Database Watch 1月版 Page 2/2
基幹データベースだってオープンソースが常識
加山恵美
2007/1/19
■エンタープライズ向けMySQL
もう1つの代表的なオープンソースRDBMSにMySQLがあります。最新版はMySQL 5.0で2005年10月にリリースされました。現在は5.1ベータを開発中です。2006年のMySQLに関する話題としては、エンタープライズ版という新しい系統が登場したことでしょう。
2006年10月の発表によると、MySQLは有料で各種サポートが可能となる企業向けMySQL Enterpriseと、従来のGPLライセンスで提供されるMySQL Community Serverという2系統に分かれることになりました。新登場のMySQL Enterpriseでは性能やセキュリティ、年中無休のサポートもありますが、売りとなるのはGUIの管理画面ではないでしょうか。
管理画面ではネットワークやシステム負荷の現状などがグラフになって表示され、各種アラートなどがアイコンで表示されます。こうしたグラフィカルな画面により管理者は稼働中のシステムに起きた、または起きそうな問題をいち早く的確に把握することができます。
画面 MySQL Administratorの「Single View Dynamic Health Monitoring」 (MySQL公式サイトより転載。画面をクリックすると拡大します) |
2007年中にはMySQL 5.1が正式版になると期待しています。特に今後エンタープライズ版でどのような機能強化が進むか興味深いところです。それからエンタープライズ版とコミュニティ版という2系統に分かれたことが、ほかのオープンソースRDBMSに影響を及ぼすかどうかも気になるところです。
■夏にはDB2とHiRDBがバージョンアップ
2006年夏には商用RDBMSのバージョンアップのニュースが続きました。6月には日立のHiRDB 8、7月にはIBM DB2 9が発表となりました。HiRDB 8では高可用性のほかにもSOAやセキュリティが強化されました。DB2 9は「次世代のハイブリットなXMLデータベース」と呼ばれています。
DB2 9について少し復習しましょう。近年のRDBMSではXML機能の強化に力が入っています。RDBMSでXMLデータを取り入れる場合には2通りあり、1つはXMLデータをシュレッディング(2次元の表に分解)してRDBMSに取り込む方法、もう1つはCLOB型という列にXML文書ごと格納します。前者はXMLが利用可能なデータベースであり、後者はハイブリットなXMLデータベースと区別していました。
ところが、DB2 9はどちらでもありません。強いていえば後者ですが、XML文書はCLOB型ではなくXML用のデータ型に格納されることでSQLとXQueryの両方を扱えるようになっています。DB2 9は従来どおりのRDBMSの機能を持ちながら、同時にネイティブのXMLデータベースのように扱えます。それが「新世代のハイブリッドなXMLデータベース」と呼ばれるゆえんです。
■2006年はXMLデータベースが復興を始めた年
DB2 9が発表された昨夏以降からでしょうか。XMLコンソーシアムでXMLDB勉強会が発足するなど、じわじわとXMLデータベース周辺が盛り上がってきました。なお、近々XMLコンソーシアムはXMLデータベースの事例紹介セミナーを開催します。
- XMLコンソーシアムセミナー−XMLDB事例紹介
日時:2007年1月23日(火)13:30〜17:30
場所:日立システムアンドサービス品川本社(東京)
筆者の個人的な印象ですが、2006年のデータベースに関してはXMLデータベースが復興した年と感じています。ただDB2 9が2006年のXMLデータベース復興をけん引したかというと、そうとはいい切れないと思います。DB2 9には確かにハイブリットなXMLデータベースの先駆けとしてインパクトはありましたが、XMLデータベースを利用したいという機運が熟し、相乗効果が起きたのではないかと考えています。これまでのXMLの普及と実践の努力が重なり、必要性と実用性など何かが臨界点を越えたかのようです。
例えばシステムが扱うデータでXMLが増えたことが挙げられます。データ交換するだけで役目を終えるデータから蓄積するデータにもXMLが増え、データをXMLのままデータベースに格納する必要性が高まってきました。そこでXMLデータベースの必要性が生まれます。
とはいえ、これまでもXMLデータベース製品は存在していました。ただしツリー構造を持つXMLのデータは、テーブル構造が基本のRDBMSに格納するには少しひねりが必要です。加えて期待する性能を引き出すのが簡単ではありませんでした。しかし2006年は各社の研究が実を結ぶようになった年ではないかと感じます。
■ネイティブXMLデータベースは年末に続々出荷
ネイティブのXMLデータベース製品では、2006年末にニュースが続きました。2006年11月28日には東芝ソリューションがTX1 V2の販売を開始し、同年12月25日からサイバーテックがCyber Luxeon Ver 2.0の出荷を開始しました。
加えて2006年12月15日には富士通が大規模XMLデータベース専用機「Shunsaku Engine」の販売を開始したと発表しました。これまでも富士通では純国産のInterstage Shunsaku Data ManagerというXMLデータベース型データベースエンジンがありましたが、このソフトウェアの専用機として販売するのがShunsaku Engineです。ライフサイエンス分野をはじめとしてデータが大規模となる環境を想定し、それに耐えられる性能や信頼性を追求したものです。
2007年はどんな年になるでしょうか。個人的には2006年から始まったXMLデータベースの動きがさらに活発化し、現場への導入が広がるのではないかと予想しています。それ以外にも、夏ごろに予定されているOracle Database 11gもとても気になります。
ではまた来月、お会いしましょう。
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連載 Database Watch 1月版 基幹データベースだってオープンソースが常識 |
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Page
1 ・エンタープライズ向けに近づいたPostgreSQL 8.2 ・Firebird 2.0の機能と今後の予定 |
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Page 2 ・エンタープライズ向けMySQL ・夏にはDB2とHiRDBがバージョンアップ ・2006年はXMLデータベースが復興を始めた年 ・ネイティブXMLデータベースは年末に続々出荷 |
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