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HDD30万台の調査で分かった「モデル別の故障率」 “古くなるほど壊れやすい”は誤解だった?Backblazeが分析したドライブ故障の実態

クラウドストレージサービスを提供するBackblazeが、2025年第3四半期におけるHDD故障率の統計を公開し、HDDモデルの導入状況や導入モデル別の故障率の傾向を解説した。

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 クラウドストレージサービスを提供するBackblazeは2025年11月11日(米国時間)、同年第3四半期(7〜9月)の自社データセンターにおけるHDDの故障率統計を公表した。

 2025年6月30日時点でBackblazeが管理するドライブは合計33万2915台で、このうちブートドライブ(起動用)が3970台、データ用ドライブが32万8348台だった。この四半期には、新たに東芝製の容量24TBモデル「Toshiba MG11ACA24TE」が同社のドライブ群に加わった。このモデルは、後述する故障ゼロだったHDDモデルの一つになっている。

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2025年第3四半期のドライブ構成とAFR概要(提供:Backblaze)

 全体の年間換算故障率(AFR)は1.55%と、第2四半期(4〜6月)の1.36%から上昇した。Backblazeは新規投入した容量24TBのHDDを含め、各種モデルの故障率と傾向を分析し、さらには使用年数と故障しやすさの関係などを解説している。

2025年第3四半期AFRは上昇、24TB投入とゼロ故障モデルも登場

 第3四半期の統計では、以下4モデルの四半期AFRが0%だった。

  • Seagate Technologyの4TBモデル「HMS5C4040BLE640」
  • Seagate Technologyの8TBモデル「ST8000NM000A」
  • 東芝の16TBモデル「MG09ACA16TE」
  • 新規投入された東芝の24TBモデル「MG11ACA24TE」

 Seagate TechnologyのST8000NM000Aはゼロ故障の常連で、直近では2024年第3四半期に1件の故障を記録したのみだという。

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2025年第3四半期における各HDDモデルの台数、平均使用月数、AFR一覧(提供:Backblaze)

生涯AFRは1.31%で安定、4TBは撤去進行、大容量は2割超に拡大

 Backblazeは、2025年第3四半期末時点におけるHDDの「生涯故障率」(生涯AFR)も集計している。この生涯AFRの対象は、2025年第2四半期末時点で500台以上が稼働しており、かつドライブの累積稼働日数が10万日を超えるモデルに限られる。この条件を満たしたHDDは27モデルだった。全体の累積AFRは1.31%で、前四半期の1.30%、前々四半期の1.31%と比較して、ほぼ横ばいで推移している。

旧世代4TB HDDの撤去

 容量別に見ると、旧世代の4TB HDDの撤去は計画通りに進行している。4TBモデルのうち、Seagate Technologyの「ALE」シリーズは残存台数が11台、「BLE」シリーズは187台と、ごく少数にまで減少した。ただし、これらのモデルは長期間の運用実績があるため、ドライブの総稼働日数の蓄積が非常に多く、残存台数の減少が平均使用月数に与える影響はほとんどないとBackblazeは説明している。

20TB超、大容量モデルの増加

 大容量モデルでは、20TBを超えるHDDの導入が着実に進んでいる。Backblazeによると、生涯AFRの条件を満たした20TB超モデルの稼働台数は、前四半期から7936台増加した。生涯AFRの対象にはまだ含まれていないが、今回新たに加わったToshiba MG11ACA24TEの2400台を合わせると、20TB超のHDDは合計で6万7939台となり、全ドライブに占める割合は約21%に達したという。

ドライブの使用月数とAFRの関係、外れ値の分析

 Backblazeはドライブの使用月数と四半期AFRの関係も可視化した。使用年数に応じて故障率が上がるのであればグラフの右上に集中するはずだが、多くのドライブが年数にかかわらず低い故障率に集中しており、「古いほど故障しやすい」とは言い切れないことが分かる。

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ドライブの使用月数とAFRの関係(提供:Backblaze)

 一方で、極端に高いAFRを示す“外れ値”も確認された。第3四半期のデータには、特に異常値と見なされるドライブがあったため、Backblazeは統計手法「Tukey法」(四分位範囲を用いた外れ値検出)を用いて分析を実施。その結果、AFRが5.88%を超えるモデルが外れ値となり、以下の3機種が該当した。

  • 10TBモデル「Seagate ST10000NM0086」:AFR 7.97%
  • 14TBモデル「Seagate ST14000NM0138」:AFR 6.86%
  • 16TB「Toshiba MG08ACA16TEY」:AFR 16.95%

 Seagate ST10000NM0086は平均使用期間が約92カ月(約7年超)と長く、稼働台数も1018台と比較的少ない。このため同社は、単発の故障が四半期AFRを大きく押し上げやすい状況にあると分析している。

 Seagate ST14000NM0138は平均約57カ月(約5年弱)に達しており、稼働台数も1286台と少なめな上、過去から比較的高い故障率が続いてきたモデルだという。

 AFR 16.95%という最も高い値を示したToshiba MG08ACA16TEYについて、Backblazeは四半期内の特定作業が影響して一時的に故障扱いとなる「見かけ上の故障」の典型例だとしている。同社と東芝が協力して実施したファームウェア更新の一部で、ドライブを一時的に取り外したことが統計上の故障数を押し上げたものと考えられる。物理的な故障ではなく、今後は故障率が平常水準に戻る見込みだ。

 Backblazeは、こうした使用年数と故障率の関係や、外れ値の特定が運用改善のための重要な手掛かりになるとしている。

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