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Windows 11「25H2」はなぜ地味な機能追加しかないのか? 9カ月で進んだ“静かなる成熟”Windows 11 Trends

2025年秋に登場したWindows 11の機能更新プログラム「25H2(2025 Update)」は、一見すると変化の少ない地味なアップデートに見える。しかし、その本質は「静かなる成熟」にある。本稿では、提供開始から現在に至るまでのアップデートの軌跡をたどりながら、スマートアプリコントロール(SAC)の改善やFAT32の制限緩和といった、地味ながら実用性の高い最新の追加機能と運用の勘所を整理する。

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Windows 11「25H2」はなぜ地味な機能追加しかないのか?
Windows 11「25H2」はなぜ地味な機能追加しかないのか?
2025年秋に登場したWindows 11の機能更新プログラム「25H2(2025 Update)」は、一見すると変化の少ない地味なアップデートにみえる。しかし、その本質は「静かなる成熟」にある。本稿では、提供開始から現在に至るまでのアップデートの軌跡をたどりながら、スマートアプリコントロール(SAC)の改善やFAT32の制限緩和といった、地味ながら実用性の高い最新の追加機能と運用の勘所を整理する。

 2025年9月30日(米国時間)に一般提供が開始された「Windows 11 25H2(2025 Update)」。多くのユーザーは、「これが本当にメジャーアップデートなのか」という戸惑いを抱いたのではないだろうか。適用は数分で終わり、再起動は一度きり。見た目もほとんど変わらない。

 しかし「何も変わっていない」というのは誤解である。25H2の本質は、新しい機能を一気に流し込むことではなく、すでにPCの中で眠っていた機能を、時間をかけて少しずつ目覚めさせていく点にある。そこで本稿では、執筆時点における25H2に追加された機能を時系列で追いながら運用上押さえるべき勘所を整理する。

静かなる成熟を遂げる25H2と次期「26H2」への展望

 25H2の配信が開始されてから9カ月が過ぎ、2026年10月ごろに提供される機能更新プログラム「26H2」のテストが進んでいるようだ。一方で25H2に対しては、これまで目玉となるような追加機能が提供されないまま過ぎてきた。鳴り物入りで発表されたNPU(Neural Processing Unit)搭載の「Copilot+ PC」向けの機能も、25H2で一挙に展開されることが期待されたが、簡単なスケッチとプロンプトで画像を生成できる「コクリエーター(Cocreator)」機能や、タイムラインで過去の作業を記録して検索できる「リコール(Recall)」などにとどまっている。

 毎回、新しい機能更新プログラムで追加される新機能は、その前のバージョンにも適用されることから、26H2向けの新機能も25H2に反映される可能性が高いと思われる。だが、その26H2においても目新しい機能についての情報は少ない。Windows 11が安定期に入り、新機能は次の大型バージョンアップ「Windows 12」に向けて温存されているのかもしれない。

 もっとも、新機能の追加がないことはメリットでもある。機能追加で大幅な変更が加えられることで生じるトラブルが避けられるからだ。

 実際、25H2は、2024年10月1日(米国時間)に一般提供開始となった24H2(2024 Update)と全く同じOSコア(コードベース)を共有している(ビルド番号も24H2の26100系に対し25H2は26200系と近接している)。新機能のコードは、それ以前の月例更新プログラムを通じて「無効化」された状態で先回りして配信済みであり、25H2の本体は、その機能フラグを一括でオンに切り替える「イネーブルメントパッケージ(enablement package、略してeKB)」と呼ばれる小さなパッケージだったため、配布サイズは大きくても200KB程度、適用も一瞬で終わった。OSを大きく書き換えないため互換性トラブルもほとんど発生しなかった。管理者にとっては、検証・展開コストが従来の機能更新プログラムよりも格段に少なく済んでいる。

 このeKBによるバージョンアップ自体は新しい手法ではない。もともとはWindows 10時代(2019年のバージョン1909)に確立され、Windows 11では23H2(2023年10月)で初めて採用された。2024年の24H2はフル更新だったが、25H2は再びeKBに戻っている。

 Microsoftがこの方式を採用する狙いは、移行リスクと運用コストの最小化にある。システムファイルを置き換えるような大幅な書き換えを一度に実行すると、検証や適用作業が煩雑になり現場が疲弊するため、コードベースを据え置いたまま機能を小出しに有効化する道を選んだと思われる。

タイムラインで振り返る25H2更新プログラムの軌跡

 ここから25H2に提供された更新プログラムの歴史を見てみていこう。2025年10月28日のCリリース(翌月の月例更新プログラムに先駆けて配信される「プレビュー版」)から2026年2月10日のBリリース(月例更新プログラム)まで、25H2に対する新機能の提供はなく、セキュリティと品質改善が中心となっていた。

