Database Watch 3月版 Page 2/2
PostgreSQLをWindowsでブンブン走らす裏技
加山恵美
2007/3/9
■WindowsにフォーカスしたPostgreSQLセミナー
2月24日に開催された「PostgreSQL技術セミナー2007春」では、PostgreSQLのWindows対応に重点を置いたセッションが多く見受けられました。中でもコミュニティでWindows対応に詳しいMagnus Hagander氏がスウェーデンから来日し、Windows版のPostgreSQLについて解説しました。Hagander氏はWindowsプラットフォームで使うPostgreSQLは「すばらしき新世界」と述べていました。開拓者の心境で開発に臨んでいるようです。
Hagander氏は「そもそも、なぜWindowsでPostgreSQLを使うのか?」というテーマから切り出しました。コミュニティでもよく直面する問いなのかもしれません。この問いには2通りの意図が考えられます。1つは「だってLinuxの方がいいでしょ」という観点からの疑問です。これについては「しばしば、それは正しいです。でも常にそうとは限りません」と同氏。簡潔ですが実に的確な答えです。いかにこれまで考え抜いてきたかが推し量られます。
もう1つは「どんな時に使うの?」というメリットを探る疑問です。これに同氏はいくつかシナリオを提示しました。開発者が日常的に使うパソコンで手軽に使えるようにするため、プラットフォームをFreeBSDからWindows環境に移行する場合にも利用可能とするため、会社や組織の方針でWindowsプラットフォームを使うのが必須な場合でも利用可能とするためなどです。
■Windows版のPostgreSQLで知っておくべきこと
次にWindows版のPostgreSQLについて把握しておくべきポイントが提示されました。「マルチスレッドではなくマルチプロセスです。FATは利用不可、Windowsのバージョンは2000以降である必要があります。また(Windowsユーザーにはなじみが薄いかもしれませんが)コマンドラインを使います。設定に関してはレジストリを使うことはなく、テキストベースのファイルをメモ帳などで編集します」など、PostgreSQLがUNIXから継承していることを考えれば自明のことかもしれませんが、念頭におくべきでしょう。
一方、Windows版ならではの違いもあります。まずPostgreSQLがサービスとして稼働すること、ログがファイルではなくイベントログに書き込まれることなどです。
推奨事項もあります。インストール時には標準のインストーラーを使うのが確実だそうです。もしPerlやPythonなど外部言語を使うならPATHに書き込む必要があります。細かいことですが、実践では重要な注意事項です。
加えてHagander氏が特に強調したのは運用管理に使用するOSツールについてです。「適切なツールを使ってください。今日のセッションで持ち帰るべきメモはこれです」と、Microsoft TechNetの「Windows Sysinternals」のURLを指し示していました。特にProcess Explorer、PsTools、Process MonitorはWindows環境でPostgreSQLを使用するときには強力なツールとなるそうです。運用中はこれらのツールを用いて
- プロセス数
- ページ数/秒
- メモリ消費
- I/O操作数/秒
- I/Oバイト数/秒
- 物理ディスクキューの長さ
を注視すると稼働状況の把握に役立つとのことです。
■次期バージョンは2007年夏に登場か
最後に会場から「Windows版とLinux版ではパフォーマンスに差はありますか?」と鋭い質問がありました。Hagander氏は「Windows版の方が遅くなります。5〜50%ほどです」と回答しました。その理由として「PostgreSQLはもともとUNIX環境で開発され、その環境下で最適化されているからです」と述べました。これはPostgreSQLの方針でもあるようです。「この方針を変更することはありませんが、ただWindows版のパフォーマンスをLinux版に近づける努力はしていきます」と話していました。
なおセミナー会場で日本PostgreSQLユーザ会の方に聞いたところ、次のバージョンがすでに着々と準備中だそうです。近くフィーチャーフリーズ(次のバージョンに盛り込む機能を確定)し、それから開発を一気に進めます。リリースは夏ごろを予定しているそうです。ということは、今年の夏にはPostgreSQL 8.3がお目見えすることになりそうです。
まだフィーチャーフリーズしていないのでどんな機能が盛り込まれるかは未定です。とはいえ、PostgreSQLはSQLなど標準的な機能はほぼ整備されているため、細かな機能追加、運用や性能面の改善項目が多くなるのかもしれません。またHagander氏がいうようにWindows版の性能強化にも目が向けられることと期待できます。
ではまた来月、お会いしましょう。
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