「5年ごとのサーバ更改」から脱却 ヤナセが約70台をAWSへ、どう移行した?:データセンター契約満了を機にクラウド移行
ヤナセは、オンプレミスで稼働していた約70台のサーバを「Amazon Web Services」(AWS)へ移行した。5年ごとに繰り返してきたサーバ更改から脱却した。移行をどう進めたのか。
輸入車販売を手掛けるヤナセは、データセンターで稼働していた約160台のサーバのうち、クラウド化が可能な約70台を「Amazon Web Services」(AWS)へ移行した。
背景にあったのが、約5年ごとに繰り返してきたサーバ更改からの脱却だ。ヤナセはなぜ従来のインフラ運用を見直し、どのように約70台のサーバをAWSへ移行したのか。
「5年ごとのサーバ更改」から脱却へ クラウド移行をどう進めた?
クラウド移行のきっかけとなったのは、2025年末に迎えるデータセンターの契約満了だった。
ヤナセは従来、データセンター事業者にインフラの運用業務を委託し、約5年ごとにサーバを更改してきた。しかし、セキュリティ要件が高度化し、ソフトウェアの更新サイクルも短くなる中、5年ごとのハードウェア更改を前提とした運用では柔軟な対応が難しくなっていた。そこで、サーバの定期的な更改から脱却し、必要に応じて柔軟に更新できるインフラへの移行を検討した。
新たなインフラには、「Oracle Database」のライセンス対応や市場シェアなどを考慮してAWSを採用した。AWSへの移行や運用監視、コスト最適化などを支援する事業者としてサーバーワークスを選定した。
「全社停止できるのは年始だけ」
プロジェクトでは、約160台のサーバのうち、クラウド化が可能な約70台をAWSへの移行対象とした。
初期段階では「AWS Organizations」を使った統合管理基盤や運用監視の仕組みを整備。専用線による接続サービス「AWS Direct Connect」を使ったオンプレミス環境との接続や、セキュリティなどの共通基盤を構築した。
アプリケーション基盤には、負荷分散を担う「Application Load Balancer」(ALB)、仮想サーバサービス「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)、リレーショナルデータベースサービス「Amazon Relational Database Service」(Amazon RDS)による3層構造を採用した。インターネットからのアクセスに対しては、Webアプリケーションを攻撃から保護する「AWS WAF」を適用した。
アプリケーションの移行は2025年10月から段階的に進めた。ヤナセではブランドや拠点によって営業日が異なり、全社的にシステムを停止できるタイミングが年始に限られていた。このため、業務への影響を抑えるために疎結合なシステムから先行して移行し、最後まで停止できなかったシステムを年末年始に切り替えた。
移行に当たって課題の一つとなったのが、システム間の通信要件の整理だ。既存環境では複数のアプリケーションが密接に連携していたため、ログ解析などを実施して通信要件を洗い出し、必要な通信だけを許可するように定義した。
ヤナセは伊藤忠商事グループの情報セキュリティ基準への準拠を目指しており、今回の移行を機に通信制限を強化した。その結果、開発やテストの過程では実際の利用状況に合わせた通信ルールの追加や見直しが多数発生したという。
5年間の総コストを削減、オンプレミスでは見えなかった情報も可視化
AWSへの移行から約半年が経過した時点で、新たなインフラ基盤は安定して稼働しているという。サーバーワークスが24時間365日体制で監視し、継続的な最適化を進めている。
AWSへの移行によって、オンプレミス環境では把握できなかった情報も可視化できるようになった。ヤナセは今後、パフォーマンス分析や障害解析を自社内でより迅速に実施できるようになると見込む。
コスト面では、インフラの5年間の総コストをオンプレミス時代より削減できる見通しが立った。また、伊藤忠商事グループの情報セキュリティ基準への準拠も実現したという。
残るサーバも段階的に移行、将来は「フルクラウド化」へ
今回AWSに移行したのは、ヤナセが運用する全サーバの約半分だ。同社は今後、データセンターに残るサーバについてもシステムの更新に合わせて段階的にクラウドへ移行する。
並行して、既存のAWS環境についても運用やコストの最適化を進める。5年ごとのサーバ更改を前提としたインフラ運用から転換し、将来的にはフルクラウド化を目指すとしている。
サーバーワークスが2026年8月25日、本事例を発表した。
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