AIでランタイムアップグレード、非推奨な構文を自動置換 「AWS Transform Custom」発表:2つのユースケースをAWSが紹介
AWSは組織固有のレガシーコードの変換やランタイムのアップグレードに対応する「AWS Transform Custom」の一般提供を開始した。
Amazon Web Services(AWS)は2025年12月1日(米国時間)、アプリケーションモダナイゼーション自動化エージェントAI(人工知能)サービス「AWS Transform」において、組織固有のニーズや移行シナリオに対応する「AWS Transform Custom」の一般提供を開始した。
「組織固有のコードパターンやコーディング規約を学習したカスタム変換に対応することで、コード変換に要する実行時間を最大80%削減する」と、AWSは述べている。
「AIを活用したコードモダナイゼーションで技術的負債を解消」 AWSが2つのユースケースを紹介
AWS Transform Customでは、老朽化したランタイムやフレームワークの更新、古いコードパターンのリファクタリングなど、技術的負債の原因となる箇所のモダナイゼーションを自動化する。
「Java、Node.js、Pythonについては事前に定義されたテンプレートが用意されており、追加情報なしでランタイムのアップグレードに対応する」(AWS)
利用者は社内ドキュメントや自然言語による説明、サンプルコードを基にしたカスタム変換を定義できる。変換結果に対して開発者が手動で加えた修正などのフィードバックも学習し、組織固有のコードパターンへの適用精度を高められる仕組みだ。
AWS Transform Customは、自然言語で対話的に変換を実行できるCLI(コマンドラインインタフェース)と、大規模な変換作業を管理するGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)の2種類が提供されている。
SDKやIaCも含めたエンタープライズ規模の変換を想定
AWS Transform Customは特定のプログラミング言語やフレームワークにとどまらず、クラウド環境で頻繁に更新されるAPIやIaC(Infrastructure as Code)の変換にも対応する。
主な対応領域は以下の通り。
- 言語/フレームワーク:Spring Boot更新時の依存ライブラリや設定ファイルの修正、あるいはAngularからReactへの移行におけるコンポーネント構造、状態管理、ルーティングロジックの書き換えなど、影響範囲を理解した高度な変換に対応する
- SDK(ソフトウェア開発キット):Java、Python、JavaScriptなど主要言語向けのAWS SDKの更新では、単なるAPIの機械的な変更だけでなく、新しいSDKバージョンで利用可能な最適化の機会やベストプラクティスを認識して適用する
- IaC:「AWS Cloud Development Kit」(AWS CDK)からTerraformへのIaCの変換や、「AWS CloudFormation」の更新に対応。コードの構造や意図を理解し、移行する
- 組織の固有パターンに対応:長年の開発で蓄積された組織固有のアーキテクチャパターンやユーティリティーライブラリ、コーディング規約を学習。社内の暗黙知やベストプラクティスを体系的な変換ルールとして形式化し、組織全体に適用する
AWS Transform Customを活用した2つのシナリオ
AWSは具体的なユースケースとして、以下の2つのシナリオを紹介している。
1. AWS LambdaランタイムのEOL対応(Python 3.8から3.13へ)
コマンド「atx custom def exec」を使用し、事前定義済みの変換ルール「AWS/python-version-upgrade」を適用する。「--configuration」でアップグレードするPythonのバージョン「Python 3.13」を指定するだけで、エージェントがコードを解析し、非推奨構文やインポート文を自動で置き換え、修正する。
処理完了後には、「requirements.txt」内の依存パッケージの更新や、移行検証用のテストケース提案を含む包括的なレポートが生成される。「手作業では数時間かかる更新作業を短時間で完了できる」という。
2. フロントエンドの大規模移行(Angular 16からAngular 19へ)
自然言語で「angular 16 to 19 application migration」と指示する。Angular 16から19への移行に完全に一致するものはないという警告が表示されるため、「create a new one」コマンドを入力してテンプレートを作成する。
この例では一気にバージョンを上げるのではなく、「16→17→18→19」と段階的にアップデートする変換定義が自動生成された。各フェーズにはテストと検証が含まれ、最終的には「アプリケーションビルド/本番環境」などの基準と、その証拠(エビデンス)が提示される。
AWSは「AWS Transform Customによって、これまでチームごとにばらばらに進められていたモダナイゼーション作業を、組織横断で知見を共有する一元的な仕組みに転換できる」とした上で、「これにより、開発者がより多くの時間を新機能開発やビジネス価値の創出に振り向けられる環境づくりを支援する」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AWS Re:Invent 2025で発表された開発運用/セキュリティの新機能はどう役立つのか?
AWSは2025年12月初めに開催した「AWS Re:Invent 2025」カンファレンスで、多数の新サービスや新機能などを発表した。開発運用やセキュリティの分野ではどのような発表があったのか。
Amazon S3を狙うランサムウェア、「暗号鍵の悪用」でAWSも復号不能
Trend Microは、Amazon S3を標的とする5種類のランサムウェア攻撃手法を解説した。特にSSE-Cなどユーザー提供鍵を悪用する手口は、AWS側でも復号不可能になるため警戒すべき脅威だという。
「仕事の6割でAI活用、生産性50%増」 Anthropicが自社エンジニアのAI利用実態を公開
Anthropicは、自社エンジニアがAI「Claude」をどのように活用しているかの調査結果を公開した。業務の6割でAIを利用し生産性が大幅に向上した一方で、若手育成や専門性維持への課題も見えてきた。


