「許可している」と答えた割合は、国によって59%(ドイツ)から87%(米国)までばらついている。
企業におけるAIコーディングツールの導入課題
GitHubは、AIが引き続き進化するにつれて、開発者や企業がAIを大規模に活用する可能性は非常に高いとみている。だが、企業がAIコーディングツールを大規模に導入するには、ワークフローにおいてこれらのツールを使いやすくするポリシーを策定するとともに、プロセス変更、ガバナンス、コンプライアンスなどの要因も考慮する必要があると、GitHubは考えている。
AIコーディングツールを積極的に奨励、推進している企業で働く回答者のほぼ半数(48%)が、ツールチェーンの使用は「簡単」だと報告している。一方、AIの使用に中立的な姿勢を取っている企業の回答者は、ツールチェーンを「複雑」だと報告した割合がはるかに高い(65%)。
この回答傾向は、AIコーディングツールがソフトウェア開発チームのワークフローの効率化と、ツールチェーンの複雑さの軽減に役立つ可能性も示している。
AIコーディングツールのメリット
回答者は、ソフトウェア開発にAIコーディングツールを使用する主なメリットとして、コード品質の向上、開発効率の向上、ワークフローの効率化などを挙げている。また、今回の調査は、AIコーディングツールがスキルアップやオンボーディングの促進に役立つことも示唆している。これらのツールにより、既存コードベースの理解や、新しいプログラミング言語への移行が容易になると認識している回答者が多いためだ。
GitHubは、これらのことを示す以下の2つのグラフを紹介している。
テストケースの生成におけるAIコーディングツールの役割
GitHubは、AIコーディングツールのユースケースとして、テストケース生成の効率化に注目する企業が多いことから、テストケースの生成におけるこれらのツールの役割を取り上げて説明している。
回答者の98%以上が、「自社ではAIコーディングツールを使って、テストケースを生成する実験をしたことがある」と答えている。自社がテストケースの生成にAIツールを「時々」または「頻繁に」使っていると報告した回答者も大半を占める。この割合は米国が最も高く(92%)、ドイツが最も低い(75%)。
AI導入で浮いた時間の有効活用
回答者の多くは、AIコーディングツールの導入で浮いた時間を、システムの設計、コラボレーション、学習に充てていると答えている。
AI利用者の期待
回答者の61%(ドイツ)から73%(米国)は、AIコーディングツールによって、顧客要件に対する自身の対応力が、「少し向上する」または「大幅に向上する」との楽観的な見通しを示している。
注目すべきは、楽観的な見通しを持つ回答者の割合が、AIの使用に対する企業の取り組みと関連しているように見えることだ。「自社がAIの使用を積極的に奨励、推進している」と答えた回答者は、AIコーディングツールによって、顧客要件への対応力が向上するとの楽観的な見通しを持っている割合が高い。
回答者は、AIがコードのセキュリティと開発効率を高めることも期待している。回答者のほぼ全員が、AIコーディングツールがコードのセキュリティを改善すると考えている。
回答者のほぼ全員が、AIコーディングツールを使いこなすスキルを身に付ければ、求職時に、より魅力的な人材として評価されると期待している。GitHubは「AIの使い方を今知っておくことは、当面は開発者のキャリアアップにつながる可能性がある。AIコーディングツールに習熟することは、近いうちに、ソフトウェア開発における要件となるだろう」と予測している。
セキュリティにおけるAIの可能性
GitHubは、セキュリティ業界における専門家の人材不足の問題を解決するには、人材採用を進めるだけでは不十分だと認識している。最初からコードを安全に保つことを容易にする開発者向けツールの活用により、セキュリティのシフトレフトを実現する必要があるとし、同社は、AIがこの取り組みを強力にサポートすると考えている。
調査結果は、この取り組みの重要性を示している。国によって回答者の59%(インド)から67%(米国)が、セキュリティチームがコードベースの変更を手動でレビューしており、それがボトルネックだと答えている。
GitHubは、セキュリティのシフトレフトをサポートするAIコーディングツールが、この問題を解決する決め手になるとの見解を示している。
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