Database Watch 7月版 Page 1/2
DB2とHiRDBが相次いで新バージョンを発表
加山恵美
2006/7/20
暑くなってきました。今月はついにIBM DB2の新バージョンが発表になりました。次世代のハイブリットなXMLデータベースという特徴が前面に出ています。ほかにも日立がHiRDBの新バージョンをリリースしました。
■ついに発表、DB2 9
7月に入って方々で七夕の飾りを見ました。短冊の願いごとには微笑ましいものから苦笑いしてしまうものまで、いろいろと書かれてありました。それぞれ多様な思いを抱えて生きているのだなあと興味深く見ていました。
さて今年の七夕の日にはIBMがDB2の次バージョン「DB2 9」を発表しました。これまでコードネームでViperと呼ばれていたものです。出荷は9月22日から、ダウンロード版なら7月28日からとなります。利用料金は以下のとおりです。
製品名 | 利用料金(税別) | |
DB2 Personal | 5万2600円 | |
DB2 Express | Authorized User | 1万8900円 |
Processor | 55万5700円 | |
DB2 WSE(Workgroup Server Edition) | Authorized User | 3万9900円 |
Processor | 114万円 | |
DB2 ESE(Enterprise Server Edition) | Authorized User | 10万7000円 |
Processor | 415万円 | |
表 DB2 9の価格(IBMのプレス発表より) IBMのソフトウェアのボリューム・ディスカウント「パスポート・アドバンテージ」(PA)のPAX料金を適用した場合のライセンス料金(1年間のバージョンアップ、保守料金を含む)。 |
■これまでのRDBMSでXMLを使うには
IBMはDB2 9を「業界初、第3世代のデータベース」とうたっています。XMLデータベースとの融合で大きく前進した新世代のRDBMSであり、XMLデータベースの機能や役割を包含した新しいRDBMSとなっています。あらためてXMLデータベースとRDBMSの関係を見直してみましょう。
Database Watch 5月版でも触れましたが、基本的にXMLはデータがツリー形式であり、RDBMSはデータが表形式となっているという大きな違いがあります。XMLデータのツリー構造をそのまま蓄積して管理できるデータベースのことを、RDBMSとは別にネイティブXMLデータベースと呼んでいます。
RDBMSでXMLのデータを扱うとなると少し工夫が必要です。1つは列にXMLのツリーをそのまま格納する方法と、もう1つはXMLのデータを裁断して必要な情報を表に収める方法です。前者はCLOB型という列に収めることとなり、後者はシュレッディングしてから表に収めます。これまでのRDBMSはいずれかの方法でXMLをRDBMSに取り込んでおり、どちらにも対応可能だと「ハイブリッドなXMLデータベース」と呼んでいました。
しかしCLOB型に格納する方法だとデータが検索しにくく、シュレッディングする方法だとXMLデータはツリーではなくなりXMLデータに復元しにくくなります。実際にはXMLデータをそのまま格納してRDBMSで管理したいという要望もありながら、システムの用途に合わせてどちらかを選ばざるを得ないのが実情でした。
■CLOB型でもシュレッディングでもない
DB2 9では新しい方法が可能となりました。「XMLデータの融合」と主張している部分では、従来のようにCLOB型の列に収めるのではなく、シュレッディングでデータを表にマップするのでもありません。XMLデータをそのままRDBMSに格納できます。しかし繰り返しになりますがCLOB型の列に収めるのではないのです。代わりにXML用のデータ型が用意されています。
そのためXMLのデータをツリー形式のまま格納しながらも、RDBMSとして扱えてしまうのです。データをツリーのXMLとしてXQueryでアクセスできますし、同時に表のRDBとしてSQLでアクセスすることができます。XQueryもSQLも両方使えるという点も特徴的です。
ちなみにXQueryはXMLの検索のための技術で、W3Cで長く開発を続けていますがあと一歩というところで勧告まで到達していません。2006年7月時点でも勧告候補です。そのためXMLに対応した製品でもXQueryを実装するものは少なく、あったとしても内部的にはSQLに翻訳してから処理するというような形で実装していたようです。そうした中、本格的にXQueryを実装したRDBMSとしてもDB2 9はXML機能で先進的です。
■データの圧縮、セキュリティの強化
DB2 9ではXMLをそのまま格納しつつもRDBMSとして扱うように最適化しているため、従来のCLOB型の格納に比べて検索速度は格段に速く、またシュレッディングでの格納と比べて取り込みの時間も高速化が実現できるようになっています。またデータを行単位で圧縮して格納するためリソースも少なくて済み、パフォーマンス面でも管理面でも良い効果をもたらすことが期待できます。
さらにセキュリティ面も強化しています。LBAC(Label-Based Access Control)というアクセス権の制御を行う機能を搭載し、行や列単位でアクセス制御を行えるようになっています。
DB2 9の詳細については「Information On Demand Conference」でも基調講演で取り上げることになっています。いよいよヘビが活動を開始しました。今後どうなるか楽しみですね。
- Information On Demand Conference
2006年7月21日(東京・六本木アカデミーヒルズ49)
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連載 Database Watch 7月版 DB2とHiRDBが相次いで新バージョンを発表 |
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1 ・ついに発表、DB2 9(コードネーム:Viper) ・これまでのRDBMSでXMLを使うには ・CLOB型でもシュレッディングでもない ・データの圧縮、セキュリティの強化 |
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Page 2 ・国産データベース、HiRDBはVersion 8へ ・マイクロソフト「Oracle マイグレーション ラボ」開設 ・Oracle Secure Backupダウンロード開始 ・Firebird はRC3をテスト中 ・セキュリティのコンソーシアム |
Database Watch |
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