検索
ニュース

Confluent、「大規模なAIエージェント」の課題解決を支援する「Streaming Agents」を提供開始イベント駆動型AIエージェントとは何か

Confluentは同社のデータストリーミングプラットフォームの新機能「Streaming Agents」を発表した。提供開始した背景やその特徴とは。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 データストリーミング製品を提供するConfluentは2025年8月19日(米国時間)、同社のデータストリーミングプラットフォーム(DSP)の新機能「Streaming Agents」を発表した。Confluent Cloudユーザーはオープンプレビュー版として利用できる。Confluent Japanは2025年8月27日にメディア向け勉強会を開催し、あらためてConfluentを紹介し、Streaming Agentsを提供開始した背景やその特徴を説明した。

 Confluentは、データストリーミングのオープンソースソフトウェア(OSS)である「Apache Kafka」「Apache Flink」を基にしたDSPを提供している。ユーザーはエンタープライズ向けのディストリビューションとして「Confluent Platform」を、Amazon Web ServicesやGoogle Cloud、Microsoft Azureのマネージドサービスとして「Confluent Cloud」を利用できる。

 DSPは、データ処理にリアルタイム性が求められるケースで使われているが、近年は信頼性が求められるエンタープライズの生成AI活用で、精度を高める上で欠かせないRAG(Retrieval-Augmented Generation)のデータ基盤として活用されることが増えている。


2025年データストリーミングレポート」を基にした調査結果のまとめ(提供:Confluent Japan)

 企業の関心は生成AIに加えてAIエージェントにも広がっている。だが、Confluent Japan シニアソリューションエンジニアの清水亮夫氏によると、「大規模なAIエージェントは、さまざまなものと連携することで依存関係が増え、より複雑なシステムになるという課題を抱えている」という。加えて、エージェント同士が密に連携し、多くのポイントツーポイント接続が生じることで、「密結合された依存関係」の問題も生じるとした。


大規模なAIエージェントのシステム構成例(提供:Confluent Japan)

 これが引き起こす、管理の複雑性、連鎖的な障害、拡張性の制約、状況把握の困難さ、コストの増大といった課題を解決するために、Confluentが提唱しているのがイベント駆動型マルチエージェントシステムへの転換だ。これは、従来の密結合されたシステムから、よりシンプルで疎結合なアーキテクチャへの移行を目指すもので、Streaming Agentsで実現するという。

イベント駆動型AIエージェントとStreaming Agentsの主な機能

 Streaming Agentsは、エージェントAIをストリーム処理のパイプラインに直接組み込み、KafkaやFlinkを使って「イベント駆動型AIエージェント」の構築、デプロイ、オーケストレーションを可能にする。データ処理とAI推論を統合することで、AIエージェントはリアルタイム性が高いコンテキストデータにアクセスし、ビジネス状況の変化に迅速に適応し、他のエージェントやシステムと通信できる。

 イベント駆動型AIエージェントとは、各AIエージェントが自身の処理の結果としてイベントを発行し、別のエージェントはそのイベントを利用して自律的にタスクを実行するというものだ。AIエージェントがイベントを通じて連携することで、個々のAIエージェント間の直接的な依存関係が排除され、システム全体が疎結合になる。

 DSPは、このイベント発行と利用において、イベントブローカーとして機能する。データソースは「データがどこに送られるか」を意識することなく、ブローカーにデータを送ることにのみ注力できる。同様に、アプリケーションは「データソースが何か」「どのような状態にあるか」を意識することなく、ブローカーに新しいイベントがないかどうかを問い合わせ、イベントがあればそれを利用する。

 「データストリーミングプラットフォームを介してエージェント間の連携を疎結合かつシンプルにすることで、従来の密結合による複雑性とそれに伴う課題を解消し、システムのスケーラビリティ、回復性、運用効率を大幅に向上させることを目指している」(清水氏)


Streaming Agentsの機能概要(提供:Confluent Japan)

 Streaming Agentsの主な機能は次の通り。

  • LLMモデルへの接続と推論・エンベディング生成

 FlinkからOpenAIや「Amazon Bedrock」「Amazon SageMaker」といった大規模言語モデル(LLM)に接続し、Kafkaで流れてきたエージェントからのデータに対して推論を行ったり、エンベディングを生成したりする。

  • ツール呼び出し

 MCP(Model Context Protocol)の「ツール呼び出し」により、ツールを選択して、アクションを実行できる。

  • 多様なデータソースとの直接接続

 ストリーミングデータに、リレーショナルデータベースやベクターデータベース、REST APIといったKafka以外のデータソースを追加することで、リアルタイム性が高く、包括的なデータを利用できる。AIの意思決定、ベクトル検索、RAGアプリケーションの精度が向上する。「Flink SQL」を使用することでコストと複雑さが軽減される。Confluent Cloudのセキュリティおよびネットワーク機能が活用できる。

  • セキュアで統合された接続

 Flinkを使用してモデルやベクトルデータベース、MCPに接続する際は、機密性の高い認証情報を保護する。複数のテーブルやモデル、関数間で接続を共有することで再利用性を高め、大規模な導入や展開における管理を中央集約化する。

  • データの再利用と復旧

 Kafkaのデータ永続性という特徴を生かし、ストリームを巻き戻して再実行できる。障害からの復旧や新しいロジックの安全なテスト、監査などを迅速かつ反復的に実行できる。

 「Stream Agentは、現代の複雑なAIエージェントシステムが直面するデータ連携、リアルタイム性、信頼性の課題を解決し、生成AIやAIエージェントが効果的に機能するための堅牢(けんろう)なデータ基盤を提供することを目指したConfluentの最新の取り組みだ」(清水氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る