「AIも1人作業でサボり出す」 Claude Code、3つの失敗モード:トークン多用「動的ワークフロー」の注意点
Anthropicは、「Claude Code」の「動的ワークフロー」機能の仕組みと実践的な活用パターンを解説したブログ記事を公開した。
Anthropicは2026年6月2日(米国時間)、エージェント型コーディングツール「Claude Code」に導入した「動的ワークフロー」機能の仕組みと実践的な活用パターンを解説したブログ記事を公開した。
動的ワークフローにより、Claudeはタスクに合わせたマルチエージェントのハーネスをその場で自ら作成し、オーケストレーション(調整)できる。
単一のコンテキストウィンドウの限界による「3つの失敗モード」とは
Claude Codeが標準ハーネスでタスクを処理する場合、計画と実行を単一のコンテキストウィンドウ内で行う必要がある。これは多くのコーディングタスクで非常に効果的だが、長時間にわたるタスク、大規模並列処理を伴うタスク、高度に構造化されたタスク、敵対的なタスクではうまくいかない場合がある。
Claudeは単一のコンテキストウィンドウで複雑なタスクに長時間取り組むほど、以下3つの失敗モードに陥りやすくなるからだ。
エージェントの怠慢
複雑な複数パートのタスクを完了する前に作業を止め、部分的な進捗(しんちょく)で作業完了を宣言してしまう。例えば、セキュリティレビューの50項目のうち35項目だけに対応するなど。
自己優先バイアス
自身の結果や発見を優先する傾向。評価基準に照らして検証や判断をするよう求められた場合に顕著になる。
目標のドリフト
コンテキストの圧縮後などに、多くのターンを経るうちに当初の目標への忠実度が徐々に損なわれていく。要約のステップごとに情報が失われるからだ。
ワークフローによる対処
これらの問題に対処するには、ワークフローの作成により、それぞれ独自のコンテキストウィンドウと独立した目標を持つ複数のClaudeサブエージェントをオーケストレーションする必要がある。
従来も、「Claude Agent SDK」や「claude -p」を使って静的なワークフローを構築することはできた。だが、静的ワークフローはあらゆるエッジケースをカバーしなければならず、汎用(はんよう)的なものになりがちだ。
Claude Codeの標準ハーネス(モデルを呼び出し、ツール実行を処理し、エージェントの動きを制御する仕組み)はコーディング向けに設計されているが、それ以外の多様なタスクにも有効だ。ただし、リサーチ、セキュリティ分析、エージェントチーム、コードレビューといった種類の作業で最高の性能を引き出すには、Claude Code上にカスタムハーネスを構築する必要があった。
Anthropicによると、「Claude Opus 4.8」により、Claudeは個々のユースケースに合わせたカスタムハーネスを自ら作成する動的ワークフローを可能にする知能を備えるに至ったという。
「動的ワークフロー」とは何か
動的ワークフローを使えば、ClaudeがClaude Code上にハーネスを動的に作成し、これらの問題をよりネイティブに解決できるようになる。ワークフローは保存、共有、再利用も可能だ。
技術的には、動的ワークフローは、サブエージェント(※)の生成と調整を支援する幾つかの特殊な関数を含むJavaScriptファイルを実行する仕組みだ。データ処理用にJSON(JavaScript Object Notation)を利用でき、「Math」「Array」といった標準のJavaScript関数も利用できる。
※メインのClaude Codeセッションから独立して動作する自己完結型のClaudeインスタンス。それぞれが独自のコンテキストウィンドウを持ち、ファイルの読み取り、コードの探索、変更などを独立して行う。タスクが完了すると、関連する結果のみをメインの会話に返す。
動的ワークフローは、「各エージェントがどのモデルを使用するか」「サブエージェントを固有のワークツリーで実行するかどうか」を決定できる。これにより、Claudeは各ステップに必要な知能レベルと分離度を選択できる。ワークフローは、中断されても、セッションを再開すれば、中断した箇所から続行することもできる。
よく使われる6つのワークフローパターン
動的ワークフローは、プロンプトでClaudeに作成を依頼するか、あるいはトリガーワード「ultracode」を用いてClaude Codeに作成させることで使用できる。Anthropicは、Claudeがワークフロー構築時に使用したり、組み合わせて作成したりする一般的な6つのワークフローパターンを紹介している。
【1】分類して実行
分類エージェントがタスクの種類を判定し、それに応じて作業を異なるエージェントや動作にルーティングする。
【2】ファンアウトと統合
タスクを多数の小さなステップに分割し、各ステップでエージェントを実行した後、構造化された出力をマージする。
【3】敵対的検証
生成された各エージェントに対し、別のエージェントが特定の基準に照らして出力を敵対的に検証する。
【4】生成とフィルタリング
多数のアイデアを生成した上で、評価や検証によってフィルタリングし、重複を除去して、最高品質の結果を返す。
【5】トーナメント
同じタスクに異なるアプローチで挑むN個のエージェントを生成し、勝者が決まるまで、判定エージェントが結果を一対比較で評価する。
【6】完了するまでループ
