コーディングは速くなった、だが「週7時間がムダ」に GitLabが指摘する「AIパラドックス」の正体:73%が「Vibe Coding」の問題を経験 3266人のDevSecOps実務者が回答
GitLabは2025年版DevSecOps調査レポートを公開した。AI導入によりコーディングが高速化し開発効率が向上する一方で、ツール乱立やコンプライアンスの複雑化により「週7時間の損失」が生じているという。同社はこの状況を「AIのパラドックス」と呼んでいる。
GitLabは2025年11月10日(米国時間)、2026年以降のAI(人工知能)活用における成否を分けるスキル、ツール、戦略を調査したレポート「The Intelligent Software Development Era: How AI will redefine DevSecOps in 2026 and beyond」を発表した。
GitLabから委託を受けたThe Harris Pollが、2025年7月〜2025年8月にかけて調査を実施し、企業のIT運用、ITセキュリティ、ソフトウェア開発に従事する世界のDevSecOps実務者3266人から回答を得た。
GitLabは「AI活用により、コーディング作業の高速化が進んでいる。だが、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)全体の品質やセキュリティ、スピードが追い付かず、イノベーションの実現に新たな摩擦を生じさせている」と述べている。
ツール乱立と分断で「AIパラドックス」 週7時間が非効率な作業に費やされる
調査によると、DevSecOps実務者の60%がソフトウェア開発に5つ以上のツールを使用しており、49%が5つ以上のAIツールを併用している。一方で、チームメンバー1人当たり週7時間を「AI関連の非効率性」によって損失しているという。
その主な要因は、部門間のコミュニケーション不足、知識共有の壁、そしてチームごとに異なるツールを使用していることによるコラボレーションの障壁だ。GitLabはこの状況を「AIパラドックス」と呼んでいる。AIの導入でコーディング作業は高速化しているものの、ツールチェーンの断片化や新たなコンプライアンスの複雑化がボトルネックとなり、組織全体の生産性向上が阻害されていると指摘する。
この解決策として、85%が「プラットフォームエンジニアリング」のアプローチが不可欠だと認識している。特に、エージェンティックAIの活用において単体のツールではなく統合されたプラットフォーム上での実装が成功の鍵になると見ている。
「Vibe Coding」の弊害 人間によるレビューは必要
AIの活用は普遍的なレベルに達しており、97%が、SDLCにおいてAIを使用している、または導入予定だと回答している。だが、AIへの全面的な信頼には至っていない。「人間のレビューなしに日々の業務タスクをAIに任せられる」とした回答者は37%にとどまった。
コードの仕組みやロジックを理解せずに、自然言語のプロンプトで感覚的にコードを作成し、生成されたコードをそのまま使用してしまう「Vibe Coding」については、73%が「Vibe Codingによって生成されたコードで問題が発生した経験がある」と回答している。
コード生成でAI活用が進む一方で、DevSecOps実務者の88%は「創造性や革新性といった、AIエージェントでは完全に置き換えられない人間の本質的な資質が存在する」と回答しており、AI時代においても人間の監視と専門知識が不可欠だと認識している。
AIが普及しても、ITエンジニアは増えると予測
AIの普及がITエンジニアの人数に与える影響については、減少よりも増加を見込む声が多かった。76%が「AIによってコーディングが容易になるほどITエンジニアの数は増加する」と予測している。
AIによってITエンジニアの役割が変化することについては、83%が「今後5年以内に自分の役割が大きく変わる」と考えており、87%が「AIを採用するエンジニアは、キャリアの将来性を確保できる」と予測している。またスキルアップを支援する組織の投資拡大を望む回答者も87%に達した。
「コンプライアンスのコード化」が進む
AI導入の拡大に伴い、コンプライアンス管理はより複雑になっている。70%が「AIによって組織のコンプライアンス管理が以前より困難になった」と回答しており、現状では、開発プロセス中よりもデプロイ後にコンプライアンス上の問題が見つかるタイミングが多かった(76%)。
今後の展望として、82%が「2027年までにコンプライアンス要件がコードに直接組み込まれ、自動的に適用されるようになる」と予測。キャリアアップに必要なスキルとして、43%が「コード生成へのAI利用」よりも「セキュリティ/コンプライアンスのためのAI実装」を最優先事項として挙げている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「Pythonを抜いた」 いま最も使用されている言語とは GitHubの年次調査「Octoverse 2025」
GitHubは、ソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」を使用する開発者の動向を調査した年次レポート「Octoverse 2025」を公開した。
国土交通省が「MCPサーバ」公開 APIの知識不要、対話形式でのデータ取得が可能に
国土交通省は、APIの知識不要で、自然言語による対話形式で「国土交通データプラットフォーム」からデータ検索が可能なMCPサーバを公開した。
「コーディング時間が減った」は5割、“工数が増えた”の実感も paizaが調査、生成AIの影響とは
paizaの調査によれば、ITエンジニアの半数以上が生成AIの活用によって週当たりのコーディング時間を短縮している。
