検索
ニュース

「GPUサーバが使える」データセンターを1年で立ち上げ――NTT東日本が“コンテナ型DC”に参入コンテナ1基で2MWを収容

AI活用が広がり、GPUサーバを収容可能なデータセンターが不足することを受け、NTT東日本子会社のNTT-MEがコンテナ型データセンター事業に参入する。短期間で構築でき、地方分散も可能な方式として提供する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 生成AIをはじめとしたAI技術の普及で、GPU(グラフィックス処理装置)サーバ対応のデータセンターの空きが全国的に不足する状況になっている。そうした中、NTT東日本の子会社であるエヌ・ティ・ティ エムイー(以下、NTT-ME)が2025年10月22日、コンテナ型データセンター事業に参入することを発表した。

 NTT-MEはまず、北海道石狩市の約5万平方メートルの土地にコンテナ14基を段階的に整備する計画。記者発表会で説明したMTT-MEの水津次朗氏は、新事業の背景として、急拡大しているAI需要に対してGPUサーバの供給が追い付いていない現状に触れた。

AI需要が伸び「GPUが使えるデータセンター」が不足

 AI用途で使われる高性能GPUサーバは、一般的な汎用(はんよう)サーバとは桁違いの電力を消費し、それに伴って発熱も大きくなる。富士キメラ総研の「2025 生成AI/LLMで飛躍するAI市場総調査」によれば、国内AI市場はCAGR(年平均成長率)19.5%で成長し、2028年に市場規模は約2.8兆円に達する見通しだが、GPUサーバを収容できるデータセンターが需要に対して十分に確保できない状況になっているという。

足元のAI需要に“1年前後”の構築で応える

 従来のビル型データセンターは、基本設計から詳細設計に至るまでに1年以上、実際に建設する工程にも30カ月ほどがかかり、完成するまでに6年程度を要することになる。一方、コンテナ型であれば1年から1年半ほどでデータセンターを構築でき、「GPUデータンセンターの空きが枯渇する現状の需要にタイムリーに応えられる」と水津氏は説明する。


コンテナ型データセンターとビル型データセンターのスケジュール比較(提供:NTT-ME)

 NTT-MEが提供するコンテナ各基は、受電容量2MW(メガワット)、ラック当たり電力量は30kVA(ボルトアンペア)以上となる。冷却としては高発熱部品の近くに冷却液を流すDLC(ダイレクト液冷)と、ラックの列の間に空調ユニットを配置するInRowを採用する。

項目 内容
受電容量 2MW
ITロード 約1.5MW
ラック数 最大40ラック
ラック当たり電力量 30kVA以上
UPS N+1構成
非常用発電機 N構成
ネットワーク マルチキャリア対応
冷却方式 InRow+DLC
床面積 約120平方メートル
主なスペック(コンテナ型データセンター1基当たり)

最大14基、まずは2027年度Q1に

 顧客へはコンテナ1基単位で提供し、要件定義・申し込み後に構築を開始する。1基目は最短で2027年4月の稼働開始を計画している。石狩で取得予定の約5万平方メートルの敷地では、早ければ2032年に最大14基のコンテナデータセンターが立ち並ぶ見通しだ。

 今後の構想としては、NTTが推進する次世代通信基盤であるIOWNの「APN」(All-Photonics Network)による接続も視野に入れる。大容量・低遅延なネットワークで都市部の他のエリアにあるデータセンターをつなぐことで、単一のデータセンターで運用するのと遜色ないオペレーションが可能になると同社は説明している。

データセンター立地としての石狩への期待

 国内のデータセンターは、ハイパースケーラーのクラウドやAI用として主に千葉県印西市など東京近郊や大阪のエリアに集中している。だがこれらの地域では電力逼迫(ひっぱく)が懸念され、また災害リスクを分散させる観点からも、今回の対象地域である北海道石狩や福岡が、データセンター分散の中核拠点として期待されている。


NTT-MEの水津次朗氏(通信キャリア&データセンタビジネス部データセンタ事業推進部門長)

 今後MTT-MEは、自治体や企業の空きスペースなどを活用し、全国の需要のあるエリアへ拡大することも視野に入れている。「ビル型であればどうしても広い土地が必要になるが、コンテナ型であれば限られた土地でも十分オペレーションができる」と水津氏は語る。

 投資規模について同社は、「コンテナ1基の建設に約20億円」との目安を示した。収益面では1基当たり年約10億円を見込んでいる。

 NTT-MEは、NTT東日本の主にネットワーク系の設備の業務を請け負ってきた子会社。コンテナ型データセンターの事業は、「JPDC AI Container」というブランドで展開する。この新事業の一環として、同社は2026年度から、コンテナ型データセンターを営む事業者をエンジニアリングや保守・運用面から支援するビジネスも手掛ける計画だという。


石狩で提供するコンテナ型データセンター(提供:NTT-ME)

 クラウドやAIの利用で需要が高まり、データセンターの建設が相次ぐ中だが、それでもAI用のGPUサーバを収容するデータセンターは不足している。そうした現状があるだけに、短納期で建設が可能なことに加え、データセンター一極集中からの回避にもなり得るコンテナ型データセンターには期待がかかる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る