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「データセンター、2035年宇宙の旅」 コストが地上の78倍でもSpaceXやGoogleが投資する理由AmazonやAnthropicも興味

ABI Researchは、宇宙データセンターの実現可能性と市場動向に関するQ&Aを公開した。エネルギー制約や防衛需要を背景に、商用化フェーズに近づきつつある宇宙データセンターの主要プレーヤーと課題を整理している。

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 調査会社ABI Researchは2026年5月11日(米国時間)、宇宙データセンター(ODC:Orbital Data Centers)の実現可能性と市場動向に関するQ&Aをブログで公開した。宇宙データセンターを「太陽光発電を活用した地球大気圏外の軌道上に展開する、データ処理/保存用のコンピューティング施設」と定義し、用途や商用性、限界、主要開発企業、長期的影響について見解を示している。

宇宙データセンターは「SF構想」から商業化検討段階に移行

 ABI Researchは、2035年までに最大1万8600台のデータセンターが宇宙で稼働し、軌道上の実効コンピューティング能力は1.5ギガワットに達すると予測している。資金調達額は2026年4月時点で30億ドルを超えており、主要投資ファームやグローバル複合企業が参入している。


2026〜2035年の宇宙データセンターの実効コンピューティング能力予測(提供:ABI Research

 宇宙データセンターは長らくSFの概念とされてきたが、現在は商業的実現可能性のステージに近づいている。背景にあるのは、AI向け電力需要の増加や、宇宙ベースコンピューティングの1ワット当たりのコストを引き下げようとする動向の2点だとABI Researchは分析している。

 以下は、ODCに関する主要論点についてABI Researchのプリンシパルアナリストであるアンドリュー・キャバリエ氏が回答するQ&Aだ。

Q1:なぜ今、宇宙にデータセンターが必要なのか

 一言で言うと、AIデータセンター需要の急増によるエネルギー危機だ。

 ABI Researchの予測では、米国のAIワークロード向けアクティブIT容量は、2026年の8.2ギガワットから2031年には26.4ギガワットに拡大する。他の地域でも同様の傾向が見込まれる。

 一部地域では送電網接続待ちが10年規模に達しており、企業や政府は宇宙データセンターのような代替手段の模索を本格化させている。

 地上の発電インフラには本質的な制約がある。送電網への接続待ちは滞っており、負荷中心地への送電インフラは追い付かず、物理機器のサプライチェーンは逼迫(ひっぱく)し、需要は利用可能な容量を上回っている。

 一方、宇宙データセンターは常時太陽光を利用でき、大気や天候の影響も受けない。その結果、地上の太陽光と比較して10〜40倍のエネルギー密度を得られる。

Q2:宇宙データセンター需要を支える主な要因は何か

 現時点で宇宙データセンター開発の最大の需要は、防衛と国家安全保障だ。ミサイル警戒やISR(情報、監視、偵察)では、地上攻撃の影響を受けにくい耐障害性コンピューティングインフラが求められており、宇宙データセンターは収集地点に近い場所でデータ処理できるので、情報分析や意思決定の迅速化に役立つ。

 2026〜2029年には、地球観測や合成開口レーダー(SAR:Synthetic Aperture Radar)、キロワット級のCompute-as-a-Service(CaaS)、宇宙交通管理など、宇宙空間でのデータ処理需要が拡大すると予測される。

 2030年代には、商業的に実現可能なAI推論、安全なデータバックアップ、ハイパースケールCaaS、AIトレーニングなど、より大規模なコンピューティング用途への拡大が見込まれる。

Q3:宇宙データセンターを構築している企業は

 現在、35社以上が宇宙データセンター市場に参入しており、2027年までに参入企業は倍増すると予測される。

 宇宙データセンター市場では、小規模実証を進める企業群と、将来的な大規模インフラ構築を目指す企業群の2つの流れが存在する。

 Axiom SpaceやADA Space、Kepler Communicationsなどは、国際宇宙ステーション向けのコンピューティングノードや小規模実証プラットフォームを展開している。

 一方、SpaceXやStarcloud、Amazonなどは、メガワット級から最終的にはギガワット級の宇宙データセンター構築を視野に入れている。

 ハイパースケーラーの中でも、StarcloudとSpaceXは2027年までにテスト用宇宙データセンター衛星を打ち上げる見通しだ。

 Googleの研究プロジェクト「Project Suncatcher」は、TPU(Tensor Processing Unit)搭載衛星とフリースペース光リンクを組み合わせる構想で、2027年初頭にPlanet Labsと共同で2衛星の学習ミッションを目指す。ただし商用サービス化はより長期の目標だ。

 中でもSpaceXは最大100万機規模の衛星による「衛星コンステレーション」(多数の小型衛星をシステムとして協調動作させるもの)の構築を視野に入れている。

Q4:宇宙データセンターの主要課題は何か

 宇宙データセンターの主要課題は「過酷な自然条件」「高いコスト」「重量」の3つだ。

過酷な自然条件

 宇宙空間では冷却が難しく、大型放熱パネルが必要になる。例えば、GPUの「NVIDIA H100」には1基当たり約1.1平方メートルの放熱パネルが必要だとされている。

高コスト

 ABI Researchの概算では、宇宙データセンターのTCO(総所有コスト)は、地上の同等システムの最大78倍に達する可能性がある。軌道投入後にはハードウェアのアップグレードが容易ではないので、運用者は3〜5年という短い期間で価値を生み出すことを余儀なくされる。

重量

 2000kg級衛星で100キロワットを発電するには、約670kgの太陽光パネルが必要となり、クラウドコンピューティングや熱冷却に使える重量は限られてしまう。

 これらの複合的な制約が、現在の展開が小規模実証にとどまる理由だとABI Researchでは分析している。

宇宙データセンター市場は2035年に転換点を迎える可能性

 ABI Researchは、現時点では宇宙データセンターの展開コストは依然として高く、市場参入は大規模な財務リソースを持つ企業に限られていると分析している。

 一方、2035年までには、軌道上コンピューティングのワット当たりコストが地上データセンターに近づくとも予測している。背景には、打ち上げコストの低減や発電効率の向上、製造規模の拡大、太陽光発電や冷却技術の進歩などが挙げられる。SpaceXやStarcloudのような軌道上ハイパースケーラーが、このための推進役になると予想される。

 注目すべきは、Anthropicが数ギガワット規模の軌道上AIコンピューティング能力の開発に向けて、SpaceXとの連携に関心を表明していることだ。これはハイパースケール宇宙データセンターの需要が、AIネイティブ企業から具体化し始めていることを示しているとABI Researchは指摘する。

 「今後は衛星オペレーターや打ち上げプロバイダー、通信事業者、チップセットプロバイダーなどのエコシステムの連携が、宇宙データセンター構築に必要な技術的ギャップを埋めていくことになる」とABI Researchは分析している。

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