MSがAIによるセキュリティ運用自動化を拡充、Microsoft 365 E5利用者には無料枠付与(制限あり):AIとデータの管理・保護機能も追加
Microsoftは、セキュリティAIエージェント「Microsoft Security Copilot」を「Microsoft 365 E5」ライセンスに同梱すると発表。併せて、企業内のAIエージェントを統制・管理する新プラットフォーム「Microsoft Agent 365」など多数のセキュリティ対策支援策も発表した。
Microsoftは2025年11月18日(米国時間)、年次イベント「Microsoft Ignite 2025」で、セキュリティ製品群のアップデートを多数発表した。本稿では、以下の4つにまとめて紹介する。
- セキュリティAIエージェントを拡充、「Microsoft 365 E5」利用者には無料枠付与
- AIエージェントを統合管理する「Microsoft Agent 365」
- AIとデータの運用管理におけるセキュリティ機能
- セキュリティ担当者を支援する機能、人間によるサービスも
セキュリティAIエージェントを拡充、「Microsoft 365 E5」利用者には無料枠付与
セキュリティ運用を支援するAIエージェント群「Microsoft Security Copilot」を機能追加した。「Microsoft Defender」(セキュリティ運用)、「Microsoft Entra」(ID とアクセス管理)、「Microsoft Intune」(エンドポイント管理)、「Microsoft Purview」(データセキュリティ)向けに12種類の新機能を追加し、インシデント対応のトリアージ(優先順位付け)や条件付きアクセス設定の最適化などを自動化する。
MicrosoftはSecurity Copilotのライセンス体系も変更した。これまで単体契約が必要だった同製品を、「Microsoft 365」最上位ライセンス「E5」の機能としても提供する。具体的には、1000ユーザーライセンス当たり月間400 SCU(Security Compute Units)の利用枠を付与する(最大で月間1万SCUまで)。これにより、E5を契約している企業は、追加の予算申請なしでSecurity Copilotを活用できる。付与分を超過した場合のみ、従量課金(1SCU当たり6ドル)で拡張するオプションも提供される予定だ。
AIエージェントを統合管理する「Microsoft Agent 365」
Microsoftは企業内で稼働するAIエージェントを統合管理する「Microsoft Agent 365」も発表した。企業内でAIエージェントの利用が拡大する中、「誰が作ったか不明なエージェント」(シャドーAI)や「権限を持ち過ぎるエージェント」のリスクが高まっている。Agent 365は、これらのエージェントを可視化し、統制するための基盤となる。
主な機能は以下の通り。
- レジストリ:組織内の全エージェントを一覧化し、未承認のエージェントを検知、隔離する
- アクセス制御:Entraと連携し、エージェントの挙動やリスク値に応じて、社内リソースへのアクセスを動的に遮断する
- 可視化:エージェントがどのデータにアクセスし、どのユーザーとつながっているかをマップ化して表示する
- 相互運用性:「Work IQ」機能により、エージェントが「Microsoft Outlook」「Microsoft Word」「Microsoft Excel」といったMicrosoft 365アプリのデータや文脈を理解し、業務フローの中でシームレスにタスクを実行できるよう支援する
- セキュリティ:Defender、Entra、Purviewを活用し、外部および内部の脅威から包括的な保護を提供する
開発者向けには「Foundry Control Plane」が発表された。これはAIアプリ/エージェント開発プラットフォーム「Microsoft Foundry」の新機能で、開発段階からDefenderやEntraのセキュリティ機能が統合されている。これにより、開発者はセキュリティ部門の要件を満たしたエージェントを構築し、Agent 365にデプロイできる。
AIとデータの運用管理におけるセキュリティ機能
AI利用状況を統合的に管理する新機能も追加された。
「Microsoft Security Dashboard for AI」は、組織内のAIエージェント、アプリケーション、データのリスクを単一の画面で可視化するツールだ。DefenderやPurviewからのシグナルを集約し、例えば「機密データを過剰に共有しているエージェント」などを即座に特定できる。
Purviewでは、「Microsoft 365 Copilot」向けのデータ保護機能が拡張され、機密データの過剰共有(Oversharing)検出や、過剰共有リンクの自動一括修正が可能になった。
セキュリティ担当者を支援する機能、人間によるサービスも
この他、攻撃者の次の動きを予測する「Defender Predictive Shielding」機能や、クラウド設定の不備を防ぐ「ベースラインセキュリティモード」の一般提供も開始された。
Defenderと「GitHub Advanced Security」の統合では、脆弱(ぜいじゃく)性に対して開発者が「GitHub Copilot Autofix」で修正コードを適用し、その結果をDefender側で再検証するフローを構築する。
Windows自体も強化され、将来的な脅威に備えるポスト量子暗号(PQC)のサポートや、復旧プロセスを迅速化する「Windows Resilience Initiative」が発表された。
なお、人的な専門知識を提供する新サービスとして「Microsoft Defender Experts Suite」も発表された。マネージドXDR(Extended Detection and Response)やインシデント対応サービスを統合したもので、2026年初頭に提供開始を予定している。
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