DB基礎講座:XQueryとSQLはどう違う?
一気に分かる“XQuery”ハンズオン演習
日本アイ・ビー・エム米持幸寿
2006/7/6
データベースに搭載されるXML機能は進化の一途をたどっている。特に2006年の注目製品は、RDBでありながらネイティブXMLも扱えるハイブリッド・データベース、DB2 V9(コードネームはDB2 Viper)だろう。本稿ではDB2 V9を使ってXQueryの基本を解説する。(編集部)
主な内容 --Page 1--
はじめにXMLはどのように保存されるべきか SQLとXQueryは何が違うのか --Page 2--
XQueryの代表的な機能--Page 3--
FLOWR構文を使ったXQuery演習 |
今年(2006年)はXMLデータベース元年といわれています。すでに製品を出していた企業を含む多くのベンダが、XMLを保存するのに適したデータベース管理システム(DBMS)を発表しています。そして何よりXML専用のクエリ(問い合わせ)言語であるXQueryが昨年11月にW3C(World Wide Web Consortium)のCR(Candidate Recommendation:勧告候補)にまでこぎつけました。
本記事では、XQueryをクエリ言語の標準であるSQLと比較しながら、どのような言語なのか概説します。
XML 1.0勧告が発表されてはや8年が過ぎ去ろうとしています。筆者自身が関与した開発プロジェクトでXMLを初めて使ったのは1999年ですが、それからすでに7年が経過しました。
これまでXMLを企業システムで利用してきた際にいつもつきまとっていた課題は、XMLの保存と検索です。多くのシステムがXMLをプレーンなテキストファイルとして保存しています。そもそもXMLはテキストだけで作られているためにテキストエディタで作りやすく、扱いも楽だからでしょう。しかしテキストファイルによるXML処理にはさまざまな限界があります。
あるプロジェクトで16万件にも及ぶXMLファイルが1枚のCD-ROMに入れられて送られてきたことがあります。いくつかのディレクトリに分かれて入ってはいましたが、PCのCD-ROMドライブに載せたところ、CD-ROMを認識するのに4時間もかかりました。ファイルが多過ぎるのです。
ファイルに保存されたXMLは、その中に含まれる要素の値での検索ができません。そこで外部ファイルとしてインデックスを作ったり、検索用のデータベースを別途持ったりしていました。
リレーショナル・データベース(以下、RDB)にXMLを保存する技術は年々進化していますが、SQL(Structured Query Language)にも限界があります。そもそもSQLは表を扱うためのクエリ言語。ツリー構造のXMLには向きません。せっかくツリー構造により複雑なデータ構造を取り扱えるはずなのに、XMLを「表でも表せる」程度の構造で定義して使っている例が非常に多く見受けられます。その理由はRDBに保存しようとするからです。XMLをテキストファイルやRDBに保存するのはそろそろ限界が見えてきました。
XQueryは、XMLドキュメントを検索・抽出するために設計されたクエリ言語です。XQueryは、W3Cが策定中で、本記事執筆時点では勧告候補段階です。
- XQuery 1.0: An XML Query Language
(W3C Candidate Recommendation 8 June 2006)
旧来からデータベース構造の標準としてRDBが広く使われてきました。RDBは通常SQLで問い合わせます。SQLはリレーショナルデータを扱うクエリ言語といわれます。RDBは、表を複数組み合わせたものです。親子関係のあるデータ構造も、繰り返し(マルチオカレンス)のあるデータも、すべて表として取り扱います。
RDBにはデータが表の形式で保存されます。表はいくつかのものが関係し合い、複雑なデータ構造を表します。そして、その複雑な関係を解決するのは、SQLの構文によります。SQLは結果を、やはり表の形式で返します(図1)。
図1 SQLとリレーショナルデータ |
これに対してXMLデータはツリー構造のデータです。表形式のデータは基本的にツリー形式で表すことができます。そういった意味ではツリー形式のデータ構造の方が汎用的であると考えていいでしょう。そしてXQueryは結果をXMLで返すのが基本です(図2)。基本を外れてCSVなどを返すこともできます。
図2 XQueryとツリーデータ |
もしSQLとXQueryを比較するなら、
- SQL
表で保存されているものから抽出したデータを表形式で返す
- XQuery
ツリー構造で保存されているものから抽出したデータをツリー形式で返す
ということができます。
もう1つ大きな違いがあります。SQLはSELECT、INSERT、UPDATE、DELETEと、いわゆるCRUD(Create、Read、Update、Delete)の機能を定義しているのに対して、XQueryはクエリ、つまりReadしか定義していない点です。XQueryによるXMLノードの挿入、削除、変更、コピーといった機能は、XQueryの拡張仕様「XQuery Update Facility」として別途仕様策定中です。
ところで、XQueryはXSLTと比較されていることが多い言語仕様です。その理由は、XSLTで決めていることとXQueryが決めていることが非常に似通っているからです。この理由は、どちらもXMLドキュメントから別のXMLドキュメントを作り出すという「変換」の働きをするからです。
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Index | |
DB基礎講座:XQueryとSQLはどう違う? 一気に分かる“XQuery”ハンズオン演習 |
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Page 1 ・はじめに ・XMLはどのように保存されるべきか ・SQLとXQueryは何が違うのか |
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Page 2 ・XQueryの代表的な機能 |
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Page 3 ・FLOWR構文を使ったXQuery演習 |
DB基礎講座:XQueryとSQLはどう違う? |
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