SQL Server 2005 CTPレビュー(DBA編) Page 3/3

お家芸の“使いやすい管理ツール”は期待どおり

株式会社システムインテグレータ
石橋 潤一
2005/9/30

データベースミラーリングによる可用性と拡張性の大幅な向上

 SQL Server 2000での障害に対する可用性向上策として、フェールオーバークラスタリングがありました。フェールオーバークラスタリングはホットスタンバイを実現し、プライマリハードウェアが障害を起こした場合にデータベースサーバをセカンダリハードウェアに自動で移すことにより、障害に対する高可用性を提供しました。しかしながら、マイクロソフト社より認定されたハードウェアを利用する必要があり、またネットワークや各ノード間の距離にも制限があり、決して気軽に利用できるサービスではありませんでした。

 そこで新たに登場したのがデータベースミラーリング技術です。データベースミラーリングは専用のハードウェアを必要とするフェールオーバークラスタリングに対し、標準的なサーバを利用可能であり、フェールオーバークラスタリングと同じく自動化されたフェールオーバーが実現可能です。

 データベースミラーリングは3つのSQL Server(プリンシパル、ミラー、ウィットネス)から構成され、アクティブサーバとなるプリンシパル、プリンシパルと同期するミラー、プリンシパルとミラーを監視するウィットネスから成ります(図4)。

図4 データベースミラーリング
プリンシパルに障害が発生した場合、ウィットネスが直ちに検知しミラーサーバへの切り替えが自動的に行われる。

 プリンシパルに障害が発生した場合、ミラーにフェールオーバーし、ミラーがアプリケーション内のプリンシパルとなります。このプリンシパルからミラーへのフェールオーバーは自動的にほぼ即時に行われ、異常発生時のダウンタイムもごく短いものとなります。また、元プリンシパルサーバが復旧しオンラインになった場合、このサーバはミラーサーバに指定され、プリンシパルサーバからトランザクションログを受け取り、その時点のデータベースの状態に同期します。このように、プリンシパル/ミラーの双方向でデータの受け取りも実現しています。

 信頼性の高い専用のハードウェアを利用し、最大8ノードによるクラスタ構成もサポートしているフェールオーバークラスタリングに対し、可用性という点では一歩譲るデータベースミラーリングですが、フェールオーバークラスタリングを利用できるほどの予算規模や環境を用意できないアプリケーションでは、データベースの可用性対策として1つの解決策となるのではないでしょうか

:マイクロソフト社のサーバーアプリケーション担当シニアバイスプレジデントであるポール・フレスナー(Paul Flessner)氏の9月20日時点でのコメント「SQL Server 2005 Update from Paul Flessner」では、データベースミラーリングについてより広範なテストを必要としており、機能の提供を2006年前半にすると書いている。SQL Server 2005の発売と同時に使えるかどうかは怪しい状況だ。データベースミラーリングはマイクロソフト社自身がデータベース管理新機能のトップ10に挙げていたが、土壇場でSQL Server 2006になったりしないだろうか……。

まとめ

 今回はDBA編ということで、主に管理ツールや可用性に関する技術を取り上げました。SQL Server 2005では、このほかにも大規模なデータの論理的な水平分割格納を実現するデータパーティション(@IT記事「速報! SQL Server 2005のデータパーティション」参照)や、OSQL/ISQLに代わるコマンドラインツールとしてのSQLCMDなど、重要な管理機能の追加や改善が行われており、さまざまな面でDBAの業務を助けることでしょう。

 レビューということで機能の詳しい使い方や応用までは触れませんでしたが、2005年9月16日より最後のプレビュー版であるSQL Server 2005 September CTPが公開されています。無償でダウンロード可能なので、まだ未見の人や新しい機能に興味がある方はぜひ入手して生まれ変わったSQL Serverに触れてみてください。

 ECサイトの大規模化やERPなど業務システムの多機能・複雑化などにより、システムにはより高い可用性、運用性、信頼性が必要となっています。SQL Server 2005は今回のバージョンアップにより、日常の運用から緊急時の対応まであらゆるシーンに耐えることのできるデータベースの理想の姿に一歩近づいたのではないでしょうか。(次回に続く)

筆者プロフィール
石橋潤一
株式会社システムインテグレータ
勤務。Web+DBの業務アプリをメインに開発に携わる。ストアドに涙した日々の経験を基に、今回の執筆を通してSQL CLRの布教を行う予定。著書に『DBマガジン別冊 SQL Server 2005徹底活用ガイド』(翔泳社刊/共著)、『ASP.NET+SQL Server ゼロからはじめるWebアプリケーション』(ソフトバンクパブリッシング刊/共著)。

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 Index
連載:SQL Server 2005 CTPレビュー(DBA編)
お家芸の“使いやすい管理ツール”は期待どおり
  Page 1
・管理ツール群の大幅強化による運用性向上
  Page 2
 −Management Studioにおける開発生産性の向上
 −Integration Services(旧DTS)の刷新
Page 3
・データベースミラーリングによる可用性と拡張性の大幅な向上
・まとめ


SQL Server 2005 CTPレビュー


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