「セキュリティ機器に全通信を送る」は限界? Ciscoが語るAI時代のネットワークとは:エージェンティックAIの普及で変わるネットワークとセキュリティの在り方
エージェンティックAIの普及によって、セキュリティやネットワークの在り方が変わるとCisco Systemsは指摘する。具体的に何が変わるのか。AI時代を見据えて同社が描く戦略とは。
AIエージェントを中核とした、タスクを自律的に実行するAIである「エージェンティックAI」。Cisco Systems(以下、Cisco)は、その普及によってネットワークやセキュリティの在り方が変わるとみる。Ciscoでプロダクトポートフォリオ戦略担当シニアバイスプレジデントを務めるジェフ・シュルツ氏に、AI時代を見据えたネットワーク戦略やAIインフラに対する考え方を聞いた。
ネットワークの在り方をエージェンティックAIが変える
──エージェンティックAIについて、Ciscoは「人の能力を引き出す鍵だ」と説明しています。エージェンティックAIの影響をどのように考えていますか。
ジェフ氏(以下、敬称略) 人は仕事と私生活の両方において、自分専用のAIエージェントを持てるようになりつつあります。エージェンティックAIで重要なのは、こうしたAIエージェントが単に情報を提示するのではなく、タスク全体を理解して推論しながら実行し、さらに他のAIエージェントと協働できる点です。
人が指示すれば、AIエージェントは実際に業務を完了できる。これは、情報を返すことにとどまる従来のAIチャットbotやAI検索(生成AIで質問意図を理解し、複数サイトの情報を基に回答を提示する仕組み)とは本質的に異なります。
エージェンティックAIによって、人は定型的な作業から解放され、より高度な業務に専念できるようになります。結果として生産性が大きく向上するのです。
エージェンティックAIはネットワークをどう変えるのか?
──エージェンティックAIの普及に伴い、データや処理が複数のシステムや拠点に分散するようになると、ネットワーク負荷の増大につながる可能性があります。ネットワークへの影響をどのように見ていますか。
ジェフ より多くの回線容量が必要になることは間違いありません。ネットワーク内でのパケットの流れ方も見直す必要があります。変動するトラフィック(データの流れ)に応じて、動的に制御できるネットワークが不可欠です。
セキュリティの在り方も変わります。従来のように、全ての通信を個別のセキュリティ機器で制御する方法は効率的ではありません。ネットワーク自体にセキュリティ機能を組み込み、通信の流れの中で保護する考え方が重要になります。
当社の独自チップ「Cisco Silicon One」は、こうした変化を支える役割を果たします。Cisco Silicon Oneはプログラム可能なアーキテクチャを採用しており、トラフィックの特性や要件に応じて、パケットの処理や転送の方法を変更できます。エージェンティックAIやフィジカルAI(現実世界を認識し、物理空間で自律的に行動するAI)の普及によってトラフィックの性質が変化しても、それに製品の振る舞いを適応させることが可能です。
──AI活用に向けて新たなネットワークインフラが必要になる一方で、企業には既存インフラも残っています。どのように刷新を進めるべきでしょうか。
ジェフ ネットワークインフラの刷新は容易ではありません。一方でネットワーク機器に焦点を絞ると、一定周期での更新が当たり前になっています。企業は機器を導入して運用し、5年から8年を目安に更新します。サポート終了を迎える機器については、この機会に最新機器に置き換えることで、技術の進展によるメリットを取り込めます。
「AI Factory」競争で差異化
──Ciscoは2025年6月、NVIDIAとの提携に基づく「Cisco Secure AI Factory with NVIDIA」を発表しました。これは、AIモデルの開発から学習、推論、運用まで一体的に支える「AI Factory」の一例だと認識しています。AI Factoryについては、Dell Technologies(以下、Dell)やHewlett Packard Enterprise(以下、HPE)も同様に、NVIDIAとの提携を通じて展開しています。競合に対するCiscoの差異化ポイントは何ですか。
ジェフ 当社が扱うのは、NVIDIAのGPU(グラフィックス処理装置)を搭載した自社製サーバだけではありません。2024年3月に買収したSplunkのデータ分析ツールやAIによる防御機能、ネットワーク、セキュリティまで、AIインフラに必要な要素をワンストップで提供できるのが当社の強みです。
当社の競合ベンダーからAI Factoryを購入する場合、そのベンダーがネットワーク製品を扱っていなければ、さらに他のベンダーからネットワーク製品を購入し、ユーザー企業側で異なる製品をつなぎ合わせなければいけません。当社は「Cisco AI PODs」としてサーバやネットワーク、ストレージに加えて、AI開発に必要なソフトウェアまで含んだ、事前検証済みの統合インフラ製品を提供しています。部品の寄せ集めではなく、最初から垂直統合型として設計した製品です。
DellやHPEはサーバに関してさまざまな経験があると認識しています。当社もグローバルに分散しているサーバ群の管理という点では同様であり、この経験知をAI Factoryに組み込んでいます。
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