コミュニティ活動で人のリレーションを作ろう!
2009/12/22
JPUG 10年の歩み、そして8.5の新機能
2009年11月20日、日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)はPostgreSQL Conference 2009 Japanを開催しました。カンファレンスの開催は毎年恒例ですが、今回はJPUG 10周年記念となるので特別で、海外からの参加者も迎える堂々とした国際カンファレンスとなりました。2日間で約30セッション、参加者は350名になるなど、盛況に終わりました。
基調講演ではJPUG 理事長 片岡裕生氏がJPUG 10年の歩みを振り返りました。10年前となる1999年ごろ、片岡氏をはじめPostgreSQLのよさに目を付けた仲間たちは「仕事で使いたくても知名度がない」と悩んでいました。当時の日本では、ビジネスで使うデータベースといえば、オラクルなど商用製品が中心で、PostgreSQLはおろかMySQLも含め、オープンソースデータベースはどれも知名度が低かったのです。
そこで片岡氏らは、1999年7月にユーザー会を発足しました。最初の活動はドキュメントなどをまとめたCDを作り、配布すること。「PostgreSQLが市民権を得るように、触ってもらえるように」と願いを込めて、普及活動を始めたそうです。
余談ですが、本家PostgreSQLのマスコットといえばゾウですが、JPUGはカメです。JPUGはかつてマスコットを本家と同じゾウにするか、日本ユーザ会独自のカメにするか悩んだそうです。しかし当時社会は地下鉄サリン事件がまだ記憶に新しく、渦中の宗教団体がゾウの絵をよく使っていたこともあり、最終的にはゾウは敬遠してカメに決まったのだとか。あの事件がなければカメではなくゾウだったかもしれませんね。そんな裏話があったとは意外です。
その後、イベントや書籍など活動を広げ、JPUGはPostgreSQL技術だけではなく組織活動やイベント運営にもノウハウを蓄積するようになりました。2002年にはPostgreSQL Conferenceを開催し、2004年から合宿を実施し、2005年12月には法人登記を申請しNPO法人となりました。
NPO法人は任意団体です。JPUGの公式サイトがクラックされる事件や、社会的に個人情報の取り扱いが厳格化しているという背景もあり、責任の所在をはっきりさせる必要がありました。また、SSL通信のためのサーバ証明書を取得するという切実な目的のためにも、任意団体ではなく法人格を持つ必要性が高まり、法人化を決断したそうです。
そして今年でJPUGは10周年。片岡理事長は「みんなをまとめるのが私の仕事」と話していました。とても頼もしいですね。
もう1つの基調講演では、次期メジャーバージョンとなるPostgreSQL 8.5に実装される予定の新機能が紹介されました。ストリーミングレプリケーション(SR)とホットスタンバイ(HS)です。どちらもまだ開発中です。順調にいけば2010年中ごろに8.5がリリースされる予定です。
これらSRとHSを組み合わせると、シングルマスタとマルチスレーブにおいて参照負荷分散クラスタが実現することになります。前者はNTT OSSセンタの藤井雅雄氏ら、後者はセカンドクアドラントのサイモン・リグス(Simon Riggs)氏らが開発しています。オープンソースらしく、国を超えたコラボレーションとなっていますね。
機能について触れていきましょう。まずはレプリケーションのSRから。いまPostgreSQLでレプリケーションといえば、pgpoolやSlony-Iなど乱立しているのが現状です。このSRはPostgreSQL本体にビルトインの機能となり、PostgreSQLの標準的なレプリケーション機能となりそうです(もちろん既存のレプリケーション製品を利用するのは問題なさそうです)。同期は1つのマスタから複数のスレーブに向けて実行されます。同期モードは「async」や「apply」など4通りのモードがあり、処理の確実性と性能から選べるようになっています。
次のHSはクライアントからスレーブに向けてクエリーを実行する機能です。これまでのウォームスタンバイでは待機サーバがプライマリサーバから操作を引き継ぐ間、参照も更新もできませんでした。HSでは参照が可能となります。8.5、楽しみですね。
ところで藤井氏とリグス氏の講演が終わると、リグス氏から藤井氏へプレゼントが渡されました。一緒に開発をしてくれたお礼だそうです。リグス氏は藤井氏を驚かせるために内緒にしていたのだとか。藤井氏はびっくりしながらも、うれしそうでした。
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