[DB Interview]
Oracle 10gへの移行を決断すべきか?(前編)
@IT編集局
上島 康夫
2005/2/1
Oracle 10g R1が日本市場に投入されてから1年弱。2005年夏にはR2(リリース2)も登場する。「エンタープライズ・グリッド・コンピューティング」を標ぼうした新製品は、ユーザーにどう受け入れられたのか。R2では何が変わるのか。現時点でのOracle 10gを取り巻く最新状況を3回にわたってレポートする。
ORACLE OPENWORLDでOracle 10g 2のプレゼンテーションを行うオラクル社CEO ラリー・エリソン氏 |
Oracle 10gがリリースされた2004年4月より、多くのOracleエンジニアが気にしていたのは、「果たしてOracle 10gへ移行しても大丈夫か」だったはずだ。信頼性と安定度をより強く求められるデータベース製品だけに、新バージョンが出てすぐに移行を決めることには、大きな抵抗感が伴う。「取りあえずR2が出るまでは様子見」という声も少なくない。2004年12月にサンフランシスコで開催されたORACLE OPENWORLDでOracle 10g R2の概要が発表されたのを期に、Oracle 10gの現状とR2での変更点について、日本オラクル マーケティング本部 システム製品マーケティンググループのディレクター 杉崎正之氏、担当マネージャ 根岸徳彰氏にインタビューを行った。
■Oracle 10gへの移行は進んでいるのか
―― 2004年12月のORACLE OPENWORLDでOracle 10g R2の概要が発表されました。日本市場でのリリース時期はどうなるのでしょうか。
日本オラクル マーケティング本部
システム製品マーケティンググループ ディレクター 杉崎正之氏 |
杉崎 R2は2005年夏に出荷予定です。米国で出荷された後、日本語版ドキュメントなどの整備ができ次第、速やかに日本市場に投入します。米国から1〜2カ月後くらいになるでしょう。
―― R1が日本で発売されたのが2004年の4月。それから9カ月ほどたちますが(インタビューは2005年1月7日実施)、旧バージョンからの移行は進んでいますか。
杉崎 Oracle 10gに関しては、R2が出るまで購入を控えるというユーザーは以前に比べて少なくなっています。確かにOracle8、Oracle8i、Oracle9iなどをリリースしたときには、新バージョンへの移行には時間がかかっていました。しかし、バージョンが上がるにつれ、移行スパンは短くなっています。Oracle 10gでは、Oracle9iに比べてはるかに早く移行が起こっているのです。
―― Oracle 10gを購入するユーザーのプロフィールは、Oracle9i以前と比べて変化していますか。エンタープライズ・グリッドというハイエンド向けのイメージを前面に打ち出したプロモーションを行っていますが、もう一方で低価格戦略も展開されています。
杉崎 Oracleはこれまでハイエンド向けの製品開発を主眼とし、そのイメージが非常に強いわけですが、Oracle 10gからはミッドレンジからローエンドのサーバ・マシンでも使っていただくためCD-ROMを1枚でインストールできるように簡素化し、誰にでも簡単に扱えるデータベースを目指しました。またライセンス形態を改定し価格を下げたこともあり、中小規模ユーザーへの浸透度が非常に高くなっています。特にこの市場では、新規のシステム案件でOracle 10gを選ぶユーザーの比率が高いですね。
■Oracle 10gでは何が変わったのか
―― 一般のユーザーにとって、まだまだOracleは非常に高価だというイメージが強く残っているのではないでしょうか。
杉崎 ええ。実際に、10万円を切る価格でOracle 10gを販売している事実を知らないユーザーは非常に多いのです。この10万円には単品としての安さだけでなく、HA(ハイアベイラビリティ:高可用性)構成にしたときの価格など、単純なフェイルオーバーなら120万円程度で実現するというトータルな低価格も実現しています。価格が下がっても諸費用込みになると高額になると警戒する方もいるようですが、保守料に関しては製品価格の22%なので、価格が下がった分だけ保守料も下がる。Oracleは安くなったということをもっと多くの人に知ってほしいですね。
