VMware製仮想マシンを無料でHyper-V環境に移行できる変換ツール Microsoftが提供開始:「中小規模の企業で特に有用」な理由とは?
Microsoftは、「Windows Admin Center」で「VM Conversion」拡張機能のパブリックプレビュー版の提供を開始した。
Microsoftは2025年8月26日(米国時間)、「Windows Admin Center」で「VM Conversion」拡張機能のパブリックプレビュー版の提供を開始したと発表した。この拡張機能はその名の通り、仮想マシン(VM)の変換ツールで、VMware製品で作成したVMを「Windows Server」の「Hyper-V」環境に効率的に移行できる。無料で利用可能だ。
Microsoftが「中小規模の企業で特に有用」と説明する理由とは?
MicrosoftによるとVM Conversion拡張機能は、データコンプライアンスやガバナンス、その他の規制要件から、オンプレミスでシステムを動作させる必要があり、Windows ServerとHyper-Vを採用したい企業による利用を想定しているという。同社は「インフラ要件を最小限にとどめているため、中小規模の企業で特に有用だ。ダウンロードすれば、5分以内にVMを変換できる」と述べている。
主な特徴
MicrosoftはVM Conversion拡張機能の特徴として、以下を挙げている。
エージェント不要、アプライアンス不要のVM検出
仮想化環境への接続後、エージェントやアプライアンスなしで全てのVMを検出できる。
最小限のダウンタイム
移行元となるVM(ソースVM)を稼働させたまま初期のデータレプリケーション(複製)を実施し、VM上で稼働しているアプリケーションが中断しないようにする。
サーバのグループ化
最大10台のVMを同時に選択、移行でき、手作業を減らしてWindows ServerのHyper-V環境への移行を素早く実施する。
起動構成
BIOSベースのVMを「Generation 1」に、UEFIベースのVMを「Generation 2」に自動的にマッピングすることで、起動構成を保持して互換性を確保する。
OS非依存
「Linux」のVMも「Windows」のVMも同様の操作手順でWindows ServerのHyper-V環境に移行できる。
マルチディスクVM対応
本番環境で稼働するVMの多くは、管理のしやすさや冗長性確保のために複数の仮想HDDを使用する。VM Conversion拡張機能はそうした複数の仮想HDDを全てまとめて移行する。そのため移行後に、OS、データ、アプリケーションディスクを個別の設定し直す必要がない。
VM Conversion拡張機能の仕組み
スムーズで信頼性の高い移行を実現するため、VM Conversion拡張機能は包括的な事前チェックを実施する。ディスク種別、起動構成(BIOS/UEFI)、宛先ディスク、メモリ要件などの重要な属性を検証し、潜在的な問題を早期に特定する。こうすることで、管理者は事前に対処でき、「移行失敗のリスクや最終切り替え時のダウンタイムを最小化できる」とMicrosoftは説明している。
データの整合性チェックにも工夫がある。VM Conversion拡張機能は、変更ブロック追跡(CBT)を用いて効率的にデータを複製する。初期に実施するVMのデータ全体のコピー段階(初期コピー段階)では、VMを稼働させたままフルコピーを作成して、ダウンタイムを抑制し、データ整合性を確保する。最終切り替えの前に差分レプリケーションを実施して、初回コピー以降の変更を全て反映させることで、移行先のVMが元のVMと同じ最新の状態になることを保証する。
VM Conversion拡張機能の使用方法
VM Conversion拡張機能は、Windows Admin Centerのパブリックフィードで利用可能だ。Windows Admin CenterのExtensions設定から直接インストールできる。利用するには、Windows Admin Center v2 GA(一般提供)リリースを実行している必要がある。
なお、こうした変換ツールは一般的に、利用環境や設定の影響を受けやすい。そのため、事前にバックアップを取得したり検証したりすることが重要だ。
このニュースのポイント
Q: 「VM Conversion」拡張機能は何を目的としたツールですか?
A: VMware製品の仮想マシンを「Windows Server」の「Hyper-V」環境に効率的に移行するための仮想マシン変換ツール。
Q: 利用料金はかかりますか?
A: 無料で利用可能。
Q: Microsoftが「中小規模の企業で特に有用」と説明する理由は何ですか?
A: 最小限のインフラ要件で動作させることが可能なため。また、ツールをダウンロードすれば、5分以内にVMを変換できるという手軽さもポイント。Microsoftが想定しているのは「データコンプライアンスやガバナンス、その他の規制要件からオンプレミスでシステムを稼働させる必要がある企業での利用」。
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