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VMware離れの次を狙う? アクロニスが“HCI参戦”で描く新勢力図IT保護を全部まとめる

バックアップベンダーのイメージが強いアクロニスが、次に狙うのは“VMware後”の受け皿だった。HCI参入の裏には、クラウド移行に揺れる中堅・中小企業市場と、加速するAI・セキュリティ需要がある。さらに同社はMDRやAI自動化、SCS評価制度対応まで踏み込もうとしている。

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 アクロニス・ジャパン(以下、アクロニス)は2026年5月20日に戦略発表会を開催した。これまでユーザー企業を支援するパートナーやサービスプロバイダー向けの製品を提供してきた同社だが、今回、サービスプロバイダー向けのハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)、「Acronis Cyber Frame」を発表した。バックアップから運用管理の自動化、セキュリティにカバー領域を拡大してきた同社が、さらにHCIソリューションを提供することになる。

 同社の川崎哲郎氏(代表取締役社長)は、「バックアップやセキュリティ、リモートマネジメントは、それ自体が目的ではありません。一言で言えば、アクロニスはIT保護に関わる領域を広くカバーしていきます」と述べ、IT保護、ひいてはそのITを利用している企業そのものの保護を目指し、進化すると意気込みを述べた。

新HCI基盤「Acronis Cyber Frame」 提供の背景にある“市場動向”

 新たにリリースしたAcronis Cyber Frameは、IaaS(Infrastructure as a Service)基盤を実現するHCIだが、それだけではないという。川崎氏は「バックアップとリストア、ディザスタリカバリー、自動化された運用管理、サイバーセキュリティが完全に統合されたIaaSです」と主張する。

 Acronis Cyber Frameには、アクロニス自身が、国内の2カ所も含め全世界の50カ所以上に展開しているデータセンターにホスティングし、IaaS形式で提供される「Acronis Cyber Frame Cloud」と、ホスティング事業者やサービスプロバイダーといった同社のパートナーがサービス内容や価格をコントロールする形で独自のホスティングサービスを展開できる「Acronis Cyber Frame Local」の2種類がある。後者は、パートナーがそれぞれ展開している自社のサービスと統合されたIaaSとして提供することが可能だ。

 ではなぜ同社がこうしたソリューションを提供するのだろうか。大きな理由はVMwareの企業買収に伴う市場の変化を受けて、IaaS基盤となり得るソフトウェアの代替ソリューションが求められていることだ。この他、データ主権や法規制対応といった要因によるローカル構成へのニーズの高まりもあるという。

 ただ、こうした状況の中、パートナー各社が自前でデータセンターなどのインフラを構築し、顧客の環境をホスティングするのはハードルが高い。かといって、これまでホスティング環境やプライベートクラウド環境で稼働していたシステムをハイパースケーラー各社のパブリッククラウドに移行するのも困難で、特に中堅・中小企業が求める機能が満たされない可能性がある上に、パートナー各社にとってはビジネスのうまみが損なわれる。Acronis Cyber Frameはそこに代替案を提供するものだ。


アクロニスの川崎哲郎氏(代表取締役社長)(筆者撮影)

 川崎氏は「バックアップやエンドポイント管理を統合したオールインワン型ソリューション『Acronis Cyber Protect Cloud』をこれまで提供してきた基盤を生かし、長年の経験と技術力、パートナー向け施策を組み合わせることで、パートナーファーストで、パートナー自身のビジネスに寄与すると考えています」と述べた。

 また、Acronisのリック・ヘブリー氏(シニアディレクター)は、Acronis Cyber Frameではマルチテナント環境が提供され、データ保護や管理、自動化といった必要なツールが含まれていることにも触れ、独自のサービスやアプリケーションを組み合わせるなどして「パートナー各社がそれぞれの条件の元でIaaSを展開し、顧客にアウトカムを提供できます」と説明した。

継続的なセキュリティ機能の強化を図り、SCS評価制度を後押し

 同説明会では、データ保護機能の継続的な強化を進めるとともに、万が一、保護機能が適切に動作しなかった場合に金銭的に補償する「Cyber Warranty」プログラムなど、今後のロードマップが紹介された。

 特に時間を割いて紹介されたのがアクロニスのセキュリティ戦略だ。

 同社は以前からAcronis Cyber Protect Cloudを通じて、バックアップやディザスタリカバリー(災害復旧)、リモート運用管理やモニタリングに加え、サイバーセキュリティ関連の機能を提供してきた。このプラットフォームは、世界的なセキュリティ対策の指針である米国国立標準技術研究所(NIST)の「サイバーセキュリティフレームワーク」(NIST CSF)の考え方に基づいたものだと川崎氏は説明した。

 「Acronis Cyber Protect Cloudは、単一の製品、単一の管理コンソールでNIST CSFで求められる幅広い機能を提供し、シンプルに効率よく管理できるようにしています」(川崎氏)


Acronis Cyber Protect CloudはNIST CSFの考え方に基づいて設計されている(出典:アクロニス提供資料)

 一方、世の中ではサプライチェーンセキュリティリスクが高まっている。こうした背景から経済産業省は、NIST CSFなどのフレームワークを下敷きにして「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」(SCS評価制度)の年度内の実施を目指している。

 こうしたトレンドを紹介した上で川崎氏は、Acronis Cyber Protect Cloudを生かし、「500社を超えるパートナーとともに、『日本全体のセキュリティレベルを底上げする』というSCS評価制度の目的達成に向け積極的に参加し、普及、促進していきます」と語った。