―― 昨年のORACLE OPENWORLDでは、Oracle Application Server 10gが主役で、Oracle Databaseの扱いは地味な印象を受けました。また最近では、Oracle E-Business Suiteの動きも活発です。Oracle Databaseはすでに完成の域に達してコモディティ化してしまった。だから今後大きな性能強化は施されないのでは、という懸念もあるようですが。
杉崎 それはまったくあり得ない話です。データベースとしての性能には、まだまだ伸ばしていくべき要素が多くあると認識しています。例えば、操作の難しさを取り除くこと。現在のデータベースは、欲しいときに欲しい情報が一瞬にして手に入る状況にはほど遠い。インターフェイスもSQLのような難しい言語を用いるのではなく、ゲーム感覚のような簡単な操作でデータを取得できるようになるべきでしょう。オラクルは今後もOracleを進化させます。
―― Oracle 10gは過去のバージョンに比べて、製品コンセプトが大きく変わったという印象です。
日本オラクル マーケティング本部 システム製品マーケティンググループ 担当マネージャ 根岸 徳彰氏 |
根岸 R2の製品開発では、オラクル社にとって非常に象徴的な出来事が起こっています。Oracleの製品開発は通常、数十個のモジュールに分かれプロジェクト単位で行われます。それぞれのプロジェクトはハードウェアを用意して新機能のコーディングを行います。かなりの台数のサーバを使用するわけですが、それがR2ですべてLinuxに一気に切り替わった。過去に新機能の開発を行うベースのプラットフォームが変更されたのは、1990年代初頭でUNIXに変更されました。R2の開発では、およそ10年ぶりにプラットフォームが変更されたのです。オラクルの製品開発にとって歴史が変わる重大な節目だったのがR2ということです。
―― つまり、最も重視しているプラットフォームはLinuxであるということですね。Linux+IAサーバに狙いを定めたとすると、競合するのはマイクロソフトのSQL ServerやオープンソースのPostgreSQL、MySQLになりますね。
杉崎 通説ではOracleとSQL Serverは競合しているように思われていますが、Oracle9iまではハイエンドはOracle、小規模システムではSQL Serverと、実はうまくすみ分けていたのです。Oracle 10gの投入によって、ようやくSQL Serverのシェアに食い込み始めたという認識でいます。また、PostgreSQL/MySQLの存在ですが、日本オラクルでは競合製品とは考えていません。ユーザーに聞き取り調査を行っても、OracleとPostgreSQL/MySQLが競合するケースはまったくないそうです。PostgreSQL/MySQLが伸びているのだとしたら、おそらくSQL Serverのシェアを奪っているのではないでしょうか。ローエンド市場で競合製品と認識しているのはSQL Serverだけです。
参考記事 @IT News
「オラクルでLinux向けデータベースが伸びている」
◇
中小規模ユーザーが価格メリットを感じてOracle 10gを積極的に導入しているという傾向は、この新製品の特性がユーザーから正当に評価されていること示しているだろう。さらに、Oracle
10gは製品単価が下がっただけでなく、低価格のハードウェアを利用でき、各種の自動化ツールによって運用管理コストまで低減させる機能も進化させている。次回では杉崎氏、根岸氏のコメントを基に、今夏出荷予定のR2で強化される機能を具体的に見ていこう。(次回に続く)
Index | |
[DB Interview] Oracle 10gへの移行を決断すべきか? |
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前編 ・Oracle 10gへの移行は進んでいるのか ・Oracle 10gでは何が変わったのか |
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中編 ・R2はOracle 10gの完成形 |
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後編 ・GUIツールはプロ用のツールとして通用するのか ・Oracleはどこへ向かっているのか |
[DB Interview] |
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