KB番号 配信日 種別 OSビルド 主な追加機能・変更点
KB5067036 2025/10/28 C 26200.7019 品質・信頼性の改善が中心
KB5068861 2025/11/11 B 26200.7171 セキュリティ・品質改善が中心
KB5070311 2025/12/1 C 26200.7309 品質・信頼性の改善が中心
KB5072033 2025/12/9 B 26200.7462 セキュリティ・品質改善が中心
KB5074109 2026/1/13 B 26200.7623 セキュリティ・品質改善が中心(※Outlook classicの応答停止という既知の問題が報告された)
KB5077744 2026/1/17 OOB 26200.7627 緊急の不具合修正
KB5078127 2026/1/24 OOB 26200.7628 緊急の不具合修正
KB5074105 2026/1/29 C 26200.7705 品質・信頼性の改善が中心
KB5077181 2026/2/10 B 26200.7840 セキュリティ・品質改善が中心
KB5077241 2026/2/24 C 26200.7922 【新機能】Emoji 16.0の絵文字追加/タスクバーのネットワークアイコンからのインターネット速度テスト起動/エクスプローラーの新規ウィンドウ起動の信頼性向上・ZIP以外の書庫での[すべて抽出]表示/[スタート]メニューのアカウント項目からMicrosoft 365特典ページへアクセス/スリープ復帰・表示パフォーマンスの改善
KB5079473 2026/3/10 B 26200.8037 2月プレビュー(KB5077241)の機能を正式統合(Emoji 16.0、インターネット速度テストなど)+セキュリティ修正・品質改善
KB5085516 2026/3/21 OOB 26200.8039 KB5079473に起因するサインイン不可問題の緊急修正
KB5079391 2026/3/26 C 26200.8116 【新機能】ナレーターのCopilot連携強化/スマートアプリコントロール(SAC)を再インストール不要でオンとオフの切替/1000Hz超の超高リフレッシュレートディスプレイ対応
KB5086672 2026/3/31 OOB 26200.8117 提供停止となったKB5079391の全機能を含み、インストール不具合を修正した再リリース版
KB5083769 2026/4/14 B 26200.8246 3月プレビュー(KB5079391/KB5086672)の機能を正式統合(ナレーター強化、SAC切替、高リフレッシュレート対応)+セキュリティ修正/セキュアブート証明書の自動受信対象の拡大、更新後にBitLocker回復画面に入る問題の修正
KB5083631 2026/4/30 C 26200.8328 【新機能】Xboxモード(フルスクリーンのゲーム体験、[Windows]+[F11]キーで起動)/ウィンドウのスナップ時の触覚フィードバック(ハプティクス)/タスクバーからAIエージェントの進捗をリアルタイム表示/FAT32フォーマット上限を32GB→2TBに拡張
KB5089549 2026/5/12 B 26200.8457 4月プレビュー(KB5083631)の機能を正式統合(Xboxモードなど)+セキュリティ修正
KB5089573 2026/5/26 C 26200.8524 【新機能】共有オーディオ(Bluetooth LE Audioで2人が同時に同じ音声を聴取)/マルチアプリカメラ(複数アプリが1台のカメラを同時利用)/タスクマネージャーのNPU対応拡充(使用率・専用メモリ表示)/セットアップ時のユーザーフォルダ名カスタマイズ/拡大鏡の強化/[スタート]メニュー表示やアプリ起動の高速化/低レイテンシプロファイル
KB5094126 2026/6/9 B 26200.8655 5月プレビュー(KB5089573)の機能を正式統合(共有オーディオ、マルチアプリカメラ、NPU対応など)+200件超えの脆弱性修正/仮想化(Hyper-Vなど)でのブラックスクリーン(BSoD)修正/セキュアブート証明書配布の対象拡大
KB5095093 2026/6/23 C 26200.8737 【新機能】ポイントインタイムリストア(アプリや個人ファイルを保持したまま直近の自動復元ポイントへ素早くシステムを巻き戻す回復機能)/Windows Updateの一時停止期間の拡張(カレンダーから終了日を直接指定して最大35日まで更新を一時停止可能)/画面ティント(画面全体に好みのカラーフィルターを適用して目の疲れを軽減するアクセシビリティ機能)/拡大鏡の強化(倍率のキーボード直接数値入力や、拡大バーからのダイレクトな倍率調整に対応)/エクスプローラーのパス貼り付け改善(引用符やダブルバックスラッシュを含むフォルダパスをアドレスバーにそのまま貼り付けても一発で開けるように変更)/ウィジェット機能のパフォーマンス向上およびデフォルト動作の変更(アイコンホバーでの自動展開が初期状態でオフへ変更)
25H2向け更新プログラムの更新内容
「種別」の「B」は毎月第2火曜日の翌日に配信される月例の更新プログラム、「C」は月末に配信される翌月の月例更新プログラムのプレビュー版(先行リリース)、「OOB」は緊急のセキュリティや不具合修正として提供されるもの。

