社内サービスにもSREが必須の時代へ その理由とは:Gartner Insights Pickup(460)
「システムを稼働させ続けること」に重点を置いた従来のIT運用では、もはや不十分だ。Gartnerは、SREを全社的に導入する企業の割合は、2024年の30%から2028年には80%へと急拡大すると予測している。本稿では、このSRE導入の急増が単なる一過性のトレンドではなく、企業のイノベーション推進やDEXの向上において不可欠である理由を解説するとともに、SREを活用した運用への5つのステップを紹介する。
AI(人工知能)への取り組みが企業戦略の中核となる中、これらの取り組みを支える運用基盤も進化しなければならない。
ITリーダーは、社内サービスをモダナイズするとともに、従業員と組織全体がAIを活用できるようにすることを求められている。そのための課題は、ITチームが創造力を発揮してこうした変革を進められる体制を作ることだ。
Gartnerは、社内サービスを含めてSRE(Site Reliability Engineering)を全社的に導入済みの企業が全体に占める割合は、2028年までに80%に達すると予測している。この割合は2024年には30%にとどまっていた。SREのこうした急速な導入拡大は、単なるトレンドではない。ますますデジタル化が進む世界で製品設計、運用効率、従業員エクスペリエンスの最適化を目指す企業にとって、戦略的に不可欠だ。
変革の必要性
「システムを稼働させ続けること」に重点を置いた従来のIT運用では、もはや不十分だ。このレガシーアプローチは、過剰なリソース消費につながり、しばしば従業員に不満を抱かせ、AIが約束するイノベーションそのものを阻害する。
SREの原則の導入は、変革の機会をもたらす。手作業による介入を自動化し、反復的な雑務を最小限に抑えることで、企業は貴重なITスタッフの時間を、長期的な価値を生み出し、インパクトの大きいエンジニアリングプロジェクトに振り向けられる。
だが、そうはならず、表面的な変化にとどまるリスクも現実にある。運用チームを「SRE」チームと改称するだけで、業務範囲や権限、文化を根本的に変えなければ、失望を招き、デジタル従業員エクスペリエンス(DEX)を低下させてしまう。真のSRE導入にはプロセスや指標、考え方を包含する全体的な変革が求められる。
運用のモダナイゼーションに向けた主要な取り組み
企業は運用をモダナイズするため、SREの原則に根ざした幾つかの主要な取り組みをする必要がある。まず、手作業や受動的な業務に費やす時間をチームのキャパシティーの半分以下に抑え、雑務を積極的に管理することが不可欠だ。
残りの時間は、将来のタスクの自動化やシステムアーキテクチャの改善、DEXの向上につながるエンジニアリングプロジェクトに充てるべきだ。いわゆる「50/50ルール」により、運用キャパシティーがビジネスの需要に合わせて進化していくことが保証される。
さらに、エラーバジェット(予算)を用いて速度を管理することで、企業はデータに基づいて安定性とスピードのどちらを優先すべきかを判断できる。チームは、信頼性目標が達成されている限り、新機能やアップデートの展開を奨励される。だが、エラーバジェットを使い果たしたら、その先へ進む前に、環境の安定化に焦点を移さなければならない。
システム思考を取り入れることも極めて重要だ。現代のデジタルワークプレースはデバイスやアプリケーション、ネットワーク、ユーザーからなる複雑なエコシステムで構成されているからだ。信頼性は、個々のコンポーネントレベルだけでなく、この相互接続された環境全体にわたって設計する必要がある。
このアプローチでは、デジタルワークプレースの運用をソフトウェアエンジニアリング上の課題として捉え、可能な限り、コードとしてのインフラストラクチャ(IaC)やバージョン管理されたプロセスを利用する必要がある。
さらに、持続的なイノベーションとレジリエンスには非難しない文化の醸成が不可欠だ。インシデントを個人の失敗ではなく、システム全体の改善機会と捉える企業の方が、成功する可能性が高い。常に、根本原因分析は責任の追及ではなく、技術的な解決につなげる必要がある。
AIによる予測に基づいて信頼性を確保すれば、SREの取り組みが大きく加速する。AIは予測型キャパシティープランニング、インテリジェントアラート、自動修復を可能にするからだ。AI駆動型SREツールを展開することで、企業はアラートのノイズを低減し、インフラのニーズを予測し、ユーザーに影響が及ぶ前にインシデントを未然に防止できるようにITチームを支援できる。
よくある落とし穴の回避
企業は「名ばかりのSRE」を避ける必要がある。役割や責任、プロセスが本当に変わらなければ、SREのメリットは見えてこない。欠陥のあるプロセスを自動化したり、SREの文化的基盤を軽視したりすれば、信頼性と従業員の信頼を損なう恐れがある。事後対応的な“消火”ではなく、先を見据えた改善を標準とすることが不可欠だ。
SREを活用した運用への5つのステップ
1.運用をエンジニアリングとして扱う
手作業による修正から脱却し、コードベースの構成管理と修復を取り入れる。全ての構成とプロセスを文書化し、バージョン管理する。
2.雑務を排除する
自動化を優先し、エンジニアリングリソースを解放する。プロセスが絶えず手作業の介入を必要とする場合は、自律的に機能するよう再設計する。
3.従業員エクスペリエンスに焦点を当てる
信頼性の目標を実際のユーザー成果と整合させる。重要な指標を測定する。例えば、ユーザーが不満を感じている場合、システムのアップタイム(稼働時間)だけでは不十分だ。
4.スピードと安定性のバランスを取る
エラーバジェットを活用し、新機能の展開と信頼性の維持とのトレードオフを動的に管理する。
5.AIを活用したSREを導入する
AIを運用ワークフローに統合し、受動的な自動化から予測的、予防的な運用へと移行する。
デジタルワークプレース運用の未来は、受動的なサポートではなく、能動的なエンジニアリングにある。AIに支えられたSREが、運用効率と従業員満足度を高め、自社のAIへの取り組みの可能性を最大限に引き出す鍵となる。この変革を受け入れる組織こそ、AI主導の時代にイノベーションを起こし、適応し、成功することができる。
出典:Site Reliability Engineering for the Future of AI-Driven Digital Workplaces(Gartner)
※この記事は、2026年6月に執筆されたものです。
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