AIに“性格”を与えて視点を自由に設定 NRIがデータ分析支援システムを発表:自然言語での問い掛けでデータを深掘り
野村総合研究所は、利用者が設定した役割や性格に応じてAIがデータを分析する「多視点分析システム」を開発したと発表した。特定の視点に基づくデータ分析によって、企業の迅速な意思決定を支援するという。
野村総合研究所(以下、NRI)は2025年9月4日、AI(人工知能)に「役割」(ペルソナ)と「性格」を設定し、それに基づいたデータ分析ができる「多視点分析システム」を開発したと発表した。画一的な応答ではなく、利用者が求める特定の視点から適切な示唆やアドバイスをすることで、データ活用の高度化と迅速な意思決定を支援するとしている。
3つの機能でAIとの対話を支援
NRIによると、近年、企業におけるデータ活用が進む一方で、従来のAIによる分析は「誰の視点からの意見か」が不明確で、利用者が目的に応じた解釈をしにくいという課題があった。例えば同じ売り上げデータの分析でも、経営層は中長期的な示唆を求めるのに対し、現場担当者は短期的な対策を重視する。同社はこの課題に着目し、AIにペルソナと性格を持たせることで、「利用者が求める立場に即した洞察を得られる仕組みを実現した」と説明している。
同システムには3つの機能がある。
機能1:役割の選択機能
経営層やアナリスト、ステークホルダーなどを指定すると、AIがその立場になりきってデータを分析する。公開情報に加え、社内文書や議事録を補足情報として取り込むことも可能だ。
機能2:性格のチューニング機能
各役割が持つ性格について、ポジティブさとネガティブさの比率を利用者が自由に調整できる。これによって、「より慎重なアナリスト」「より楽観的な経営者」など、企業文化や利用者の思考スタイルに合わせたカスタマイズが可能だ。
機能3:自然言語による対話型の深掘り分析機能
AIの解説に対して、利用者が自然言語で質問すると、それに応じてAIがデータを分析した結果を出力する。また「関連するデータをグラフで示して」とAIに問い掛ければ、追加のグラフを生成させることも可能だ。NRIは「自然言語でのやりとりを可能にしたことで分析サイクルを高速化し、利用者の思考を途切れさせずにデータを深掘りできるようになる」としている。
2025年9月時点で同システムは特許出願中で、利用形態は分析ダッシュボード型の独立アプリケーションとしての利用に加え、既存の情報分析システムにモジュールとして追加導入もできる。
NRIは今回の取り組みについて「AIをはじめとする先端技術の研究開発と社会実装を通じて、データに基づいた業務プロセスの高度化と企業価値向上に貢献していく」と説明している。
このニュースのポイント
Q: NRIが発表した新システムはどのようなものか?
A: AIに「役割」(ペルソナ)と「性格」を設定できる「多視点分析システム」で、利用者が求める視点に即した示唆やアドバイスを行い、データ活用の高度化と迅速な意思決定を支援する。
Q: 従来のAI分析にあった課題は何か?
A: 誰の視点での意見かが不明確で、利用者が目的に応じた解釈をしにくい点が課題だった。
Q: このシステムの主な3つの機能は?
A:1つ目は、経営層やアナリストなどの立場になりきって分析する。2つ目はポジティブ/ネガティブ度合いを調整し、役割に応じた分析をする。3つ目は自然言語による質問や追加リクエストに応じて分析やグラフを出力する。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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