 2026年2月24日以降、月末のCリリースで新機能を導入、翌月のBリリースで正式統合という流れが続く。

25H2で追加された機能

 25H2に追加された主な機能を簡単に紹介しておこう。

●スマートアプリコントロール(SAC)を再インストール不要でオンとオフの切替

 信頼されていないアプリや悪意のあるアプリの実行をブロックする「スマートアプリコントロール(SAC)」。従来は一度オフにすると、再びオンにするためにはOSのクリーンインストール(再インストール)が必要という非常に不便な仕様だった。今回のアップデートにより、再インストールを行うことなく、「Windowsセキュリティ」アプリでシームレスに「オン」と「オフ」を切り替えられるようになった。これにより、一時的にブロックを解除して特定のアプリを試用した後に、再びセキュリティ強度を高める運用が容易になった。

スマートアプリコントロールの「オン」と「オフ」が可能に
スマートアプリコントロールの「オン」と「オフ」が可能に
信頼されていないアプリや悪意のあるアプリの実行をブロックする「スマートアプリコントロール(SAC)」。従来は一度「オフ」にすると、「オン」にするためにはOSのクリーンインストール(再インストール)が必要だった。今回のアップデートにより、再インストールを行うことなく、「Windowsセキュリティ」アプリで「オン」と「オフ」を切り替えられるようになった。

●FAT32フォーマット上限を32GB→2TBに拡張

 長らくWindowsの制限として残っていた「FAT32フォーマット時の最大容量32GB」という制限が、ついにコマンドライン(formatコマンド)上で最大2TBまで拡張された。大容量のUSBメモリやSDカードを、古い機器やクロスプラットフォーム環境との互換性が高いFAT32でフォーマットする際、サードパーティー製のツールに頼る必要がなくなった。

●共有オーディオ(Bluetooth LE Audioで2人が同時に同じ音声を聴取)

 Bluetooth Low Energy(LE)Audioに対応したデバイスにおいて、1台のPCから複数の対応イヤフォンへ同時にオーディオをストリーミングできる「共有オーディオ」機能が追加された。対面でのプレゼンテーションや、静かな場所で2人が同時に同じビデオや音楽を視聴するシーンで重宝する機能である。

●マルチアプリカメラ(複数アプリが1台のカメラを同時利用)

 これまでWindows OSでは、1台のWebカメラを1つのアプリ(例:Microsoft Teams)で占有する仕様だった。これが複数のアプリ(Microsoft Teamsと録画アプリ、顔認識アプリなど)が同時に同じカメラの映像フィードを利用可能になった。Web会議を別アプリで録画することなどが可能になり、大幅に利便性が向上した。

●タスクマネージャーのNPU対応拡充(使用率・専用メモリ表示など)

 AI処理を担うNPUのステータス監視が強化された。タスクマネージャーの[パフォーマンス]タブなどで、CPUやGPUと同様に、NPUの使用率やシステム上で割り当てられている専用メモリの消費状況をグラフィカルに確認できるようになった。

タスクマネージャーにNPU関連項目の表示が可能に
タスクマネージャーにNPU関連項目の表示が可能に
タスクマネージャーの[プロセス]タブや[詳細]タブにNPU関連の列が追加表示可能になった(NPU搭載PCのみ)。各プロセスがNPUをどのように使用しているのかが確認できるようになる。

●セットアップ時のユーザーフォルダ名カスタマイズ

 Windows 11の初期セットアップ(OOBE)時、Microsoftアカウントのメールアドレスの先頭5文字から自動生成されていたユーザーフォルダ名(「C:\Users\user_」など)を、セットアップ段階で任意の名称にカスタマイズ(手動設定)できるようになった。システムフォルダの名称規則にこだわりたいユーザーや、開発環境の都合でパスの名称を統一したい管理者にとって待望の改善である。


 このように、25H2における新機能の追加は、派手さこそないものの、かゆいところに手が届く「実用的な改善」が中心となっている。Copilot+ PCを購入したユーザーからすると、AI機能の劇的な進化がない点は物足りなく映るかもしれないが、これは裏を返せばWindows 11が「熟成」され、エンタープライズ用途に耐え得る安定性を獲得した証でもある。

 目新しい新機能に振り回されることなく、日々の業務を安全かつ快適に行える環境を望むユーザーやシステム管理者にとって、現在のWindows 11はまさに「最良の選択肢」になったといえるだろう。

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