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第314回 投資家注目のキーワード「光電融合」とは? パッケージ内混載からワンチップ化への道筋頭脳放談

AI向け先端半導体のトレンドとして急浮上する「光電融合」。通信分野から始まった光技術による電気の置き換えは、いまやチップ直近の数ミリ、数マイクロメートルの領域に迫る。本稿では、光派と電気派の姿勢の違いや技術的進化史をひもときつつ、パッケージ内混載の最前線と端末普及への現実的な壁について解説する。

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投資家注目のキーワード「光電融合」とは?
投資家注目のキーワード「光電融合」とは?
AI向け先端半導体のトレンドとして急浮上する「光電融合」。通信分野から始まった光技術による電気の置き換えは、いまやチップ直近の数ミリ、数マイクロメートルの領域に迫る。本稿では、光派と電気派の姿勢の違いや技術的進化史をひもときつつ、パッケージ内混載の最前線と端末普及への現実的な壁について解説する。写真はNVIDIAのTechnical Blog「A New Era in Data Center Networking with NVIDIA Silicon Photonics-based Network Switching」より。

 最近、半導体の新製品の発表というと「光電融合」へのロードマップ的なものが併記されていることが増えている。「光電融合」がいよいよ盛り上がりを見せているようだ。ただ、筆者の経験から言わせてもらうと、関係者にも「光側」の人々と「電気側」の人々がおり、イケイケどんどんという感じで積極的なのは「光側」、技術が固まったらね、という少し保守的なスタンスなのは「電気側」の人が多いと感じる。

 これは筆者の勝手な意見だが、既に市場を持っている電気側とこれから市場を喰いに行く光側のスタンスの違いといってしまえばそれまでだ。今どきAI(人工知能)関係の先端半導体製品で「光電融合への取り組みがない」などと言えば、アナリスト的にもマズい。「先を見ていない」と評価されて、投資が滞る可能性すらあるのではないかと思う。まさに今のトレンドであり、そういう意味でも各社取り組まざるを得ないのが現状だろう。

数kmから数μmへ――半導体チップへと近づく「光」の距離

 最近の「光電融合」というと中核部品であるCPUとGPU、ASICなどと外界を光(ファイバー)で直結するというイメージである。現状の多くの実装では、中核部品の周辺に光とのインタフェースを担う小ボードを搭載し、ボード上で接続している。

 小ボード上の中核をなすのはレーザー光源、変復調器、そしてフォトディテクタ(受光素子)などである。小ボードには古典的な8b10b(高速シリアルインタフェースに用いられる符号化方式で8ビットのデータを10ビットのシンボルに変換して伝送する)に代表されるようなSerDes(シリアライザ/デシリアライザ)といわれる直並列変換回路も入っている。わずかにオーバーヘッドはあるが(8b10bでは2割)、信号からクロック再生がしやすく、「1」や「0」の連なりを避けて、データの始まりを信号に載せられる。これは電気の時代からのレガシーな技術ではあるが、極めて合理的だ。

 このパラレルな電気信号を光シリアルで入出力することで外部の配線を大幅に削減できる点も利点の1つといえる。

 直近の開発の焦点は、パッケージ内に中核部品と光インタフェースを混載する「CPO(Co-Packaged Optics)」と呼ばれる技術により、チップとインタフェース回路間の「距離」を短縮するという方向性にある。その状態では外からはワンチップに見えるはずだ。本当のワンチップはまだまだその先の話だが、最近流行のハイテクパッケージング技術の見せどころでもある。

 なお「光」が最近になって電気系を置き換えているという認識は正しくない。何十年も前から虎視眈々(こしたんたん)と電気系の置き換えを狙ってきたのだ。光技術は、演算とか記憶とか「光系」が不得意な分野を避け、まずは得意とする通信という「遠方」から徐々に中核部品への距離を詰めてきたのだ。今やその距離は数mmあるいは数μmである。

 みなさんの記憶にあるかどうか不明だが、1990年代に「FTTH(Fiber To The Home)」という言葉が一世を風靡した。今では忘れている人の方が多いかもしれないが、これこそ一般向けに光接続が登場した嚆矢(こうし)と言えよう。

 電話局と家庭の間の数kmから十数kmくらいを光ファイバーで結んだわけだ。電気系からもADSLなどという技術が登場し、ファイバーなしのメタル回線のままで「似たような高速」通信を実現したが、結果的には一時的なアダ花で終わったと認識している。家庭の条件により、速かったり遅かったり、電気系では同じ品質を確保するのが不可能だったためだ。電気信号の配線には「寄生素子」など目に見えない阻害要因が多く、長くなった配線はノイズを拾うアンテナにもなってしまう。長距離伝送においては、そうした問題のない光ファイバーが圧倒的に有利であり、それが現在のインフラへとつながっている。

パッケージ内混載からワンチップ化へ、そして端末普及の壁

 その後、データセンターやスーパーコンピュータの勃興に伴い、光技術はより短い距離にも応用を見いだした。イーサネット(より高速な技術が現在主流だが)に代表される「ローカル」なネットワーク(数十m〜数百mくらい)の距離を電気でなく光で接続する用途である。

 初期は電気的なネットワークコネクターの先に電気/光変換の小さな部品を介して光ファイバーで接続していた。当時のサーバからすると物理層が光でも電気でも同じように扱えたはずだ。

 表側ではLEDがチカチカと点滅してスッキリと見えるサーバラックも、裏側では大量のケーブル類がトグロを巻いているような光景だったが、光ファイバー化で多少はスッキリしたと思う。

 筆者の認識では、その延長上に今がある。ネットワークコネクター(電気)の先にある電気/光変換器がコネクターの内側に取り込まれ、ついには中核半導体部品のすぐ横に設置された。その理由の一つが「消費電力」にある。電気系ではスイッチング速度が高速なほど、信号線路もその動作が高速なほど、また伝送距離が長いほど電気を多く消費する。光電変換もスイッチングで電気を消費するが、小さな場所に収めてしまえば実は電気よりも光の方が高速で効率がよいのだ(ただし、中核半導体部品は発熱量が大きいものが多いので、それに対する温度制御などの配慮は不可欠となる)。

 そして、より高速な伝送が可能になるほど、現代的なサーバやスーパーコンピュータの性能は向上する。もはや「光にしない手はない」状態なのだ。

 このペースで真のGPUやCPUとのワンチップ化に進むかというと、ちょっと待てよという感じもある。個別の部品をパッケージ内で接続すれば、取りあえずの目的は果たせる。難易度の高いワンチップ化は、筆者の目から見るとまだまだ先の話という認識なのだが、保守派の戯れ言だろうか。

 また光電融合がサーバから端末側に降りて来るかというと、これまた疑問だ。オフィスも家庭も、いまや無線(Wi-Fiなど)が牛耳っている世界である。サーバほど高速大容量な接続が必要とされるケースは少ないだろう。

 だいたい光ファイバーは曲がると折れやすい繊細な材料だ。USBケーブルのようなメタル線でも頻繁に断線させている人が多い一般環境で、抜いたり差したりする用途に使ったら目も当てられない事態になる。一般向けには物理的な配線はない方がよいのだ。

筆者紹介

Massa POP Izumida

日本では数少ないx86プロセッサのアーキテクト。某米国半導体メーカーで8bitと16bitの、日本のベンチャー企業でx86互換プロセッサの設計に従事する。その後、出版社の半導体事業部などを経て、現在は某半導体メーカーでヘテロジニアス マルチコアプロセッサを中心とした開発を行っている。


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