 特にAcronis Cyber Protect Cloudのコンプライアンス支援機能「Acronis Compliance Orchestrator」では、テンプレートを使って、NIST CSFの他、「CIS Controls」など複数のセキュリティガイドラインを参照しながら、必要な要件が満たされているかどうかをチェックし、適切な修正を実行する仕組みを提供する。業界ガイドラインだけでなく、民間企業が提供するサイバー保険についても、保険加入条件を満たせるかどうかを確認できるテンプレートを備えている。SCS評価制度に向けたセキュリティのベースラインを確保したい中堅・中小企業にとってはうれしい機能だろう。


Acronis Compliance OrchestratorはSCS評価制度における☆3以上の取得を目指す企業にとっても役に立つだろう(出典:アクロニス提供資料)

 ヘブリー氏はさらに、今後のセキュリティ関連のロードマップについても紹介した。

 1つ目はエンドポイントセキュリティの強化だ。「Endpoint Security Posture Management」機能やAIを活用したインシデントの自動トリアージ、マネージドセキュリティサービスプロバイダーによる脅威ハンティングなどが予定されている。

 2つ目は、アクロニス自身によるマネージドサービス(MDR)の提供だ。このサービス自体は2026年初頭に発表されたものだが、近いうちに機能をさらに強化し、ダークWebにアイデンティティー情報が漏えいしていないかどうかを調査する機能やメールセキュリティに対するMDR機能の拡張に加え、パートナー・サービスプロバイダーだけでなく、エンドユーザーに直接MDR機能を提供することを計画している。

 MDRは現時点で、同社の脅威インテリジェンス部門「Threat Research Unit」(TRU)から提供される予定だが、Acronis Cyber Frameと同様に今後は、国内のパートナー経由での提供も進めるとした。これにより、各マネージドセキュリティサービスプロバイダー(MSSP)は自社のサービスと組み合わせた形で、アクロニスのMDRを提供できるようになる。

 「MDRは、アクロニス側でインフラをホスティングしたり、MSSPのパートナーが自前のデータセンターで提供したりできます。オープンなエコシステムに基づき、パートナーがそれぞれアクロニスのソリューションと他社のアプリケーションを組み合わせる世界観を実現します」(ヘブリー氏)

 この他、アップデートとしては相関分析型のITDR(Identity Threat Detection and Response)の提供も予定している。「SaaSやファイアウォール、VPN、その他さまざまなシステムからログを取り込み、相関分析を加えることによって、さまざまな脅威の検知につなげていきたいと考えています」(ヘブリー氏)


アクロニスのセキュリティ関連ロードマップ。パートナーやサービスプロバイダーを支援する強力なセキュリティ機能を多数提供する(出典:アクロニス提供資料)

AI活用の幅を広げ意思決定を支援しつつ、AI利用に伴うリスクに対処

 セキュリティと並んで大きく時間を割いたのが、AIの活用についてだ。

 Acronis Cyber Protectではこれまでも、暗号化されたデータをキャッシュからリアルタイムに復元したり、PCやサーバの健全性をモニタリングしたりといったさまざまな形でML(機械学習)を含めたAIを活用してきた。「既に25種類のAIシナリオが追加されており、今後も追加する予定です」(川崎氏)


Acronisのリック・ヘブリー氏(シニアディレクター)(筆者撮影)

 ただヘブリー氏によると、これはAI活用の第一段階だという。次のステップは、生成AIや大規模言語モデル(LLM)を活用した問い合わせ対応の効率化だ。アクロニスは、ITサポートサービスを提供する企業向けにAIを活用した機能を提供している。「パッチ適用前に十分に検証し、エラーが起こらないことを確認した上で適用するといったプロセスが、LLMによって簡単にできるようになりました」(ヘブリー氏)

 そして第三段階では、AIが多くの意思決定を支援する「ハイパー自動化」とでも呼べる段階だ。これに向けてアクロニスでは、マネージドサービスプロバイダー(MSP)がAIを活用してヘルプデスクワークフローを効率化する「Cyber Studio」を提供している。

 具体的には2026年第3四半期に、保護や管理、自動化機能をネイティブに統合した「Acronis Cyber Console」をリリースし、AIを活用したプロアクティブなUXを提供する予定だ。この統合コンソールには、サービスデスクやパートナーポータルも統合される計画だという。

 この他、リモート監視・管理を支援する「Acronis RMM」でも、AIスコアリングによる安全なパッチ適用をはじめ、段階的にさまざまなAIテクノロジーを導入済みだ。今後さらに、ソフトウェアをパッケージ化して自動的に、かつセキュアにデプロイする「AI Deploy Pilot」や、リモートサポートの際に関連情報やAIによるレコメンデーションなども一元的に表示する「AI支援によるリモートアクセス」などを搭載する方針だ。

 今後は、アクロニスが各プラットフォームを通して蓄積してきた大量の情報をAIで解析し、現実のアクションにつながる「インサイト」に落とし込む「Acronis Cyber Intelligence」の提供も予定している。

 「Acronis Cyber Intelligenceを活用することで、サービスプロバイダーはより良い意思決定を下し、より多くのサービスを提供し、ひいては顧客により良い成果を届けられるでしょう」(ヘブリー氏)

 このようにアクロニスでは、あらゆる観点でAI活用を推し進める方針だ。ただ、安易なAI活用は環境を複雑にし、シャドーITの乱立やAIを介した情報漏えい、プロンプトインジェクションといったリスクを引き起こしかねない。かといってAIの活用を抜きにしては、今や、生産性の向上や魅力あるサービスの実現は見込めない。

 そこでアクロニスでは並行して、生成AIの利用状況を可視化し、ポリシーに基づいて利用をコントロールし、もしルールに反して機密情報が入力されるような場合には検知・ブロックする「Acronis GenAI Protection」も提供することで、バランスを取りながら、AIがもたらすメリットを享受できるよう支援するとした。

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