「自動運転システムは人間の運転より衝突事故率が84%低い」 Alphabet傘下のWaymoが自動運転車がもたらす影響を調査:飲酒運転や居眠り運転、脇見運転のなさが低い事故率につながる?
Alphabet傘下の自動運転システム開発企業Waymoは、Waymo Driverの事故率と人間の事故率を比較した調査結果を公開した。Waymoの自動運転技術がもたらす交通安全への影響を多角的に検証している。
Alphabet傘下の自動運転システム開発企業Waymoは2024年9月5日(米国時間)、Waymoが提供する自動運転システム「Waymo Driver」の事故データ、および人間との事故率の比較分析結果を公開した。Waymoは以下のように説明している。
自動運転システムがもたらす交通安全への影響
調査では、事業を展開している都市でのWaymo Driverの事故率と、人間の運転による事故率を比較した。
米国の都市(フェニックス、サンフランシスコ、ロサンゼルス、オースティン)で自動運転システム事業を拡大する中で、Waymo Driverが交通安全に与えるプラスの影響が明らかになってきた。新しくデータハブという形で調査結果を公開し、安全記録についてより深く理解できるよう、Waymo Driverの事故率と人間運転による事故率を比較した。
この分析は、当社が2023年に初めて導入し、安全記録のベンチマークに一貫して使用してきた方法論に基づいている。この方法論は業界の専門家による査読を受けており、衝突率分析を進歩させ、自動運転と人間の運転パフォーマンスの有効な比較を可能にする。業界、学術界、保険業界の協力者が共同開発したRAVE(Retrospective Automated Vehicle Evaluation)チェックリストなど、業界のベストプラクティスにも準拠している。
直近のデータによると、2024年6月末までに2200万マイル(約3500キロ)以上の走行(乗客のみ乗車)で、Waymo Driverは人間ドライバーと比較して、エアバッグ展開につながった衝突事故が84%少なく、負傷を伴う衝突事故が73%少なく、警察に報告された衝突事故が48%少なかった。エアバッグ展開指標を衝突率分析に導入したのは今回の調査が初めてとなる。
さらに、サンフランシスコとフェニックスのローカル指標のデータも提供している。両都市では、長期にわたって数百万マイルもの走行(乗客のみ乗車)の走行距離を記録した。これにより、現地の人間によるベンチマークとの統計的に有意な比較が可能になり、Waymo Driverがこれらの各都市で道路の安全性を向上させているかどうかが分かる。
調査結果の透明性と信頼妥当性を確保するため、部外者でも結果を簡単に再現できるようにしている。一般に公開されているデータ、特にNHTSA(米国国家道路交通安全局)の常設一般命令(Standing General Order:SGO)に基づいて提出された事故報告書を活用し、走行距離(VMT)データを開示することで、道路安全研究者が当社の分析を再現し、検証できるようにした。
当社はWebページを定期的に更新し、NHTSAのSGOに基づく報告書を順次掲載していく。
Waymo Driverによる事故率の低減方法
Waymo Driverの事故率の低さに貢献している要因は、幾つかある。Waymo Driverは、停止標識や速度制限などの道路交通ルールを守るようにプログラムされており、飲酒運転や居眠り運転、脇見運転は決してしないため、多くの一般的な衝突事故を未然に防いでいる。また、検知機能と衝突回避機能を備えており、潜在的な危険(赤信号を無視しようとする他の車など)に対してリアルタイムで迅速に対応するために、常に状況を監視している。
包括的な安全フレームワークは、Waymo Driverがどのように、そしてなぜ交通安全を向上させるのかの重要な要素であり、当社の事業展開に対し、データに基づいたガイダンスを提供している。
当社はセーフティデータを公開するデータハブを導入することで、Waymo Driverの運転が交通安全に与える影響について、車を利用する人、地域社会、政府関係者、研究者に洞察を提供することを目指している。
今回のデータツールで提供しているような安全に関する透明性は、自動運転技術をより多くの乗客に提供する上で、社会の信頼を築く鍵となる。米国運輸省もこの取り組みに協力しており、NHTSAが衝突報告に関する常設一般命令を成文化するために計画的に規則を制定する際に、走行距離データも収集するよう強く求めている。これにより、研究者はWaymo Driverや自動運転業界全体を分析できるようになる。
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