「生成AIでコスト削減」は失敗する 2030年までに問い合わせ解決コストが有人オペレーターを上回るワケ:Gartner、AIとカスタマーサービスの予測
Gartnerは、生成AIを活用したカスタマーサービスの問い合わせ解決コストが2030年までに3ドルを超え、多くのBtoC向け海外有人オペレーターのコストを上回ると予測している。
Gartnerは2026年1月26日(米国時間)、生成AI(人工知能)の導入コストとカスタマーサービスへの影響に関する予測を発表した。
Gartnerのパトリック・クインラン氏(カスタマーサービスおよびサポート部門 シニアディレクターアナリスト)は、「カスタマーサービスのリーダーはコスト削減のためにAIを導入しようと決意しているが、投資対効果は必ずしも保証されていない。完全な自動化は多くの組織で高コストになるため、今後はコスト削減ではなく、顧客エンゲージメントの向上にAIを活用するようになるだろう」と指摘する。
2030年までの主要な予測
Gartnerが発表した生成AIとカスタマーサービスに関する主な予測は以下の通り。
1:生成AIの問い合わせ解決コストが3ドルを突破
2030年までに、生成AIによる問い合わせ解決コストは3ドル(約462円:1ドル=約154円の為替レートで換算)を超える見通しだ。これは、多くのBtoC(Business to Consumer)向け海外有人オペレーターのコストを上回る水準となる。
データセンターコストの上昇、AIベンダーが成長重視から収益性重視へと戦略を転換していることに加え、より多くのトークン消費や専門人材を必要とする高度なユースケースの増加により、カスタマーサービス部門におけるAI運用コストが急騰するという。
2:規制圧力によって有人サービス量が30%増加
Gartnerは2028年までに、AI規制の進展に伴って、有人サポートの需要が30%増加すると予測している。
主な要因は、人間と話す権利を保障する規制圧力だ。AI対応を拒否(オプトアウト)し、人間による対応を求める権利が保障されることで、多くのユーザーがAIを介さず直接オペレーターを指名するようになることが予測される。
この結果、組織は有人オペレーターの維持や、より好待遇での再雇用を迫られる可能性がある。適切なスタッフレベルを維持できない場合、顧客が人間と話すために長時間待たされることになり、顧客体験(CX)の悪化を招く恐れがある。
3:Fortune 500企業の10%がカスタマーサービス支出を倍増
2030年までに、Fortune誌が作成している上位500社の企業ランキング「Fortune 500」企業の10%が、パーソナライズされたプロアクティブな顧客体験の提供と競争優位性の確保を目的に、カスタマーサービスへの支出を倍増させる見込みだ。生成AIのコスト上昇に伴い、多くの組織が自動化によるコスト削減を断念する一方で、カスタマージャーニー全体での価値創造に活用する企業には、明確な差別化の機会が生まれるという。
クインラン氏は、「カスタマーサービスのリーダーは、顧客生涯価値(LTV)や再購入率、ブランドロイヤリティーの向上など、コスト最適化以外のメリットに目を向けるようになる。成功のためには、データやテクノロジー、人材への投資が不可欠だ。プロアクティブでパーソナライズされたサービスが顧客の期待となる中で、早期に導入した企業が競争優位性を獲得する」とコメントしている。
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