作業量が不明なタスクでは、決まった回数のパスを実行するのではなく、停止条件が満たされるまでエージェントの生成を繰り返す。
動的ワークフローの主なユースケース
Anthropicは、動的ワークフローの主なユースケースとして以下を挙げている。ワークフローは非技術的な作業において、さらに有用な場合もあると指摘している。
移行とリファクタリング
JavaScriptランタイムの「Bun」は、ワークフローを使って「Zig」から「Rust」に書き直された。こうした移行やリファクタリングで重要なのは、呼び出し箇所やモジュールといった単位にタスクを分解し、ワークツリー内で修正ごとにサブエージェントを生成し、別のエージェントに変更を敵対的にレビューさせてからマージすることだ。
ディープリサーチ
Claude Codeの「/deep-research」(詳細調査)スキルは、動的ワークフローを使用している。Web検索をファンアウトし、ソースを取得し、その主張を敵対的に検証し、出典付きのレポートに統合するというものだ。
詳細検証
1つのエージェントがレポート内の全ての事実主張を特定し、サブエージェントが各主張を詳細にチェックする。
大規模ソート
1000件を超える項目を1つのプロンプトでソートすると、品質が低下するため、一対比較を繰り返すトーナメント方式や、並列のバケットランク付けを使用する。
ルール順守
Claudeが見落としがちなルールごとに、検証エージェントを一つずつ割り当てる。逆方向の活用も可能であり、繰り返している修正を過去のセッションから抽出し、「CLAUDE.md」のルールへと蒸留できる。
根本原因調査
例えば、デバッグにおいて、エージェントがログ、ファイル、データといった互いに重ならない証拠から仮説を生成し、各仮説を検証者と反証者の討議にかける。このアプローチは、売り上げ減少の理由など、コーディング以外の事後分析にも適用できる。
大規模トリアージ
バックログの各項目を分類し、既存の追跡内容との重複を除去した上で、適切なアクションを実行する。「検疫」パターンでは、信頼できない公開コンテンツを読み取るエージェントに対し、高い権限を必要とするアクションを禁止する。
これらの他、感性や好みに基づいて、特定の評価基準を用いて行う探索(デザインやネーミングのような)や、特定のタスクに対する軽量な評価、想定されるタスクの複雑さに応じたモデルのルーティングといったユースケースも挙げられている。
注意点と活用のヒント
動的ワークフローは、全てのタスクに必要なわけではない。多くの場合、より多くのトークンを消費するので、複雑で価値の高いタスクに適している。
Anthropicは、通常のコーディングタスクには動的ワークフローの使用を推奨しておらず、動的ワークフローは、従来とは異なる方法でClaude Codeの可能性を引き出すために、創造的に活用するのがベストだと述べている。
さらに実践的なヒントとして以下を挙げている。
- 前述のワークフローパターンを踏まえ、詳細にプロンプトを記述する
- 小規模な作業には「クイックワークフロー」を使用するよう指示する
- 繰り返し実行できるワークフローを使用する場合、定期的に実行するには「/loop」と組み合わせ、完了の厳格な要件を設定するには「/goal」と組み合わせる
- 「1万トークンを使う」のように、明示的なトークン使用量上限を設定する
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「最新モデルの最強補完」は終わってる――VS Codeが「コーディングハーネス」に最も開発工数を注ぐ意味
Microsoftは、VS Codeの「GitHub Copilot」を支える「コーディングハーネス」の構造と評価手法を公式ブログで解説した。モデル選定よりも、コンテキスト構築やツール公開、エージェントループの設計こそがエージェント体験の品質を決めるとしている。
AIコーディングの「ループ」4種類を完全入門 Anthropic公式が分かりやすく整理して解説
Anthropicが、Claude Codeにおける「ループ」を4種類に整理して解説した。AIコーディングで何をAIに任せ、どこで止めるべきかを、初心者にも分かるようにかみ砕き、筆者なりの視点も添えて紹介する。
「Claude Codeでトークン浪費」の原因 Anthropicが明かす「サブエージェント」5つの使い所と止め所
Anthropicは、同社のCLI型AIコーディングツール「Claude Code」のサブエージェントにおけるベストプラクティスやアンチパターンなどを解説したブログ記事を公開した。
「100万トークンはAIのコンテキストを腐らせる」 Claude Codeを賢く保つ5つの選択肢と使い分け方
Anthropicはエージェント型コーディングツール「Claude Code」のセッション管理とコンテキストウィンドウ管理について解説した。100万トークンのコンテキストウィンドウを活用しつつ、5つの選択肢を使い分けることが作業結果を大きく左右するとしている。
「CやJavaはAIが苦手な言語」 Claude Codeを大規模レガシーコードで生かす3つの成功パターンとハーネス
Anthropicは公式ブログで、エージェント型コーディングツール「Claude Code」を大規模なコードベースに導入した事例の調査、分析を基に、成功事例に共通するベストプラクティスを紹介した。






