プログラミング言語Rust、「2024エディション」「非同期Rustの改善」「Linuxカーネル対応強化」など26のプロジェクト目標を発表:2025年2月のRust v1.85で2024エディションをリリース予定
Rustプロジェクトは2024年後半のプロジェクト目標を発表した。発表された26の目標のうち、特に野心的で影響力の大きい3つの目標を主要目標と指定している。
Rustプロジェクトは2024年8月12日(米国時間)、プログラミング言語Rustにおける2024年後半(2024H2)の26のプロジェクト目標を発表した。これは、開発ロードマップの策定を実験的に初めて行うもの。順調に進めば約半年ごとに実施する予定だという。
Rustプロジェクトは、26の目標のうち、特に野心的で影響力の大きい次の3つを主要目標と指定している。
- 「Rust 2024エディション」の準備を最終段階まで進めること
- 「非同期Rust」の体験を同期Rustに近づけること
- Linuxカーネルを安定版Rustでビルドできるようにするため、最大の障害を解消すること
Rustプロジェクトは、3つの主要目標の詳細や、その他の目標について次のように説明している。
3つの主要目標
Rust 2024エディション
Rust 2024エディションは、2015年、2018年、2021年のエディションに続く4回目のRustエディションとなる。2021エディションと同様、2024エディションは「大規模なマーケティングキャンペーン」ではなく、Rustを使いやすくすることを目的としたものだ。
2024エディションで予定されている変更は以下の通り。
- キャプチャー動作を調整して「-> impl Trait」と「async fn」をトレイトでサポートする
- 将来的に導入予定の非同期ジェネレーターのために「gen」というキーワードを予約する
- !型におけるフォールバックの動作を変更する
Rustプロジェクトは「2025年1月3日にβ版、2025年2月20日に安定版のリリースを予定している『Rust v1.85』で、2024エディションをリリースする計画だ」と述べている。
非同期(async)
2024年内に、非同期(async)Rustの重要な構成要素となる幾つかの機能を提供する予定だ。特に注目されるのは、非同期クロージャと「Send」という安全性を保証するための仕組みを強化することだ。従来の同期処理と同じレベルの品質で「非同期Rust」を記述できるようにすることを目指す。
非同期Rustは広く利用されており、2023年のRust調査では、回答者の52%がRustを使用してサーバサイドやバックエンドアプリケーションを構築していると回答している。
Linux向けRust
LinuxカーネルにおけるRustの実験的サポートは、Rustにとって重要な転機であり、Rustがあらゆる低レベルのシステムアプリケーションを対象にできることを世界に示した。だが、そのサポートは多くの不安定な機能に依存しており、実験的な段階を超えることができない状況だ。2024年後半には、このサポートを阻む最大の障害を解消するために取り組む予定だ。
その他の目標のハイライト
Rustプロジェクトは、3つの主要目標に加え、23の目標をロードマップで明らかにしている。目標の一部は以下の通り。
- cargo-scriptの安定化:依存関係を埋め込んだ単一ファイルのRustスクリプトを可能にする
- ナイトリービルドでのスケーラブルなPoloniusサポート:Rustの借用チェッカーを改善し、条件付きリターンや他パターンをサポートする
- 並列フロントエンドの安定化に向けた取り組み:Rustのコンパイル時間を最大20%短縮することを目指す
- 参照カウントの改善:参照カウントされたデータを操作する際の構文的な負担を軽減する
- 「マージされたdoctest」の実装:テスト時間を節約するために、doctestファイルを1つのテストに統合する
Rustプロジェクトは、これら3つのフラグシップ目標とその他の23の目標について定期的に進捗(しんちょく)を報告する予定だ。
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